ポーランドの改造内閣発足
5月5日、ポーランドで新連立内閣改造が発足し、急進農民政党「自衛」(Self-Defense)のレッペル党首と、右派民族主義政党「家族同盟」のギェルティフ党首が共に副首相で入閣した。
【ポイント】
●政府与党の「法と正義」は、昨秋の総選挙以来、議会での多数派獲得を模
索し、半年の曲折を経て、5日、「自衛」、「家族同盟」との三党連立内閣を
発足させた(首相及び主要閣僚は留任)。新連立与党は議会多数派を形成し
た。
●「自衛」はポピュリスティックな農民政党、「家族同盟」は急進的な民族主
義政党であり、EU加盟、イラク派兵にも共に反対してきた。
●新連立与党は、政策面では穏健な方針の維持を表明しており、両党の政権
入りに対する国内の反応は落ち着いている。他方、上記二党が自国利益優
先の方針を強める可能性など、EU内でのポーランドの孤立化を懸念する論
調も多い。
1.昨秋の総選挙で、共に中道・右派の「法と正義」と「市民プラットフォーム」が第一党、第二党となったが、共に単独過半数は取れず、両党連立も成立しなかったため、「法と正義」の単独政権が続いてきた。しかし少数政権のため議会運営が困難となり、同党は多数派工作を模索し、「自衛」(第3党)、「家族同盟」(第5党)との連立を決定、5日に両党党首が副首相で入閣する新連立改造内閣が発足した。新連立与党の議席は過半数(下院231)を超え、与党は当面の政治目標を達成した。
2.「自衛」のレッペル党首は、実力抗議行動を行う農民団体「自衛」のリーダーとして、ポピュリスティックな主張で農村等の低所得者層を中心に支持を広げ、政党「自衛」を立ち上げた。同党首は複数の犯罪歴もあり、過去には過激な発言も多い。 「家族同盟」のギェルティフ党首は、急進的な右派青年組織の主宰から出発し、反ユダヤ主義との関係も指摘される民族主義的なカトリック放送局「ラジオ・マリヤ」を地盤に政党を発足させた。
両者とも、社会保障の拡大、国営企業民営化反対など経済自由化に反対し、愛国教育、宗教教育の振興などの保守的右派の政策を主張し、外交面では西側寄りの政策を批判、加盟交渉時にはEU加盟反対、現在でもユーロ導入反対、イラク駐留に反対している。
3.こうした政党の政権入りには、当初は国民にも警戒感が強かったが、昨秋以来、政党間の合従連衡劇が半年に渡って続き、その過程でレッペル党首等の入閣も何度か取り沙汰されてきたため、既成事実化が進んでいた。今回の新改造内閣発足後の調査でも、各政党に対する支持率はほとんど変化が無く、国民の対応は取りあえず落ち着いたものとなっている。ただし「レッペル・ギエルティフ内閣」を歓迎する論調はほとんど見られない。
4.現与党の「法と正義」自体、経済政策での国の関与の拡大、対EUでの国益重視や、「ラジオ・マリヤ」を実質的な支持母体とするなど、上記両党の立場に近いものがある。このため、今後ポーランドでは、公的債務の削減、EU最悪の失業対策などの経済政策の鈍化や、過度に国益を重視する対EU政策、カトリック保守主義の深化などでの孤立を懸念する論調も多い。EU各国政府は、2000年の墺自由党(ハイダー党首)政権入りの際と異なり、特にコメント等は出していないが、各国主要紙では「カトリック・ポーランドとリベラルな西欧との文化的分裂(cultural wedge)の可能性」(IHT紙)も指摘されている。
5.新連立与党の三党首とも、従来の「法と正義」の穏健な政策の継続を表明しており、経済、外交政策でも当面大幅な変更は無いものと見られる。他方、特に今回政権入りした二政党の閣僚等からは、所属政党の従来の急進的な要求、主張(例えば社会保障費の大幅増額、公教育カリキュラムの保守的な見直し、対EU農産物生産割当の見直し等)が為される可能性もある。特に同二政党が政権内での存在感をアピールしようとした場合、その可能性が高まり、政権の不安定化と、EU内でも主流派の議論から外される懸念が指摘されている。