ポーランド政治・社会情勢(12月14日〜20日)

 

1.EU、首脳会合で中期予算案に合意

 12月17日、EU各国首脳は、数日前の予測を覆し、2007−13年の中期財政見通しに合意した。予測GDP比1.045%、総額約8,620億ユーロで、焦点となっていたイギリスの還付金が105億ユーロ削減され、また将来的に農業補助金を見直す方針で英仏の妥協が図られた。36時間を超えるマラソン交渉では、ドイツのメルケル首相が出した増額案がターニング・ポイントとなり、不成立となれば、EUにとって「破滅的な事態」とさえ言われただけに、同首相の外交的成果、と評価されている。

 ポーランドは、EU構造基金の内20%と最大の受益国となり、失業対策20億ユーロ(6万人の雇用創出)、治安強化10億(警察強化)、環境対策70億(下水道、風力発電)、道路整備170億(高速道路1500キロ、自動車専用道路3000キロ)、鉄道近代化100億、農業210億、教育10億(コンピュータ機材等)、空港整備10億(ビャウィストック、ウッジ、ルブリン新空港)などが認められた。今後、低い補助金利用率の改善が課題となっている。

 

2.ラジオ・テレビ法を改正。与党が国営TV・ラジオを掌握か

 12月15日、下院は超スピードの審議で国家ラジオ・テレビ法の改正案を可決した。委員会規則等を無視した強行審議には野党から批判があったが、与党「法と正義」に「自衛」、家族同盟の賛成で可決された。上院可決と大統領署名もほぼ確実で、早ければ数日内に発効する。

 ポーランドでは、憲法上の機関である国家ラジオ・テレビ委員会(KRRiT)が、「TVP」各局、ラジオ第1〜3局などの国営放送局に対し、人事権など強い権限を持っている。今回の改正により、KRRiTの9委員は5委員に削減され、大統領、下院が各2名、上院が1名を指名、委員長は大統領が任命することになった。上院で過半数を持つ「法と正義」は、上院、大統領分3名だけで多数を握ることになる。「法と正義」は、TVPなどの国営メディアが選挙期間中から「民主左翼連合と市民プラットフォームに偏向している」と批判しており、今後大幅な人事異動が予測され、「法と正義」のメディアへの影響力が強化されると見られている。

 なお、今回の改正では、電波割当てを担当する電気通信・郵便規制庁(URTiP)が廃止、替わりに電気通信庁(UTE)が発足し、同庁の長官はKRRiTが選出することになった。TV、ラジオ業界は電波使用免許の更新手続の簡素化などを期待したが、無審査更新が適用されるのはラジオ・マリヤを筆頭とする「社会放送局」のみとなった。

 

3.クワシニェフスキ大統領、ヨハネ・パウロ2世の列聖証人として証言

 12月20日、クラクフ列聖審議会議長のピェロネク司教は、大統領府で、クワシニェフスキ大統領に前教皇ヨハネ・パウロ2世の事跡について聴取した。質問は数十項目に渡り、双方とも内容は一切明かしていないが、恐らく、ヨハネ・パウロ2世が内外の政治に与えた影響、その社会観などの大統領の見解を聴取したものと見られる。大統領は、前教皇がポーランドのEU加盟を支持したこと等を強調したと見られる。

 聖人列への登録(列聖)は、ローマの列聖審議会が決定する。クラクフ審議会はポーランドでの調査を担当しており、来年3月頃に作業終了の予定で、ローマの本審議会も早ければ6月頃に審議を終了する。なお、無神論者のクワシニェフスキ大統領を事跡の証人としたことには、一部から批判もあった。

 

4.「12月事件」の発砲命令者はコチョウェク副首相か:関係者証言

 12月19日、1970年にグダィンスクの労働者街頭デモに当局が発砲、犠牲者は100名を超えたと言われる「12月事件」の責任を追及する裁判で、当時のレーニン造船所部長のK.グニェフ(72。現在ドイツ在住)は、発砲を容認したのは当時のコチョウェク党政治局員候補・副首相だったと証言した。

 証言では、1970年12月15日、グダィンスクの治安部隊本部で、治安担当のコルチンスキ国防次官が、「もし造船所労働者が街頭に出る場合は、最初は空中に、次に足下に、それでもだめなら真っ直ぐ撃て」との指令を確認したのに対し、コチョウェク副首相が「命令を執行せよ」と述べた、としている。

 この事件では武力鎮圧の発案者、命令者など、未だに不明瞭な部分が多く、この裁判でも事実関係の特定が焦点になっており、ヤルゼルスキ元大統領(当時国防相)も出廷している。コチョウェク元副首相は、決定したのは、当時ゴムウカ党第一書記に続くナンバー2だったクリシュコ党政治局員兼書記(故人)だったと主張している。

 

5.政府、警官不足のため、1,700名の憲兵を一般治安維持に動員決定

 失業が深刻な中で、数千名の警察官ポストが空席のままとなっている。12月19日、政府は、

警察法の非常事態関連条項を利用し、クリスマス・シーズンなどに全国で約1,700名の憲兵を一般治安維持に動員することを決定、街中で迷彩服を着た憲兵がパトロールを開始する。

 

6.ガス料金値上げ

 12月15日、ポーランド石油・ガス開発公社(PGNiN)は、新年から平均5〜7%のガス小売価格を値上げすると発表した。調達価格の上昇によるもので、3月には一層の値上げも検討されるとしている。国際ガス価格全般の上昇で、ロシア産ガスの価格も2002年から比較すると約2.5倍となっている。