ポーランド政治・社会情勢(1月25日〜31日)
1.カトヴィツェの国際見本市会場で屋根が崩落。死者60名を越す惨事に
1月28日午後、カトヴィツェ・ホジュフの国際見本市センター第一号館で、毎年恒例の伝書鳩見本市の最中に、高さ11メートルの屋根が突然崩落、1月31日現在で死者64名、負傷者144名というポーランド史上最悪の建造物災害が起きた。当時会場内にいた参加者は約500人で、現場には尚十数名の遺体が埋まっている可能性がある。カチンスキ大統領は、三日間の服喪期間を宣言した。
この建物は2000年竣工と新しいが、建造当時から屋根に問題があり、2002年には積雪で一部が損傷し、構造維持のため臨時支柱で補強したとの証言がある。事故原因は現時点では不明だが、元々構造に問題のあった屋根に厚さ7〜10センチの氷雪が積もったのが原因とも推測されている。捜査当局は設計者や施工者、建物の管理会社等の取調べを開始、召喚を受けていた施工業者Invit社の担当役員は自殺未遂を図っていた。
なお、今回の消防等救助関係者、病院関係者の活動には高い評価が寄せられているが、カトヴィツェでは全国に先駆けて域内病院施設の統合管理システムが導入されていた。
2.ベネディクト16世、初の教皇回勅
1月25日、ローマ教皇ベネディクト16世は、就任後初の回勅(encyclical)「神は愛」を発布した。教皇回勅は全世界の司教宛の書簡で、教皇が教理や聖職者の職務に関する方針を示す最も重要な文書。
回勅では、第一部で、神の人間への愛は男女愛の「エロス」と非打算的愛である「アガペー(agape)」の統合であり、夫婦愛もそうあらねばならないと説かれ、セックスに限定した「エロス」のみの愛は男女の肉体を商品化すると警告している。第二部では、聖職者は慈善活動により、改宗や特定の政治思想への支持を要求してはならないとし、政教分離と、一方で社会公正実現のための教会の役割を強調した。
ポーランドの各紙は、愛に関する回勅は前教皇ヨハネ・パウロ二世が晩年執筆を開始していたもので、現教皇はその衣鉢を継いだと論評した。
3.政局:解散か、連立か。
(1)1月26日、与党「法と正義」のカチンスキ党首は、野党第一党の市民プラットフォーム(PO)との連立交渉は終了したと記者団に述べ、事実上決裂したことを認めた。
(2)同27日、POのトゥスク党首は、もしカチンスキ大統領が議会を解散するとすれば、明確な根拠に欠け、大統領自ら憲法違反を犯すものであり、「市民抵抗権」を行使すると発言した。ニェショウォフスキPO上院議員らは、その内容を選挙のボイコット、大統領が出席する行事のボイコット等などがあると発言した。
(3)同30日、上院ではPOの予算法案の早期審議決議案が否決され、期限内の採択が絶望的になった。
(4)同31日、大統領府は、憲法上の期限内(政府の予算案提出から4ヶ月)に予算法案の提出がなかったとして、大統領に解散権が発生したと発表した。今後二週間以内に解散の有無を決定することになる。
同日、「法と正義」のゴシェフスキ下院院内総務は、同党と「自衛」、家族同盟の三政党は、議会多数派を形成する「安定協約」の交渉で、1年間に60法案を制定する方向で合意に近づいたと述べた。各紙では、「未だ可能性はあるが、解散は遠のいた印象」とコメントしている。
なお60法案の中身は、出産休暇延長(労働法典改正)、年金新制度移行法案、国民教育研究所設置法案、国民教育法案、農業燃料補助金法案、住宅建設促進関連書法案、中央反独占庁設置法案など。
4.ホロコースト虐殺記録記念日
1945年1月27日にアウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所が解放されたことを記念し、昨年11月、国連では同日をホロコースト虐殺記録記念日と決定し、イスラエル、ドイツなど世界各国で記念行事が実施された。マルチンキェヴィチ首相はビルケナウのガス室跡で献花した。ワルシャワでは当時ゲットー内専用だった市電車両が通行し、クラクフではジヴィシ大司教の呼びかけで、多くの家庭で窓にロウソクを灯した。
5.職業学校への求人が急増
青年層の就職難が続く中、調理師、菓子職人、理髪・美容師、旋盤工などの現場技術者、縫製職人などを要請する「基礎職業学校」への求人が急増している。従来、基礎職業校は技術高校(technikum)と比較して教程レベルの低さが批判されていたが、普通高校進学者の増加のため、人材難が生じている。
各職業学校には「青田刈り」の求人が相次いでいるが、ドイツやチェコなど国外からの求人も急増し、ブイトムの調理・ホテル職業学校には、計1年9ヶ月の卒業後研修コースのオファーも多い。低下していた職業校への進学率も底を打ち、2002年に全中学卒業者の15.3%だったのが、今年は16.7%に増加した。