ポーランド政治・社会情勢(6月9日〜15日)
1.ニューヨーク・タイムズ、ポーランド政府の保守傾向を批判
6月11日付のニューヨーク・タイムズ紙は、「ポーランドの頑固な政府」との社説を掲載し、「現右派民族主義政府には社会的少数派(マイノリティー)に対する人権侵害の意図が見られる」として批判した。
同社説では、現政権は大統領と保守的な与党党首のカチンスキ兄弟を軸に、「危険な少数政党であり、独裁者のルカシェンコ・ベラルーシ大統領と親密な「自衛」と、極右カトリックの家族同盟」により構成されているとしている。
また国内でも批判を浴びたヴィエジェイスキ下院議員(家族同盟)の同性愛者に対する差別発言や、反ユダヤ主義発言を紹介した。「カチンスキ大統領の当選に重要な役割を果たした」ラジオ・マリヤは、「公然と反ユダヤ主義、反外国人的で」、「教皇ベネディクト16世の警告にも拘わらず政治的発言を止めない」とコメントしてもいる。
2.財務省、2007年予算案の政府経済見通し案発表
6月13日、ギロフスカ副首相兼財務相は、2007年度予算案作成の前提となる政府経済見通し(案)を発表した。
それによると、
○2006年:GDP成長率5.2%、インフレ率1.2%、失業率17%、財政赤字305億PLN
○2007年:GDP成長率4.6%、インフレ率1.9%、失業率14.9%、財政赤字300億PLN
の見込みで、2007年度も財政赤字は、IMF提案の260PLNではなく現状レベル維持の方針。
グロニツキ元財相らの専門家は、GDP成長率、インフレ率は妥当な水準だが、歳入増はガソリン等の物品税引き上げを前提としており、実現性は疑問だと批判。失業率の低下も根拠薄弱で楽観的だとコメントしている。
3.PZU新社長に企業資産横領、資金洗浄関与の疑い。与党に打撃。
ポーランドで圧倒的シェアを持つ生命・損害保険国営企業PZUのネツェル新社長に、計画倒産、資産横領、資金洗浄関与の疑惑が強まっている。1999年、同氏が顧問弁護士を務めていたDrob―kartel社(グダィンスク)の不明瞭な倒産に関係し、最終的に同氏に約35万PLNが渡ったという疑いで、ジェチポスポリタ紙が報道した。同氏に金を振り込んだ企業には、直前にタックス・ヘヴンからの送金が確認されている。検事局も調査に着手した模様。
同氏は、政府・与党の推薦で社長に最近就任。マルチンキェヴィチ首相は、6月13日、ヤシンスキ国財相にネツェル氏登用の事情説明を命じた。世評でも、国営企業総裁の選出プロセスの不透明さに疑問が高まっており、国営大企業を汚職の温床とし、その健全化を公約にしている与党にダメージの可能性もある。
4.炭坑労組、政府と特別ボーナス支給で合意
6月13日、政府は国営系のヤストシェンプスカ炭坑等3社の労組と、総額1億3,000万PLNの特別ボーナス支給で合意、労組側はワルシャワでの抗議行動中止を発表した。
ヤストシェンプスカ社や、カトヴィツェ石炭ホールディングなどは、昨2005年に過去最高の利益(ヤ社で約8億PLN)を挙げ、労組側はその利益配分を要求、政府との交渉を求めていた。経済省は当初交渉を拒否していたが、労組側が昨年春に行ったようなワルシャワでの抗議行動実施を表明したため交渉に応じ、前日に妥結したもの。交渉にはカチンスキ大統領も関与した。ヤ社では一人約2,000PLNの支給となる。
5.ワルシャワで同性愛者らのデモ「平等の行進」
6月10日、ワルシャワで、同性愛者らが法的平等などを求めるデモ「平等の行進」が行われた。文化的寛容を訴える政治家なども参加し、参加者は約5,000〜6,000名と推計されている。市当局の許可を得た合法的なデモで、音楽を鳴らし、プラカードもユーモアを交え、大きな混乱も無く終わった。
事前に対抗デモ「伝統と文化の行進」を企画していた右派民族主義組織の「全ポーランド青年」は、元代表で影響力の大きいギェルティフ副首相兼教育相(家族同盟)の呼びかけで中止した。この中止は、「ギェルティフが『穏健さ』を印象づけるために呼びかけた」と論評されている。一方、同副首相はマゾフシェ県政府行政官(Wojewoda)、ワルシャワ市長に対し、デモの許可は誤りだと批判した。
6.サッカー・ワールドカップ初戦で敗北
6月9日、サッカー・ワールドカップの初戦で、ポーランドはエクアドルに2−0で敗れ、決勝トーナメント進出が早くも難しくなった。
国内の各紙ではヤナス監督と選手の消極的な戦い振りに批判が集中し、日刊紙最大部数を持つ大衆紙FAKTは、「恥、屈辱だ。もう(国に)帰ってくるな」と大見出しを掲げた。
7.連立政権の信頼度
6月9日、世論調査センター(CBOS)は、5月下旬に行った「法と正義」、「自衛」、家族同盟の連立政権に対する信頼性の調査結果を発表した。
それによると、三党連立政権下での発展について、
「改革を実施し、ポーランドの発展を促進する」が21%、
「今の連立政権はポーランドの発展にとって「失われた時期」になる」が49%、
「判らない」が30%、となった。回答者別では、特に都市居住の青年層に否定的な反応が多かった。