ポーランド政治・社会情勢(5月31日〜6月8日)
1.政府、税制「調整」案を採択
6月6日、政府は来年度から実施される税制の改正パッケージ案を閣議で採択した。マルチンキェヴィチ首相自身、「これは『改革』ではなく『税制の秩序回復』、と表現したとおり、全体として大きな変化はなく、与党の所得税減税公約は改めて2009年まで延期された。
今回の改正の要点は3月31日にギロフスカ蔵相が発表した通り(本通信March30-April 6号)だが、非課税所得枠が同発表より約50PLN引上げられて3,013PLNとなった点や、重油、LPGガスの物品税大幅値上げなど再調整が図られた。
2.レッペル、ギェルティフ両副首相、自党が公安に盗聴されているとして治安関係官庁の管理とポスト配分を要求
6月5日、レッペル「自衛」党首とギェルティフ家族同盟党首の両副首相は、記者会見を開き、「我々の党は盗聴されている。(政府部内には)我々と「法と正義」(与党)との離間を求める勢力がいる」(レッペル副首相)と述べ、保安庁(ABW)、警察、中央捜査局、法務省などの治安関係官庁でのポストを要求した。マルチンキェヴィチ首相は盗聴を事実無根と反論し、ポスト配分には拒否の方針を示した。
各紙は、「現役の副首相が首相に盗聴防止を求めるという、コミカルな情景」と論評した。
3.メレル前外相、J.カチンスキ「外務省獲得」発言に反論
6月4日、与党「法と正義」のカチンスキ党首は、ウッジで開催された党大会で基調演説を行い、「外務省は道義的、政治的要請を無視し、...独自の政治的目的を実現する手段を使ってきた」などと批判、「今や我々は外務省を手中に収めた」と述べた。同党首は、弟のカチンスキ大統領と共に外務省批判を強めていたが、さすがにこの発言は注目を集めた。翌日の新聞紙上で、5月に辞職したメレル前外相は、「私は国の利益を売り渡したことはない。私が外相を離職したら、「法と正義」は外務省を獲得したという。驚くべき発言だ。」と正面からカチンスキ党首を批判し、「『自衛』と家族同盟の入閣は、私が内閣に残留する意志の限界を越えた」と述べた。
4.大統領府長官、辞任
6月1日、ウルバィンスキ長官は、汚職の疑いの濃い民主左翼連合(SLD)の政治家との共同事業を巡る報道を受け、「不法行為等は犯していないが、(事態沈静のため)辞職する」としてカチンスキ大統領に辞表を提出、翌2日に受理された。
同元長官は、SLD所属の政治家元ドルノシロンスク県地方長官のR.ナヴラトと、1999年にTV番組制作会社を共同出資で設立、社長を務めていた。2000年には出資分を売却し、経営から手を引いたとしているが、法人登記上は未だに同副長官が社長のまま。
ナヴラト氏は、2002年、県地方長官就任後半年で解任され、公共事業に関する収賄で起訴されている。
ウルバィンスキ元長官は、2003年11月、ワルシャワ副市長就任1年後まで、他の私企業の社長を兼務していたことも明らかになっている。ポーランドの汚職対策法は、公務員の私企業経営者就任を禁止している。野党は、同元長官が「SLDを常に批判しながら、汚職の疑いの濃いSLD政治家と共同事業を行っていた」と批判した。
後任には大統領府のドゥラバ次官が就任した。
5.ポーランド文学史発刊
Cz.ミウォシュの大著ポーランド文学史(Historia
Literatury Polskiej)の日本語訳が刊行された。翻訳は関口時正、西成彦、沼野充義、長谷見一雄、森安達也の五教授が担当し、未知谷社より刊行。これだけ総合的なポーランド文学史の書籍は、日本でも初めてとなる。