ポーランド政治・社会情勢(6月16日〜24日)

 

1.ギロフスカ副首相兼財務相、辞任。財務相後任にヴォイチェホフスキ首相顧問

 6月22日、オルシェフスキ公益擁護官は、ギロフスカ副首相兼財務相には1987−98年に公安組織への秘密協力の容疑があり、同副首相の前歴宣誓には虚偽の疑いがあるとマルチンキェヴィチ首相に通報した。ギロフスカ副首相は容疑を否認しつつも首相に進退を一任、首相は辞任を承認し、後任(ただし副首相は兼任しない)を自分の経済顧問であるヴォイチェホフスキ氏とする人事案を大統領に申請した。6月24日、カチンスキ大統領は任免を行ない、現内閣では三人目の蔵相となった。

 ポーランドでは、高位公職に就く場合、社会主義時代に公安組織に対し密告等の秘密協力の前歴があったか否かを宣誓する義務がある。「有った」としても良いが、「無い」と宣誓して虚偽が発覚し、裁判で確定すれば10年間の公職追放となる。ギロフスカ前副首相の場合、本人も疑惑を否定しているため裁判はこれからで、容疑は確定していない。しかし、与党「法と正義」では、前歴審査裁判所で訴追された段階で辞任、を原則としているため、同党は自ら決めた原則に縛られる結果となった。

 ギロフスカ副首相は、連立与党・政府で歳出拡大の圧力が強まる中、財政健全化を方針とする政府の経済政策の中心的存在であり、その辞任は政府のダメージとなった。後任のヴォイチェホフスキ元首相府顧問も同じ路線の支持者だが、これまで全く無名の実務家で、各紙は「急場しのぎの人事」とコメントした。

 

2.欧州議会、ポーランド他で「差別傾向が強まっている」と批判決議を採択。ポーランド下院は「反論」?決議。

 6月15日、欧州議会は、ベルギー、仏、ドイツとポーランドに、「人種差別、同性愛者への差別、反ユダヤ主義などの非寛容傾向の高まり」があると指摘する決議を採択した。ポーランドには比較的大きなスペースを割き、ラジオ・マリヤの反ユダヤ主義的傾向を指摘した。また欧州委に対し、ギエルティフ教育相が欧州評議会作成の公式パンフレット配布を理由として中央教員研修所所長を解任したことを、EU人権規約違反の疑いがあるとして調査を要請している。

 6月22日、ポーランド下院は反対決議を採択したが、「(下院は)欧州のユダヤ・キリスト教的モラルを支持し、欧州議会の文書に『同性愛者差別』なる言葉が入ることを認めない。」との内容で、各紙からは「欧州議会に「非寛容」の批判に直接答えていない」とコメントされた。

 

3.シロンスク、病院ゼネスト回避

 6月21日、予定されていたシロンスク県の病院、診療所ゼネストは、労組側とレリガ保健相の直接交渉により回避された。労組側は即時賃上げを要求していたが、政府側が「10月からの30%賃上げ」という従来の方針を改めて説明、労組側は一応納得し、ストを「無期限延期」とした。ただし、既にストに入った20の病院では、即時賃上げ等の要求を継続している。

4.米国在住の元ポーランド居住ユダヤ系市民、ポーランド政府に総額約10億ユーロの損害補償請求

 6月20日、米国の著名な弁護士エド・ファーガン(Ed Fagan)氏は、NY地裁に於いて、償還されないままでいるポーランドの戦前の国債の所有者に対する補償を、ポーランド政府に対し要求する訴訟を提訴した。要求総額は約10億ユーロ。原告は大戦中、ポーランドでのホロコーストを生き延びた人々もしくはその子孫が中心。

 ポーランドでは、戦前発行の国債については、60年代に当時のゴムウカ党第一書記が西側からの圧力で所有者に対し一部補償を行なったが、海外居住者には全く補償措置が採られていない。

 ファーガン氏は、90年代にホロコースト被害者に対する補償でスイスの銀行、保険会社を相手に訴訟を提起し、15億ドルの損害賠償を獲得している。これまで、各国政府を相手とする裁判では、米国の各裁判所は他国政府を被告とする管轄権無しとして請求を棄却してきた。

 

5.フォティガ外相、訪米

 6月16日〜18日、フォティガ外相が訪米し、ライス国務長官等と会談、チェイニー副大統領に表敬した。ポーランドのマスコミの関心はポーランド市民の米国入国ヴィザ問題に集中した。

 ライス国務長官は、国務省としてもヴィザ免除に向けて解決に全力を尽くす、とした。その一方で、「国務省は立法作業に影響力はない」として、米国上院で可決され、下院で未審議の入国管理法改正案については、政府としてロビー活動は行わない方針を示した。同改正案はポーランドを例外扱いしており、他のEU新規加盟諸国からは米国政府等に強い批判が寄せられている。国務省としてはあくまでチェコ、スロヴァキア等、新EU加盟国を平等に扱う方針と伝えられる。

 

6.カチンスキ大統領、欧州人権裁に訴追されるか

 6月18日、カチンスキ大統領に対する名誉毀損訴訟で、勝利の確定判決を得ているヴァホフスキ元大統領府官房長官は、カチンスキ大統領が判決を執行しないため、欧州人権裁判所への提訴を検討する、と発表した。

 カチンスキ大統領には、ヴァホフスキ氏に対する名誉毀損発言を行なった「ラジオZ」などへの謝罪広告が、最高裁の確定判決により義務付けられている。現在はこれを実行しなくとも大統領の不逮捕特権により収監等は実行されない。ただし時効も適用されない。