ポーランド政治・社会情勢(12月21日〜1月3日)

 

1.ミコシュ国財相、辞任

 1月3日、カチンスキ大統領は、ミコシュ国有財産相の辞任申請を受理、マルチンキェヴィチ内閣では発足後3ヶ月で初の閣僚辞任となった。辞任の契機になったのは、同国財相に、資金洗浄やインサイダー取引の噂があるヴィトルド・T氏と、30万plnの取引疑惑があったというジェチポスポリタ紙の報道だった。マルチンキェヴィチ首相は、「国営企業界の悪しきコネクションを切る責任者としては、行き過ぎた行為があった。」と辞任受理の理由を説明した。

 ミコシュ国財相自身は疑惑を否定しており、各紙は「解任には首相も抵抗したが、証券関係者の国財相就任を最初から嫌っていたカチンスキ兄弟の圧力があった」とコメントしている。後任にはヤシンスキ下院金融委員長(法と正義)が噂されるが、当面首相が兼任する。

 

2.グレンプ首座大司教、ラジオ・マリヤを公然と批判

 12月26日、グレンプ首座大司教は、「ラジオ・マリヤはリズィク神父により指導されているが、ポーランドのカトリックの方針を示すのは司教団である。あるカトリックの団体が、司教団に従わず、一部の司教とのみ友好関係を持つのは許されない。ラジオ・マリヤはカトリックの団結でなく分裂をもたらしかねず、この問題は司教団の課題である」、などと述べ、公然とRM局と指導者のリズィク神父を批判した。

 同18日、教皇ベネディクト16世はヴァチカンを訪問したポーランドの司教団に対し、「カトリックのメディアは政治的自立性を持たねばならない。また司教団の全面的信頼を得ねばならない」と述べ、今回のグレンプ発言はこの発言を受けたものと見られている。

 ラジオ・マリヤに対しては、ゴツウォフスキ・グダィンスク大司教などの強硬批判派と、グウジ・ワルシャワ=プラガ大司教等の融和派など、司教団内でも分裂があると言われており、強固な支持者と政府与党の支持を持つこの組織に、司教団がどう対応するかが注目されている。この問題は、前教皇亡き後、ポーランドのカトリック教会の一体性が維持されるかの試金石とも言われ、5月の教皇訪問前の課題となっている。

 

3.レフ・カチンスキ、大統領に就任

 12月23日、レフ・カチンスキ新大統領が、国会での上下両院総会で就任式や、聖ヤン大聖堂でのミサ、ピウスツキ広場での軍統帥権継承式典などを終え、5年間の任期を開始した。一連の行事はこれまでで最長の6時間を記録した。

 新大統領は所信表明演説で、公正、連帯、誠実をスローガンに掲げ、「国家を浄化し、再生する」と述べ、現国会では困難だが「第4共和国」の創設を目標に、将来的な憲法改正を目指すとした。経済政策では所得格差と地域格差の解消に努め、外交関係は米国との協調を第一に、EUでも独立した行動を取り、ロシアとは「現実的な関係改善」を希求する、と述べた。

 シンクタンク「公共問題研究所」のボビンスカ所長は、大統領のメッセージは社会福祉を期待する人々だけを対象にしており、活動的なポーランドを支え、発展を指向するものではなかった。行政機構についても、汚職を無くすだけでなく、効率性の向上が必要だ、と批評した。

 

4.ロシアのガス供給一時停止でポーランドにも影響

 元日にロシアがウクライナ向けのガス供給を停止した際、ポーランドへの供給も14%減少した。2日から3日にかけて通常量に復帰し、実際にはほとんど影響はなかったが、改めて輸入ガスのほぼ100%をロシアに依存する体制が問題となっている。政府は、ノルウェイからの輸入とパイプライン建設の再検討、タンカー購入と港湾施設建設を含むアルジェリア等からの海上輸入、ロシアを通過しない中央アジアからのパイプライン敷設などを検討したいとしているが、いずれも実現にはほど遠い。また政府は、EUに対し対ロシア・エネルギー共通安全保障政策の策定を求めていく考えだが、これにはドイツやフランスの消極姿勢が目立っている。

 

5.与党、出産一時金法案の採決で敗北。

 12月29日、下院は、少子化防止策で焦点となっている出産一時金(別名「産着手当て」)の関連法案の採決を行った。低所得者家庭への支給額を現行の約500plnから1,000plnに増額する政府案は問題なく可決されたが、家族同盟が提案した、全家庭に同額の手当てを支給し、低所得者家庭には更に1,000plnを上積みする別法案も、政府・与党の反対の中、市民プラットフォーム(PO)の賛成により可決された。また、農民党提案の、これまで受給率20%だった農村家庭に対し、家族手当の受給資格を大幅緩和する法案も、与党反対の中で可決された。

 これらの法案施行による予算経費は約13億plnと見積もられ、政府は財源捻出に困難を抱える。大統領は、政府案には30日に署名したが、野党二法案は「1月に検討する」と述べ、拒否権行使の可能性を残した。

 今回、家族同盟と市民プラットフォームが院内協力を行ったことで、与党「法と正義」は下院での継続的な閣外連立を期待できなくなり、国会運営に課題を残した。

 

6.ポーランド、イラク駐留を延長

 12月27日、政府は2006年末を期限として、イラクのポーランド部隊駐留の延長を決定、同29日に大統領も了承した。マルチンキェヴィチ首相は、イラク駐留関連の国連安保理決議の延長とイラク政府からの要請を理由に挙げ、現在約1400名の部隊を3月には900名に減員し、駐留部隊の性格も、治安維持的なものからイラク軍などへの顧問・教育的役割が強化される、とした。ベルカ前内閣は、安保理決議の期限だった2005年末までで一応撤退の方針を示していたが、2006年度予算案には部隊駐留経費の約1億3,000万plnを計上しており、今回の決定も前政権の方針からの「転換」と見る向きは少ない。