ポーランド政治・社会情勢(12月7日〜13日)
1.疑惑が晴れないCIA秘密刑務所問題
米国でCIA関係者がマスコミにリークしたとされるポーランド、ルーマニアの「CIA秘密刑務所」問題の疑惑が続いている。政府では、大統領、首相、関係閣僚が全員事実無根としていたが、次第に否定のトーンを弱め、12月9日には、マルチンキェヴィチ首相は調査を行う意向を明らかにした。
各紙は、秘密刑務所の存在疑惑は、「ポーランドは米国情報機関の言いなりになる国」という悪印象を引き起こし、EUではこの種の施設を設置した加盟国には、閣僚理事会での投票権停止などの制裁が課される可能性もあるため、潔白の証明が必要だ、としている。米国のライス国務長官は、先日のNATO外相会合で、「現在は」、「拷問の事実は無い」、としたものの、過去に秘密刑務所等が存在したことは明確には否定しなかった。なお、2002年からヴァルミア・マズールのシマーヌィ飛行場に、CIA工作機が少なくとも5回は飛来したことが明らかになっている。
2.国民記録機関(IPN)長官の後任選出問題
社会主義時代の対公安協力などの前歴資料等を管理する「国民記録機関」(IPN)では、6月にキエレス前長官の任期が切れて以来、後任選出が遅れている。IPNは個人の人権や政治的にも大きな影響力を持ち得るだけに、その動向が注目されている。12月5日、漸く下院でクルティカIPNクラクフ支部長の長官就任が承認され、年内には上院でも可決、決定する見込みだが、ここに来て同候補の「ライバル追い落とし疑惑」が出ている。
IPN総裁には、クルティカ氏以外に、戦争での犠牲や戦功の記録、記念碑の整備などを担当する「戦闘・犠牲記録保存委員会」のヴォジニャク委員長も候補とされていたが、6月に同委員長の旧公安スパイ疑惑が持ち上がり(後に事実無根と判明)、IPN評議会は候補推薦を取り止めた。クルティカ氏には疑惑公表への関係が疑われており、下院で支持した与党「法と正義」と第一野党の市民プラットフォームも説明を要求している。
3.ミハウキェヴィチ労社相、失業保険制度の導入は「検討段階」
12月10日、ミハウキェヴィチ労働・社会政策相は、TVインタビューで、失業保険制度の導入の可能性は「検討段階」と述べた。ポーランドでは失業者給付は事実上生活保護的な短期公的手当であり、失業者は即生活苦に陥ることが多く、与党「法と正義」は失業保険の導入を選挙公約に掲げていた。しかし、今回ミハウキェヴィチ労社相は、「(導入は)一定の経済成長が前提条件となる。来2006年は年金引上げが予定され、財政状況も厳しい。また社会保障費関連の労働コストが高すぎるという批判がある中、保険料の雇用者、労働者、政府の負担原則についての検討もこれからだ。」と慎重な見方を示した。
4.欧州委、バルト海漁業資源保護のためタラ漁制限の方針。漁民への打撃が懸念。
欧州委員会では、バルト海のタラ漁に、2006年から現行以上の制限措置を導入する方針を示した。目標は現在の年間漁獲量の15%減で、現在2ヶ月の禁漁期間を4.5ヶ月に延長し、東経15度に沿って幅18キロの全面禁漁区域を設定、日曜には他の魚も含めた操業禁止も検討されている。ポーランドの漁業関係者は、EU加盟による操業制限に加え、行政の立ち後れからEUの補償措置も遅れがちなため、新たな制限措置に生活の不安を訴えている。
5.北欧ガスパイプライン、着工。シュレーダー前首相が管理会社会長へ。
12月9日、ロシアからバルト海海底パイプラインを通ってドイツなどに天然ガスを輸出する「北欧ガスパイプライン」の起工式が、ロシアのヴォログダ州で行われた。パイプライン運営のために今後設立される「北欧ガスパイプライン社」(North European Pipeline Company)では、経営理事会会長にシュレーダー前ドイツ首相、CEO格の専務理事(Executive
Director)に、元東独公安(STASI)要員で、プーチン大統領のKGB東独駐在時代から関係が深いと言われるドレスナー・グループのヴァルニッヒ(Warnig)氏が就任した。
マルチンキェヴィチ首相は、北欧パイプライン建設差止めは既に非現実的であり、ドイツが第二ヤマル等のポーランド経由の地上パイプライン増設に協力するのを望む、これによりポーランドのトランジット国としての重要性確保したい、と述べた。
6.ラジオ・マリヤ開局14周年
12月7日、カトリック放送局「ラジオ・マリヤ」の開局14周年記念行事が開催され、全国から約1万人の聴取者メンバーなどがトルンの同局本部に集まった。秋の国会、大統領選挙を通じて政府、与党と関係を深めた存在感を示した。
記念ミサにはユーレク下院議長、レッペル同副議長(政党「自衛」党首)、ワッセルマン情報機関担当相などが参加した。ユーレク議長は、「ラジオ・マリヤの支持者の政府支持、ポーランド復興に対する貢献に感謝する」と述べ、司式を担当したヴァルミア大司教は、「ヴァヴェルの竜が火を噴き、ワルシャワのゴリアテが爆発し、ヤースナ・グーラが輝く」。(いずれもポーランド各地で愛国的とされる旧跡)と述べ、ラジオ・マリヤとTV
Trwamの活動を賞賛した。この日のラジオ・マリヤは、創立者のリズィク神父に加え、「カチンスキ兄弟、マルチンキェヴィチ首相とその誠実な閣僚から成るカトリックの内閣」を賞賛した。