ポーランド政治・社会情勢(11月2日〜8日)

 

1.「ハイパーマーケット・ヒステリー」

(1)11月5日付のファイナンシャル・タイムズ紙は、1面でルビンスカ新財務相とのインタビュー「Hypermarkets not welcomed in Poland」を掲載した。同財務相は、イギリス系のTESCOを例にとって、「ポーランドではハイパーマーケットは経済に貢献しておらず、」中小商店を圧迫しているという持論を展開した。テスコ側は雇用や投資実績などを挙げて反論し、国内のエコノミストからも、「財務相として不適切な発言。外国投資家にポーランドのイメージ悪化」と批判された。

 この発言には、ブリュッセルの市場・サーヴィス担当欧州委員のスポークスマンが、「大規模店、中小店共に法的には平等な扱いが必要」と批判したが、マルチンキェヴィチ首相はルビンスカ財相の発言を支持した。

(2)11月8日、フランス系ハイパーマーケットの「Geant」で、「連帯」などの従業員労組が、11月11日の独立記念日の休業を要求したが、経営側は「競争が厳しい中、顧客離れを招く」として拒否した。このため、労組側は、ワルシャワなどの各店舗で、当日14:30から、来店の客に不買を呼びかける抗議行動を実施すると発表した。

(3)政府与党の「法と正義」(PiS)では、「中小商店の擁護のため、『日曜、祝祭日のハイパーマーケット営業制限法案』を検討している」(ザヴィシャ下院議員)とし、支持団体の労組「連帯」や、一部教会関係者などから歓迎されている。

 ただし、ポーランドでは、チェコやハンガリーと比較しても小売業でハイパーマーケットが売上に占める割合は低く、業界専門家は、「中小商店の本当のライバルは「Biedronka」、「Lidl」などの安売り中規模店で、攻撃対象を間違えている」と指摘する。各紙では、「一部の業者を狙い打ちする法案は不公正。政策の優先度よりも、特定価値観にこだわる中道・右派政党の典型的なパターン。」と早くも新政権による国政の混乱を危ぶんでいる。

 

2.財務相、財政赤字の拡大を「要求」

 上記1.のファイナンシャル・タイムズ紙でのインタビューで、ルビンスカ財相は、ポーランドでの社会保障負担の高さについての質問に対し、「それは問題ではなく、貧困の多さが問題だ」、として改革よりも社会給付重視の姿勢を示し、また「来年度財政赤字は(首相公約の)300億PLNではなく、研究開発のため10億の赤字上乗せを首相に要請したい」と財政赤字拡大を容認する発言を行った。アルムニア欧州委員(経済・通貨政策担当)は、「(ポーランドの)財政・経済改革の後退が懸念される」と批判した。

 

3.「市民プラットフォーム」、マルチンキェヴィチ内閣不支持を決議。

 11月3日、議会第二党の「市民プラットフォーム」(PO)は、11月10日の下院本会議での内閣信任投票について、反対投票で臨むと決定した。トゥスク党首は、「与党「法と正義」との連立内閣の交渉は、同党のカチンスキ党首が、裏で「自衛」、家族同盟、農民党との別の連立交渉が進めたことから中断した」とし、「POは強い野党を目指す」、と述べた。ロキータ副党首は、「マルチンキェヴィチ新内閣は弱体で、政治危機を引き起こす拙劣な内閣であり、支持しても意味がない。この内閣はポーランドに危機をもたらすだけだ。」とした。

 それまで「自衛」との関係について発言を避けてきたカチンスキ「法と正義」党首は、「レッペル(「自衛」党首)は大統領選挙で我々を支持し、下院の幹部人事でも我々を助けてくれた。今、彼を下院副議長から外すことは出来ない。」と述べ、改めて「自衛」との関係を認める結果になった。

 

4.EUからの各種補助金等の利用率、加盟後1年半で3.2%に留まる。

 11月7日付のジェチポスポリタ紙は、ポーランドは昨年5月のEU加盟以来、構造調整基金などのEU補助金で、2004−06年に使用が可能な約345億PLNの内、約3.2%(約13億PLN)しか利用できていない(受領ベース)との記事を掲載した。国道など、国の道路整備事業への使用実績はゼロだった。

 EU補助金は、インフラ整備などの公共事業で大きな役割を果たし、利用が低水準に留まっているのは経済発展上の影響も大きい。原因として、同紙は、EU基準以上に複雑な国内の助成受領手続を挙げ、公共調達関連法等の改正が必要としている。また、EU補助金の利用は立替えが原則だが、仮払いから助成金受領までの期間が長すぎるため、自治体が一時的な財政負担に耐えられないことも挙げられている。この他、道路整備事業での土地調達関連法の不備や、環境団体等による事業妨害目的の行政申請手続が簡便すぎることなど、公共事業全般に絡む欠点も指摘された。

 政府は「開発省」設置による利用促進を目指すが、改善されない場合は予算未消化となり、2007−13年度の次期EU予算でのポーランドへの配分に影響も出かねない。

 

5.レリガ新保健相、医療改革案の骨格を発表。「法と正義」公約を事実上撤回。

 11月4日、レリガ新保健相は、医療制度改革案の概要を発表した。それによると、与党「法と正義」が公約としていた病院の再国公営化は全面的に破棄され、基本的には健康保険基金で運営する現行制度が維持されることになった。更に、少なくとも2年間は現在の制度をそのまま維持、その後は国民健康保険基金(NFZ)の地方分割等を検討するとしている。また、NFZの資金不足を補うため、約12億PLNの国庫補助を要求したいとした。

 

6.マルチンキェヴィチ首相、現職首相として初めて「ラジオ・マリヤ」に出演

 11月7日、マルチンキェヴィチ首相は、現職首相として初めて、カトリック民族主義の牙城といわれ、多くのファンを持つ「ラジオ・マリヤ」の番組に約2時間にわたって出演、経済政策などの質問に答えた。ジョブロ法相、ワッセルマン情報機関調整担当相が同席した。番組の最後には、同ラジオ局を独裁的に運営するリズィク神父が、「我々は初めて話が出来る首相を得た」と賞賛した。

7.オケンチェ空港、来年4月に新ターミナル開設

 収容能力が限界に来ていると言われるワルシャワ・オケンチェ空港で、来年4月に新ターミナルがオープンする。同空港の利用者は2000年に年間430万人だったのが、2005年に720万人と飛躍的に増加している。また、格安航空会社の展開などにより、ポーランドの航空市場はEU諸国平均の約5倍の伸びを記録しており、地方空港も活況を帯びている。近く参入するアイルランドのRyanairは、ウッジ、シチェチン空港を基地として、国内路線への参入も検討している。

 

8.コペルニクスの遺骨発見。死去当時の肖像を再現

 地動説提唱者のM.コペルニクスの遺骨が発見された。コペルニクスは砂州を隔ててバルト海に面したフロンボルグの聖堂で研究、執筆活動を続け、1543年に70歳で

亡くなり、同聖堂に葬られた。埋葬場所は数百年前から不明とされてきた

が、ポーランドの学者グループは文献などからその位置を割り出し、コペ

ルニクスのものと思われる遺骨を発掘、肖像画に残された左目の傷との

同一から、本人と推定された。ワルシャワ警察本部の中央犯罪研究所の

協力により、この頭骸骨から死去当時のコペルニクスの肖像も復元された。