ポーランド政治・社会情勢(3月8日〜14日)
1.政府与党、中銀との対立
(1)Pekao、BPH銀行の合併問題を機に、政府・与党と中央銀行(ポーランド国立銀行:NBP)が対立が顕在化した
3月8日、バルツェロヴィチNBP総裁は、委員長を務める銀行監督委員会(KNB)の審査で、メフ財務次官の行動は本合併問題に中立性を欠くとして委員から解任した。これに政府、与党が反発し、同10日に同総裁を国会に招致、政府・与党が解任は違法と主張するのに対し、バルツェロヴィチ総裁は委員会の中立性・適法性を守る唯一の方法だったと正面から反論、議論は平行線に終わった。
(2)一方、与党「法と正義」は、民主化以来、NBPはポーランド銀行界の外資支配と独占を許し、現在も不当に高い銀行手数料が課されているなどと主張、下院に「1990-2006年のNBP活動審査特別委」の設置を提案した。
(3)Pekao・BPH合併問題では、銀行監督委は3月15日に適法性の再審査を行ったが、法務省代表が、両銀行の親会社であるUnicredito銀行によるBPH株式取得問題の調査に時間が必要と主張したため、決定は4月5日に持ち越された。マルチンキェヴィチ首相は、この間に合併阻止に向け努力するとし、3月16日にはUnicreditoのプロフム代表と会見した。政府・与党では、ポーランド銀行界の過度の外国資本支配を防止したいとしている。
(4)政府・与党とNBPの対立を巡っては、欧州中銀のトリシェ総裁がポーランド政府に異例の警告を発するなど、各方面で中銀の独立性を巡って議論が起きている。ポーランドの政界については、「不安定な与党・閣外連立が、共通の敵(NBP)でまとまった」(NEWSWEEK誌)というコメントもあった。
なお、バルツェロヴィチ総裁の任期は今秋までで、カチンスキ大統領は後任に別の候補者を下院に推薦する見込み。
2.閣外連立、取りあえず分裂回避
3月9日、「安定協約」による閣外連立を組む与党「法と正義」、政党「自衛」、家族同盟の三党党首会談が開かれ、連立の維持を確認、取りあえず分裂が回避された。三党は、下院にポーランド鋼鉄製鉄所(PHS)民営化、国民投資基金(NFI)、銀行民営化、情報機関・報道機関癒着を調査する4つの特別委員会を今後設置することで合意した。
3.与党、「マスコミと情報機関の癒着」調査を提案
3月9日、与党「法と正義」は、自由化以来、ポーランドの一部マスコミは情報機関と癒着して政治的な偏向があったとして、「1990−2006年のマスコミ・情報機関癒着関係調査委員会」の設置を提案した。メディアでは、本件はカチンスキ大統領の法相時代のジェチポスポリタ紙記者捜査(本メール2月23日〜28日号)問題に対する「報復」としているものが目立った。
4.スペイン、ポルトガル、ギリシャ、ポーランドに労働市場開放
3月8日、スペイン訪問中のマルチンキェヴィチ首相は、スペインが英国、アイルランド、スウェーデンに続き、ポーランド国民に対する労働市場開放を決定したと述べた。EU新加盟国に対する雇用制限は、毎年5月1日が期限となるが、スペインは今回延長しないと決定したもの。今年は、スペインの他、ポルトガル、ギリシャも制限を撤廃する予定。ドイツ、フランスなど他のEU(旧)9カ国は、制限を残す。
5.民主党大会。党首にオヌィシュキェヴィチ欧州議員を選出。
3月11日、民主党(PD)は代表者会議を開催し、オヌィシュキェヴィチ欧州議員が党首に選出された。フラシニュク前党首は立候補を辞退したが、党評議委員選挙では最高得票を獲得、党内支持の高さを示した。同前党首は、「(選挙に敗れた)今は党外外交の時代だ。市民プラットフォームや民主左翼連合と話せる人間が必要だ」として、新党首の選出を歓迎した。
6.カチンスキ大統領、ドイツ独訪問
3月8、9日、カチンスキ大統領はドイツを訪問、ケラー大統領、メルケル首相らと会談した。
懸案の内、「反追放センター」問題については、ドイツ人追放問題に集中するシュタインバッハ女史らの構想ではなく、第二次大戦時の全中・東欧の住民の追放、避難、移送を含む歴史を検証する欧州「記憶と連帯」ネットワーク構想の立ち上げで合意し、一定の解決を見た。
一方、北欧ガスパイプライン問題や、欧州憲法条約、欧州エネルギー安全保障構想では相互の主張の隔たりは埋まらず、今後の課題に残された。
なお、フンボルト大学での記念講演では、カチンスキ大統領の姿勢を批判する同性愛者グループらの妨害により、開始が数十分にわたり遅れた。