ポーランド政治・社会情勢(3月1日〜7日)

 

1.ロシア、カティン事件の犠牲者を「政治弾圧の犠牲者」と認定せず

 3月3日、ロシア中央軍事検察庁はポーランド政府に対し、「カティン事件」の犠牲者は「政治弾圧の犠牲者」には該当しないと通報した。通報を受けた国民記録機関(IPN)が発表した。

 1940年、ソ連内務人民委員部に数万人の抑留ポーランド将校が虐殺された「カティン事件」では、遺族が当時の実行犯等を告訴していたが、2004年10月、ロシア検察当局は、「カティン事件」は特的目的の集団殺害(ジェノサイド)に該当せず、通常犯罪のため時効が適用されるとして、不起訴・捜査中止と決定した。ポーランド側は、本件はジェノサイドと主張し、時効不適用を主張している。

 その後、遺族は、スターリン時代の政治迫害の犠牲者を救済するロシアの法律、「政治的弾圧被害者の復権関連法」に基づき、犠牲者の弾圧被害者への認定を申請していた。しかし今年1月、ロシア中央軍事検察庁は、この法律は、特設軍事法廷など当時の不当裁判で弾圧された人々の名誉回復を目的としており、裁判自体が無かった「カティン事件」は適用外として申請を却下した。今回のロシア側の通報はこの決定を受けたもの。

 遺族は、ロシア側はジェノサイドの否定だけでなく、スターリン指導部の政治犯罪との認識も否定した、と批判している。ポーランド外務省もロシアの決定を批判したが、「両国で、カティン事件に関する法的性格の相違が未だ存在することに遺憾の意を表す。」と慎重な表現に留めた。

 

2.ワイダ、80歳誕生日

 3月6日、映画・舞台監督のA.ワイダ氏が80歳の誕生日を迎え、「ワルシャワ・ゲットー蜂起」最後の司令官であるM.エーデルマン氏他が祝いに参加、米国のスピルバーグ監督もVTRで祝意を送った。

 TV2、ガゼータ・ヴイボルチャ紙共催のアンケートでは、ワイダ作品の最優秀主演男優に「灰とダイヤモンド」の故Z.ツィブルスキが選ばれ、息子のマチェイ・ツィブルスキ氏が代理受賞した。  

 他の視聴者アンケート結果は次の通り。

○最優秀作品:「約束の土地」

○最優秀場面:「灰とダイヤモンド」で、マチェクとアンジェイがウォッカのグラスに灯を灯し、ワルシャワ蜂起の仲間を偲ぶシーン

○最優秀主演男優:「灰とダイヤモンド」のZ.ツィブルスキ

○最優秀主演女優:「大理石の男」、「鉄の男」のK.ヤンダ

○最優秀助演賞(女優):「ヴェセーレ(披露宴)」、「約束の土地」のB.ディキエル

○最優秀助演賞(男優):「約束の土地」のF.ピェチカ

 

3.育児有給休暇延長提案、国会で審議開始

 3月7日、法定育児有給休暇の延長案の審議が国会で始まった。現行の16週間は欧州でも最も短く、政府は第一子18週間、第二子以降20週間、双子以上の出産は28週間への延長を提案している。社会保障補助金などの財政負担額は約1億5,000万PLNと見積もられている。

 与野党は更に急進的な案を出し、与党「法と正義」案では全出産につき2007年に22週間、2008年26週間に延長し、2012年には第二子は38週間、第三子以降は52週間を提案。野党「家族同盟」は、休暇自体は26週間とし、ただし無条件再雇用期間を2年半に延長し、解雇には労組の同意必要とする案を提案している。

 労働市場専門家は、現状でもポーランド女性の就職率は約46%とEUでも伊、西に並び最低レベルだが、育児休暇や強制再雇用措置は、若い女性の正規雇用の一層の低下を招くと警告している。

 

4.閣外連立か、解散か

 与党「法と正義」、政党「自衛」、家族同盟の閣外連立が不安定な動きを見せた。未だ政策協定「安定協約」で合意された重要法案の審議にも入っていない段階で、ギエルティフ家族同盟党首は公然と「法と正義」を批判。これに対しカチンスキ「法と正義」党首、ユーレク下院議長、マルチンキェヴィチ首相らは、連立が安定的に機能しない場合、与党は3月中にも議会解散動議を提出する可能性があるとした。その後3月9日の三党党首会談では、取りあえず連立の維持が確認されたが、不安定が続いており、「秋の地方統一選前には連立崩壊、総選挙は確実か」(ジェチポスポリタ紙)と言われている。

 

5.欧州委、ポーランドとの問題続く。

(1)ポーランドの財政状況に懸念。ユーロ導入の消極姿勢にも批判

 3月1日、アルムニア欧州委員(経済・通貨政策担当)は、ポーランド政府に対し、2007年度の財政赤字の削減目標が達成不可能になったことに懸念を表明した。ポーランドは、2005〜7年期の3年間「収斂計画」により、財政赤字を対GDP比3%まで削減する義務があるが、今回、政府は欧州委に、GDP比で4.1%の見込みと報告した。

 ポーランドは、ユーロ未加盟のためERM基準違反による罰則は無いが、「収斂計画」の義務を達成出来ない場合、EU補助金の差止めの可能性がある。欧州委は、財政赤字の対GDP比3%達成年限の再設定など、新たな条件を検討したいとしている。

 この問題では、財政赤字の計算方法で、ポーランド政府と欧州委が対立している。EUの共通統計基準(EUROSTAT)では、国民の年金拠出が民間年金基金に充当される場合、国庫歳入から除外されるが、ポーランド側の会計方法ではこれが算入されており、財政赤字幅を相当縮めている。ポーランド側は計算方法の現状維持を要請しているが、欧州委の姿勢は固く、2007年4月提出の次期財政安定化見通し・計画では、EUROSTATでの算出が義務になっている。

 欧州委は、ポーランド新政権の、ユーロ加盟への消極的な姿勢も批判しており、加盟見通し時期などの提示を要請している。

 

(2)欧州委、ポーランド政府のBPH―Pekao合併妨害に警告

 Pekao銀行の親会社であるイタリアのUniCreditは、BPH銀行の親会社であるドイツのHVB銀行を吸収合併したため、ポーランド内に子会社を二つ抱えることになった。このため、UnicreditBPHとPekaoの合併をポーランド政府に申請したが、政府は銀行業界の競争阻害を理由に許可せず、逆にUnicreditにBPHの株式売却を要求した。3月8日、クロー欧州委員(競争政策担当)は、ポーランド銀行業界の競争が阻害されるとの論拠を否定、妨害措置を公式に批判し、ポーランド政府にその停止を要求した。