ポーランド政治・社会情勢(5月17日〜23日)
1.政府、医療財政改革案了承。医療関係者は納得せずスト継続を表明。内務行政省はストの違法性調査に。
5月23日、首相、財務相らの関係閣僚はレリガ保健相の作成した医療財政改革案について協議し、合意した。2009年には官民の医療費支出総額をGDP比の5%とする目標で、農民・失業者医療政府補助、高度専門医療行為補助金などの財政支出を増額し、また2008年度に介護保険制度(Nursing Insurance)を導入、初年度の保険料は所得の0.5%、09年度より1.5%とし、国民にも保険料50%の負担を求める。
医療関係者は、今回の合意は単なる閣内合意であって法的裏付けも無く、内容も相当部分を景気拡大による健保収入の自然増を当てにしている、などと批判、肝心の賃上げ要求には10月からの30%増額しか約束していないとして、診療拒否など抗議行動の継続を表明している。
政府は強硬姿勢も示唆し、ドルン内務行政相は組合合意の有無など、ストの違法性調査を各県の地方長官(wojewoda)に指示した。
2.首相、民営化促進とユーロ導入計画を突如表明
5月17日、マルチンキェヴィチ首相は、突然「LOT、ポーランド郵便(PP)、保険会社PZUなどの民営化を2年以内に着手する」、「ユーロ圏加盟交渉を2009年には開始する」と述べた。首相には、「経済政策の保守化」、「(民営化に否定的な)与党の言いなり」との批判があり、それに応えた形となったが、与党「法と正義」からは早速「首相の民営化方針は与党の選挙公約の範囲内で実施される」(ザヴィシャ下院国有財産委員長)など、牽制の発言が続いた。ユーロ圏加盟交渉については、「解散がなければ2009年は選挙の年で、交渉など始められない。単に批判をかわしただけ」といった批評もあった。
3.財務省税務局、税務署長等5名、汚職で逮捕
5月16日、中央捜査局(CBS)は、財務省の直接税局長、国税制度局長、ワルシャワの某税務署長らの同省幹部を逮捕した。容疑は特定企業に対する違法税金免除、脱税示唆と、その見返りの収賄や、縁者の就職斡旋等。容疑行為は1993年から2004年の長期に渡り、収賄額は各2万〜13万PLNだった。ジョブロ法相は、「財務省内の利権マシーンの終焉であり、いわゆる利権癒着集団の一角を摘発出来た。」と述べた。
今回の逮捕者は、ギロフスカ財務相以下の新執行部により数ヶ月前から幹部職から左遷されていた。発端は昨年12月に高級車販売業等を営む犯罪グループ11名の逮捕で、その一味の供述から芋蔓式に発展した。利益を受けていた関係企業には、大規模農業経営者で、ポーランドの富豪の一人として著名なストクウォサ上院議員の名も上がっており、計約4,300万PLNの脱税容疑があると言われる。
4.CBAの捜査権で、企業活動阻害の恐れが懸念
5月12日に下院で設置法が採択された中央汚職対策庁(CBA)について、その強い捜査権を財界も懸念している。特に、通信の秘密傍受以外、捜査員は裁判所の令状無しで、CBA長官の許可だけで企業の強制捜査が可能であり、あらゆる資料を請求し、質問に対し口頭・書面の回答を要求する権限が与えられ、期間も最長9ヶ月間まで延長出来る。更に、捜査又は調査は具体的な犯罪事案の疑いが発生した場合だけでなく、予防措置でも可能とされている。
特に長期に渡る調査は、対象企業にとって負担が大きく、財界では企業活動妨害、ひいては人権(経済活動の自由)侵害の恐れもあると懸念している。
5.映画、ダビンチ・コード、教会、評論家の批判にも拘わらず大人気
映画「ダビンチ・コード」は、自身がオプス・ディのメンバーであるジヴィシ枢機卿・クラクフ大司教を始めとする教会関係者からの批判が続き、映画評論などでも映画自体の出来は疑問とするものが多い。しかし封切り以来数日間で約34万人の観客を集めるなど、記録的人気となっている。
6.ワルシャワ・FSO自動車工場、GMシボレーと中国車を生産か。
ワルシャワのFSO(Fabryka Samochodow Osobowych:「乗用車製作所」)を昨年買収したウクライナのAwtoZAZ社・ヴァサーゼ総裁は、1年間に渡る交渉の結果、GM本体と傘下の韓国企業GM Daewoo Auto
Technologies(GM DAT)との間で、近くFSOでシボレーの小型車のライセンス生産契約に調印する、と述べた。総投資額は約1億3,000万ドルの見込みで、当初生産台数は年間15万台の予定。
また同総裁は、中国第三の自動車メーカーであるChery 社ともライセンス生産について交渉中であり、近く訪中の予定と述べた。実現すれば、FSOはシボレーと中国車の二種類の小型車を生産することとなり、小型車市場での競争激化が予想される。
FSOではこれまでGM DAT社のDaewoo車を生産し、関連企業を含めれば従業員約8,200人ながら、2005年の販売台数は約40,000台で、内95%以上がウクライナ等に輸出されている。
7.米上院、ポーランド市民に60日間の無査証滞在認める修正法案採択
5月17日、米国上院は、「(現在査免対象外の)EU加盟国で」、「イラクでの米国の軍事行動支援に300名以上派遣し」、「米国の司法上の利益を侵害しない国」を、60日間の観光、商用査証免除国リストに追加掲載する修正法案を採択した。最初の2条件に該当するのはポーランドだけであり、事実上ポーランド市民を対象とするもの。2年間の試験期間が設定されているが、もし下院でも成立すれば大統領署名は間違いとされ、発効するものと見られている。
8.ポーランド企業、外資出資者に記録的配当金
大企業の業績好調を反映して、2006年度のポーランド上場企業の出資者配当金は、130億PLNと予測され、好調だった2005年度の約2倍に達する見込みとなった。ただし外国の出資企業に対する配当が相当額に上るため、与党筋からは過去の国営企業民営化の方針が過度の外資優遇だったのではないかとの疑問も出ている。主な例は次の通り。
Pekao銀行→UniCredito銀行(伊) (配当額約20億PLN)
ポーランド電気通信(TP SA)→France Telecom(仏) (約6億6,500万PLN)
ING
Bank Slaski(シロンスキ)→ING Bank(蘭) (約2億6,800万PLN)
なお配当上位企業には、オルレン(19億)、TP SA(12億)、精銅社(KGHM。11億)などいずれも元国営企業が並んだ。
9.ドゥデク、フランコフスキがワールド・カップ代表から外れる
5月14日、サッカー・ワールドカップのヤナス・ポーランド代表チーム監督は、23名の代表メンバーを発表した。事前に「当確」と見られていたJ.ドゥデク(リバプール)、T.フランコフスキ(ヴォルヴァーハンプトン)、T.クウォス(クラクフ)、T.ジョンサ(ハーグ)の4名が代表から外され、「今年最大のスポーツ・スキャンダル」(FAKT紙)と話題を呼んだ。これら4名はいずれも30代のベテランで、ヤナス監督は若いチーム作りを図ったとしているが、ドゥデクらは、「代表選考にはコーチや代理エージェントの人脈が影響している」と不満を漏らし、人選は不当だ、との批判も出ている。
一方、5月23日に85歳で死去したK.グールスキ元ナショナルチーム監督については、各紙がいずれも一面トップで報道するなど、その業績への賛辞と死を悼む声が続いた。グールスキ氏は、1972年のミュンヘン五輪金メダル、1974年のワールド・カップ3位、1976年モントリオール五輪銀メダル等、ポーランド・サッカーの黄金時代を築いた「伝説のコーチ」と言われている。