ポーランド政治・社会情勢(3月22日〜29日)

 

1.憲法法廷、政府・与党のラジオ・テレビ委員会設置法改正を違憲と判断

 3月23日、憲法法廷は、政府・与党が昨年末に可決した国家ラジオ・テレビ委員会(放送行政を担当する憲法上の機関)の設置法改正案の一部に違憲判断を下した。内容は、

●前委員会の存続をストップさせ、後任委員会の設置まで約1ヶ月間、憲法上の機関を存続不能にした。

●委員会による放送倫理基準の判断は言論・表現の自由侵害の恐れがある。

●大統領への委員長の任命権付与は憲法上の授権範囲外。現クルク委員長は失職。

●放送認可の自動的継続など、非営利放送局の特権的地位は平等原則に反する。

 として、いずれも憲法違反とした。いずれも政府・与党が、マスコミ界への関与や「ラジオ・マリア」局の優遇など、放送行政での優位を狙った改正だっただけに、以前から憲法法廷に批判的なカチンスキ与党党首はいら立ちを隠さなかった。

 

2.政局:「法と正義」、「自衛」と連立組閣か

 国会解散、5月選挙を主張する与党「法と正義」と、現行制度では選挙を実施しても現状に変化はなく無意味、とする野党第一党「市民プラットフォーム」(PO)が対立している。

 「法と正義」は、POの選挙制度改革要求に対し、現行の大選挙区比例代表制を変更し、230の小選挙区と、16県の大比例区を併用、各々230議席を配分する小選挙区・比例代表混合制の導入案を提示した。更に同党は、4月6日までにこの改正案を可決し、7日に予定する下院解散決議採決での賛成を要求した。これに対しPOは、選挙制度の改正提案は検討に値するが、一週間では結論は出せず、また5月選挙自体は教皇訪問を混乱させるとして拒否した。

 3月28日にはカチンスキ大統領がトゥスクPO党首らを会談に招き、与党案への賛成を求めたが、議論は平行線に終わった。各紙は、議会は解散されず、与党は「自衛」と、更に農民党との連立内閣を組む可能性が高くなったとコメントした。

 

3.ジェチポスポリタ「大統領の百日」評価

 3月30日付のジェチポスポリタ紙は、カチンスキ大統領の就任百日を特集した。その評価では、「(新大統領は)活発さに欠け、内外への印象も悪く、兄の与党党首による不明瞭な政治的な動きを支援している」などと厳しいものだった。肯定的な点として、対ロシア、対仏関係の一部改善など、外交面で「思わぬ成果」があったとしている。

 

4.スタニスワフ・レム、死去

 3月27日、SF作家として世界的に著名なスタニスワフ・レムがクラクフで死去した。85歳だった。

 レムはポーランドが生んだ20世紀SF最大の巨匠の一人で、「自然科学から人文社会まであらゆる分野に精通する桁外れの知性」の持ち主とされている。「ソラリス」、「完全な真空」などが代表作で、映画化もされている。最近は小説から離れ、科学・文明を分析する批評活動が中心だった。

 

5.宗教教育が事実上義務制。大学入試でも点数に加算へ

 3月29日、政府・教会連絡会議で、カトリック司教団は、現在自由選択制の宗教科目を、「宗教」又は「倫理」で必修とし、更に大学入試統一試験(マトゥーラ)の評価外となっている宗教科目を採点対象科目に加えることを要請した。政府側の教育・科学省は、速やかに実施の方向で検討したい、と応答した。

 実際には、大都市の一部を除いて「倫理」科目を置く学校は少なく、事実上、生徒にとってはカトリック教義が必修になり、更に点数を意識して勉強せざるを得なくなる。今回の措置が実施されれば、1990年以来、宗教科目の導入、授業担当の聖職者への報酬支払いなど、教会が続けてきたカトリック教義の公教育への一連の措置が完成する形になる。

 

6.ベラルーシでの抗議行動でポーランド元大使らが拘留

 ベラルーシでは、3月19日の大統領選挙以来、デモなどの抗議行動に参加した人々約500名が逮捕された。特に、3月24日には市内中心部の「十月広場」に座り込みを行っていたテントが撤去され、翌25日のベラルーシ独立記念日(1918年、ソビエト体制下ながら史上初めてベラルーシが独自国家を形成)のデモでは治安部隊が鎮圧に当たった。同27日には、マシュキェヴィチ元駐ベラルーシ・ポーランド大使、ガゼータ・ヴイボルチャ紙のサモリンスカ記者が各々拘留15日、10日間の判決を受けた。ポーランド人以外には、ロシア人やグルジア人、ウクライナ人のジャーナリストなどが逮捕、拘留されている。

 ベラルーシ国営TVは、「一連の『抗議行動』はEUに扇動されたものであり、その指示はポーランドを通じて出されている」などとコメントし、ミンスクのポーランド大使館前には連日ルカシェンコ支持派の抗議デモが繰り出されている。3月27日には、グロドノのポーランド総領事館館員2名がベラルーシ国境警備隊に拘留され、一時は総領事館自体が機能停止となった。

 カズーリン大統領候補など、拘留された人々はミンスク東方50キロにあるジョディンの刑務所に収容され、5名用の監房に18名が押し込められるなど非人道的環境が伝えられている。

 

7.下院、銀行民営化、中銀活動などの調査特別委員会を設置

 3月24日、下院は、体制改革後の銀行セクター民営化、銀行監督機関、ポーランド国立銀行(NBP)などの活動調査を行う特別委員会の設置を決めた。与党提案に「自衛」、家族同盟等が賛成し、「市民プラットフォーム」等が反対した。調査対象は証券取引委や独占禁止関係にも及ぶ広範なものとなり、バルツェロヴィチNBP総裁は、「中銀の独立性に対する侵害」と批判した。