ポーランド政治・社会情勢(1月4日〜10日)

 

1.政局:連立か、解散か

 国会では、予算案審議を中心に、与党「法と正義」と一部野党の連立か、マルチンキェヴィチ少数派内閣の継続か、国会解散・総選挙かを巡って連日政局が動いている。

 1月4日には野党第二党「自衛」と第四党の家族同盟が、「法と正義」に連立政権か協力解消かの決定を求めた。「法と正義」は連立政権ではなく院内協力を維持したいとする一方で、空席の異常事態が続く国家ラジオ・テレビ委員の2ポストを両党に提供し、予算修正案に一部同意するなどの懐柔策で、予算審議を乗切る方針を示したと推測されている。

 一方、同6日、政府、与党がズィタ=ギロフスカ元市民プラットフォーム(PO)副代表を副首相兼蔵相に迎えたため、同蔵相のリベラルな見解を批判する家族同盟は態度を硬化させ、与党との対立姿勢を示し、第一野党のPOや民主左翼連合と共に予算案否決に回る可能性も出ている。

 1月10日には突然POのトゥスク党首が与党との連立交渉復帰の条件を提示した。その中にはマルチンキェヴィチ内閣の降板なども含まれ、「法と正義」側が同意する可能性は少ないと見られる。しかし、家族同盟、「自衛」は、ギロフスカ氏の蔵相就任に加え、POと「法と正義」の交渉で与党に対し不信感を強め、同11日の国会予算審議では与党が孤立する場面も見られた。

 

 2月19日までに予算案が国会で可決、大統領に送付されなければ、憲法上、大統領に国会解散の権利が発生する。総選挙に至るか、妥協を図るかはJ.カチンスキ「法と正義」党首の判断に依る部分が大きい。

 

2.ズイタ=ギロフスカ元PO副党首、副首相兼蔵相に就任

 1月7日、ズィタ・ギロフスカ元市民プラットフォーム(PO)副党首が、副首相兼蔵相に就任した。解任されたルビンスカ蔵相は首相府の財政担当次官に就任した。

 ギロフスカ蔵相は、経済政策通として評価も高かったが、昨年5月に息子を国会議員選挙名簿で優遇するなど身内いきと批判され、POを離脱した。与党「法と正義」のカチンスキ党首は、当初から能力的に問題ありとされたルビンスカ蔵相の更迭を、就任1ヶ月後の12月には検討を始め、ギロフスカ女史に接触を開始していたとされる。「フラット・タックス」などリベラルな経済政策で知られる同氏の就任は、マルチンキェヴィチ内閣の政策転換とも言われ、ギエルティフ家族同盟党首は、「(与党に)だまされた。ギロフスカ氏が蔵相に就任するなら内閣信任に賛成しなかった。」と批判した。しかし、現時点ではギロフスカ氏の方針は雇用費用の削減や、財政規律の維持の表明に留まっている。

 元中心幹部のライバル党政権への加入で、市民プラットフォームは衝撃を受けた。カチンスキ「法と正義」党首は、今回の招聘を「多数勢力からなる中道・右派大陣営形成の一歩」として、更にPOの「人材切崩し」を行う可能性を示したが、「蔵相も出せない与党の人材不足の現れ」との指摘もある。

 

3.カミンスキ「中央反汚職庁」設立担当次官、著名実業家を名指し批判

 10日、政府が設立を急ぐ「中央反汚職庁」(CBA)のカミンスキ設立準備担当国務次官(下院議員)は、記者会見で、富豪で知られるJ.クルチク、A.グゾヴァトゥィ、R.クラウゼの三氏を「元閣僚等を積極的に雇用するビジネスマン」として名指しし、「今後も(官庁との縁故で)ビジネス上の利益を得られると思ったら間違いだ」と発言した。記者団からの質問に「三氏に具体的な嫌疑があるわけではない」と釈明したが、発言の軽率さと、CBAの強権体制を警戒する報道が目立った。

 CBAは捜査員約500名規模を予定し、公職者の申告財産を調査し、警察、最高監査院、国内保安庁(ABW)の権限を併せ持つエリート組織となる、とされている。

 

4.与党、育児休暇延長案発表

 9日、カチンスキ与党党首は、少子化対策として、現行16週間の法定出産・育児有給休暇を今年中に18週間へ、2007年には22週間、2008年には26週間に延長する方針だと発表した。更に、将来的には第二、三子出産母には50週間の育児休暇を導入の方針とも述べた。政府は、関連費用として一週間の延長毎に約7,500万PLNの歳出増を見込んでいる。

 ポーランドでは、経済状況の困難さから、改革後に法定出産休暇は何度か短縮され、現行の16週間は欧州でも最短に近い。与野党は本措置を基本的には歓迎しつつも、「雇用主が出産適齢期の女性雇用を一層控える可能性がある」(市民プラットフォーム)として慎重姿勢もある。ポーランド女性の出産は90年には平均2.0人だったが、現在は1.2人の低水準。

 

5.政府、年間学習日を1週間短縮。夏休み開始を7月1日から6月24日へ。

 5日、マルチンキェヴィチ首相は、小中学校の年間授業日数を一週間短縮し、夏休みの開始日を7月1日から6月24日とする方針を示した。同首相は理由として、「自分自身の物理教師の経験からも、冷房装置のないポーランドの学校では6月の勉強は集中できない。」と述べた。本措置により、年間授業日数は180日になる。

 各学校、教員は突然の発表に驚き、教員労組の代表は、「現場教員は6月でも充実した授業に努力している。欧州各国の年間授業日数は190−200日で、ポーランドは最短になり、カリキュラムをこなすのに一層困難になる。」と述べた。