ポーランド政治・社会情勢(11月16日〜22日)
1. ドルン内務行政相、副首相に
11月21日、クワシニェフスキ大統領は、ドルン内務行政相の副首相就任を了承、任命した。副首相職は、与党「法と正義」と市民プラットフォーム(PO)の連立内閣設立交渉が失敗して以来、空席となっていたが、与党は「首相の外遊時などに必要」としてドルン氏を推薦した。副首相任命により、POとの再連立交渉の可能性が更に遠のいたと指摘されている。また、閣内最大の実力者であるドルン氏の副首相就任は、改めてマルチンキェヴィチ首相に対する与党の「政治的監視」(ガゼータ・ヴイボルチャ紙)とも言われている。
2.カチンスキ「法と正義」党首、名誉毀損で有罪判決。
11月21日、ワルシャワ上級裁判所は、カチンスキ「法と正義」党首に対し、2003年にラジオ番組で「民主左翼連合(SLD)は犯罪集団」などと発言したことに対し、名誉毀損とした地裁判断を支持する判決を下した。上告は未定。今回の判決が有効となれば、同党首はラジオ番組上での謝罪と、ポーランド赤十字社への1万PLNの強制寄付、相手方の訴訟費用5,000PLN負担の義務が生じる。
3.「法と正義」、市民プラットフォームが支持を伸ばす。
11月20日、世論調査センター(CBOS)は最近の政党支持率を発表した。それによると、与党「法と正義」が43%と国会選挙での得票率27%から躍進し、市民プラットフォームも24%から28%へと支持率を伸ばした。他の政党は、「自衛」8%、家族同盟5%、民主左翼連合5%、農民党2%などといずれも後退し、特に「法と正義」への支持者の流出が目立った。
4.A.ワイダ氏、カティン事件の映画作成へ
11月20日、映画・舞台監督のA.ワイダ氏は、1940年春にソ連内務人民委員部によって抑留ポーランド将兵が大量虐殺された、所謂「カティン事件」をテーマにした映画の作成を開始すると発表した。予定標題は「Post Mortem」(ラテン語。「死の後」の意味)。ワイダ氏は映画作成の構想を相当以前から温めていたが、数年前に最初に作成された台本には難色を示し、今回、A.ムラルチク氏のシナリオにより製作開始を決めた。2月頃から撮影が開始され、場所はクラクフとワルシャワ、ワルシャワ近郊の森林地帯となる予定。ワイダ氏は父親をカティンで失っている。
5.ポズナニで同性愛者の「平等要求デモ」。拘束者数十名
11月20日、ポズナニで、同性愛者等によるデモ「平等の行進」が行われた。ポズナニでは、同じデモが昨年は合法許可され、警察の保護があったが、今年は市長、県地方長官が治安維持の理由から不許可とし、警察が参加者を拘束した。デモにはヤルガ=ノヴァツカ下院議員(前副首相)等も参加した。
ワルシャワでも春に同種のデモがカチンスキ市長によって不許可となり、団体側が強行している。ポーランドでは、同性愛者のデモには右派青年団体「全ポーランド青年」などが暴力で妨害するケースが多く、今回も警官隊が間に入って衝突を抑えた。
各紙では、「西欧では当たり前のデモがポーランドでは未だに大事件になる」と報道した。
6.政府、ガソリン物品税凍結解除、実質引き上げへ
11月21日、マルチンキェヴィチ首相は、年末で期限の切れるガソリン物品税凍結措置の解除を「検討する」とした。本措置は、前内閣が9月に、ガソリン1リットル当たり1.57PLNの物品税を、年末までの時限措置として1.32PLNに引下げたもので、解除により実質増税となる。
与党「法と正義」では凍結維持を公約にしていたため、党内でも議論が紛糾したが、マルチンキェヴィチ首相は、ガソリン価格の高値は石油会社の利益獲得のためだとして、オルレン、ロトスの二大石油会社に値下げを交渉するとした。二社は国営系のため、政府・与党による経営陣の人事交代の口実という見方もある。
7.政府税制改革案
11月18日、マルチンキェヴィチ首相は税制改革について言及し、来2006年では(公約としていた)利子課税撤廃も含め税制の見直しはほとんど行わず、2007年から個人所得税は18%、32%の二段階とし、課税控除枠は現行通り530.08PLN、ただし少子化対策等の家族優遇枠を導入する可能性があるとした。また、小規模企業には投資控除制度の導入を検討、法人所得税自体は公約通り現行19%から18%に引き下げるとし、総合的な税制改革案は3月頃に発表すると述べた。
8.国防相、2007年のアフガニスタン派兵増派を確認。
11月22日、シコルスキ国防相は記者会見で、マルチンキェヴィチ首相が所信表明演説で表明した、ポーランドがNATOのアフガニスタン安定部隊(ISAF)に、2007年に900名を増派するという予定を再度確認した。同国防相は、イラク派兵では経費の60%を米国が負担したが、NATOでは派遣国の100%費用負担が原則のため、予算措置が必要になると述べた。
同国防相は、ポーランドのイラク派兵による経済的見返りに関し、ポーランド・BUMAR社のイラク軍への武器納入に加え、イラク石油公社へのポーランド資本の優遇参加も検討されており、12月6日には本件でイラク代表団が来訪する予定だと述べた。政府では、イラク産原油の導入により、原油調達のロシアへの過度依存が改善されると期待されている。
9.ポーランドの神父、欧州各国への派遣相次ぐ。(rz3)
ポーランドのカトリック神父が、聖職者不足が続く西側の教会に赴任するケースが増えている。主な赴任先はドイツ、フランス、オーストリア、米国だが、これまで比較的聖職者志望の多かったスペインやポルトガルへの赴任も増加している。派遣は通常5年契約で、派遣元と受容先の司教の間で合意が交わされる。現在、クラクフ大司教座だけで42名が派遣されており、全国では数百名に達しており、十年前の約二倍に達している。ドミニカ会等の修道会からの派遣もある。十年前の約二倍。中には派遣したまま定住する聖職者もある。
ドイツでは、派遣神父の月収はネットで約2,500〜3,000ユーロだが、ポーランドと異なり住宅等も自分で手配しなければならない。また、同じカトリックでも典礼や教会の運営などは各国で差があり、派遣時には、語学以外にこうした相違についても研修を受けている。