ポーランド政治・社会情勢(2月15日〜22日)
1.ジヴィシュ・クラクフ大司教、枢機卿に任命
2月23日、教皇庁はジヴィシュ・クラクフ大司教が3月任命の新枢機卿の一人に内定したと発表した。ジヴィシュ大司教は約20年間にわたり、ヴァチカンで前教皇ヨハネ・パウロ2世の秘書を務め、昨年の教皇の死去に伴い帰国、クラクフ大司教に就任していた。クラクフ大司教は伝統的に枢機卿に任命されており、任命自体は既定の路線とされている。
ポーランドでは、グロノヴィチ、ナグィ、マハルスキの三枢機卿は既に引退しており、グレンプ首座大司教を除けば、ジヴィシュ大司教が唯一の現役枢機卿となり、司教団内での権威が強化される。
2.ヤロスワフ・カチンスキ、下院本会議で「所信表明演説」
2月17日、政府与党「法と正義」のカチンスキ党首は、下院本会議で1時間に渡り演説、1989年の改革以来、過去17年間のポーランドは官僚・情報機関・財界・犯罪組織の癒着国家だったとし、今こそ国家秩序を回復し、第四共和国を建設するという持論を繰り返した。この癒着を温存する勢力として(旧共産系の政党ではなく)野党第一党の市民プラットフォームを暗に批判した。また、「法と正義」は民主主義の脅威ではなく、(1992年にスホツカ内閣が右派政治家に対する諜報活動を指示したとされる)国家保安庁(UOP)指令第0015号や、(その違憲審査を却下した)当時の憲法法廷長官が、現在も民主主義ルールを脅かしているとして、15年前の「事件」を再度持ち出し、当時の恨みが消えていないことを示した。
今後の経済政策については特に言及しなかった。
3.憲法法廷、カチンスキ発言を批判
2月17日のカチンスキ「法と正義」党首の演説に関し、憲法法廷のサフィアン長官は、カチンスキ氏が暗に批判したツォル元憲法法廷長官は、1993年のUOP指令第0015号の合憲性審査の時には長官ではなくただの判事であり、また憲法法廷が本件で合憲性判断を下さなかったのは、判決予定日の前日にミルチャノフスキ内相(当時)が指令第0015号自体を無効にしたため、訴訟自体が無効となったためだと説明した。同長官は、カチンスキ党首の発言は、基本的な事実誤認に基づく中傷であり、憲法法廷という、憲法上の機関に対する中傷は刑法上の違法行為となる可能性がある、と述べた。
4.ツォル前人権擁護官、カチンスキ発言に反論
上記演説でカチンスキ与党党首から「現在も活躍する著名な法律家の当時の卑怯な行為」と批判されたツォル前人権擁護官は、同発言の事実誤認を指摘し、更に「『法と正義』が進める現在の『司法改革』は、憲法の基本原理である三権の抑制均衡を破り、社会主義時代の党、特に第一書記指導による政治局への権力集中を想起させる。」「『第4共和国『』崩壊後、我々はその後始末をせねばならなくなる」などと批判した。ツォル氏は元憲法法廷長官、前人権擁護官としての職務振りから評価が高いが、与党の横車として批判の多いラジオ・テレビ委(KRRIT)法改正案を憲法法廷に提訴し、大統領選挙後のワルシャワでの市長、市政官不在状況の批判などの活動から、「法と正義」から「政治的偏向」と批判されていた。
5.「神性祭壇」に2000万PLNの国家補助金
2月17日、2006年度予算案が国会を通過、カトリック教会がワルシャワ・ヴィラヌフに建設中の「神性祭壇」に対する2000万PLNの補助金が計上された。野党民主左翼連合等が政教分離の憲法原則に反すると削除を要求したが、動議は圧倒多数で否決された。
6.ユーロ導入、新規加盟国でポーランドは最後発組、2013年の予測も
2月15日、ジェチポスポリタ紙はポーランドのユーロ導入に関する主要エコノミストの予測を掲載した。導入に消極的な現政府の元では、先送りされるとの予測が主流で、財政赤字の対GDP比等の経済条件を満たすのは早くて2009年頃、導入は2012−13年頃との見方が多かった。
EU新規加盟10カ国では、スロヴェニア、リトアニア、エストニアは2007年、ラトヴィアは2008年の導入を既に決め、チェコ、スロヴァキア等が2010年頃を見込んでいる。ポーランドは最後発組となる可能性が高いが、財政状況の悪いハンガリーよりは遅れないとも言われている。
各エコノミストは、ユーロ導入による為替関連費用の軽減が遅れることから、輸出関連を中心に導入遅延はポーランドに不利になるとしている。
7.ヤシンスキ下院国有財産委員長、国財相に就任
2月15日、カチンスキ大統領は、12月以来首相兼務の状況が続いていた国有財産相に、下院国有財産委のヤシンスキ委員長(法と正義)を任命した。ヤシンスキ氏はカチンスキ大統領の法相時代の次官で、民営化には保守的な方針であり、業績が好調な精銅公社(KGHM)の民営化や、Pekao、BPH両銀行の合併に強く反対している。