ポーランド政治・社会情勢(1月18日〜24日)
1.政局:連立か、解散か
政府・与党が下院での多数派を形成するか、解散・総選挙かを巡る政局の動きがこの週も続いた。
(1)与党「法と正義」と、政党「自衛」、農民党との連立内閣形成交渉では、「自衛」のレッペル党首は副首相兼農相での入閣を要求した。カチンスキ「法と正義」党首は、「有罪確定判決を受けた人物は入閣に適さない」と発言し、連立の可能性を否定した。レッペル党首には暴行、名誉毀損等で、実刑は免れたものの複数の前科がある。
(2)1月18日、カチンスキ党首は、民主左翼連合(SLD)を除く野党各党に対し、半年間は内閣と下院議長を信任し、中央反汚職庁(CBA)設立や、国家安全保障法等の重要法案に賛成、その間連立政権の協議を継続するという、「安定協定」の調印を提案した。もし実現しなければ議会解散もあり得るとした。農民党、「自衛」、家族同盟が交渉に前向きで、最大野党の市民プラットフォーム(PO)は、(政府・与党の)「無条件承認と同じ」として拒否した。
(3)「法と正義」とPOとの連立交渉も断続的に続いたが、具体的な結論は出なかった。
(4)予算審議の状況から、2月1日には大統領は解散権の発生を宣言する見込みで、憲法上、14日以内に決定する義務がある。
2.下院、予算案可決
1月24日、下院は一部修正案を含む2006年度予算案を可決した。与党「法と正義」や「自衛」、家族同盟、農民党などの賛成269票、反対はPOとSLDの180票だった。
与党は上院での再修正を行う見込みであり、大統領が解散権が発生するとしている1月31日まで上院通過、下院再審議・通過は絶望的で、なお国会解散の可能性を残している。
3.憲法法廷、市町村によるデモ、集会許可制を違憲と判断
1月19日、憲法法廷は、デモ、集会が道路交通法等を根拠として市町村当局の許可制になっている現行制度を違憲と判断した。今後は法改正により、届出制に変更となる。ポーランドでは、カチンスキ・ワルシャワ市長(現大統領)が同性愛者等の「平等の行進」を禁止し、昨年秋にはポズナニでも同種のデモが禁止された。ゾル人権擁護官(元憲法法廷長官)は、「本件規定がデモ禁止の口実になっており、表現、集会の自由に抵触する」として提訴していたもの。
4.上院補選で与党が圧勝
2月22日に実施されたチェンストホヴァ選挙区での上院補選で、与党「法と正義」のリシュカ候補と、無所属ながら同党系のラセツキ候補が当選し、他の全政党の候補を抑えて議席を独占した。特にリシュカ候補は、有効投票の約45%を獲得した。
チェンストホヴァ選挙区は、旧国営企業が多く、伝統的に左派が強いとされている。
5.厳冬
1月15日から約10日間にわたって、ポーランドは各地で零下20度を超える厳冬となった。ロシア・大陸寒波と西側の温暖気団に国が分断される現象も起き、20日には国内気温差がポーランドでは例外的な15度を記録した。(東部スヴァウキでー14度、西部ヴロツワフで+1度)。24日には、南東部ベシチャードゥイ山地のStuposianyでマイナス33度を記録した。
年配者は「昔はこれぐらいの寒さが当たり前だった」と言う人が多いが、過去数十年に渡って「暖冬」が当たり前になってきた欧州では、市民生活への影響も大きく、ポーランドで寒さが原因と見られる死者は170名に達し、各自治体で破裂配管の補修や、除雪などの経費がかさんでいる。
ロシア、ウクライナでガス需要が急増したため、21日にはウクライナ経由のガスは通常日量1,300万立米が700万立米に落ち込み、ベラルーシ経由で輸入量を増加したものの不足が生じ、家庭用暖房などは問題ないものの、「チッ素製造」(肥料)、「オルレン」(石油精製)、「ポリス化学」(化学)等の大口消費企業に打撃を与えている。
6.欧州委、ポーランド政府に「銀行合併妨害」で抗議書簡
1月23日、マックレーヴィ欧州委員(域内市場担当)は、クロー委員(競争政策担当)に続き、PeKao銀行(国内第二位)と商工銀行(BPH:同第三位)の合併不認可は、域内資本移動自由化に関するEU規定違反であるとして、ポーランド政府に説明を要請する書簡を送付した。
PeKaoはイタリアのUniCredito、BPHはドイツのHVB銀行の傘下に入っていたが、HVBがUniCreditoに吸収合併されたため、両行も合併の申請が為されている。ポーランド政府は、2、3位の銀行合併は国内の金融市場での競争阻害を危惧していると言われる。