ポーランド政治・社会情勢(10月26日〜11月1日)
1.PO―PiS連立交渉
選挙後に連立内閣を形成すると見られていた第一党の「法と正義」(PiS)と第二党の「市民プラットフォーム」(PO)では、10月26日の下院議長選挙で対立が決定的に表面化した後も断続的に交渉が続いた。10月30日の日曜日の夜には、ゴツウォフスキ・グダィンスク大司教の仲介でJ.カチンスキPiS党首やトゥスクPO党首らのトップ会談が行われた。会談は物別れとなり、同31日にはPiS内閣が発足したが、マルチンキェヴィチ首相は「政府とPO議員団との政策合意」などの提案を続けている。しかしPOは「PiSの『自衛』との協力解消」を要求、PiSが拒否するなど、膠着状態にある。
PO内では連立・入閣派と野党派の論争もあり、11月3日には連立政権派であるロキータ前院内総務が、「連立政権を組んで中からPiSを監視、牽制すべきだ」と主張する論説を紙上で発表した。しかしこの論説でも、同時にカチンスキPiS党首の政治手法を厳しく批判しており、両党の連立は極めて難しい見通しとなっている。
2.マルチンキェヴィチ内閣は「政治家+専門家の少数与党内閣」
10月31日に成立したマルチンキェヴィチ内閣に関し、各紙は、「首相は与えられた条件の中ではまずまずの人材を揃えた」と評価した。陣容は与党「法と正義」(PiS)の議員と一部の民間人、官僚からなる「与党政治家+専門家」内閣となった。
外相には、初めは大御所のバルトシェフスキ元外相に打診したが断られ、「3〜4番目の候補」のメレル駐露大使に落ち着いた。レリガ前上院議員の保健相就任には、同人が大統領選挙ではトゥスク候補を支持したため意外に受けとめられた。レリガ氏はかなり迷った末に、L.カチンスキ次期大統領の説得で就任に応じたと言われる。同氏はPiSの医療政策を批判してきており、「PiSは早くも政策転換か」と論評されている。
3.与党、内閣承認に向けて右派、「自衛」の協力取り付けへ
憲法上、新内閣は下院の承認を得ねばならないため、マルチンキェヴィチ首相は11月10日の本会議開催を申請した。与党「法と正義」の議席は、下院460議席中155しかないため、首相は市民プラットフォーム(PO)に支持を要請しているが、POのトゥスク党首は、「『法と正義』のカチンスキ党首が、レッペル「自衛」党首との連盟を解消しない限り、支持は出来ない」と拒否の構え。PiSでは、「自衛」(56議席)、家族同盟(34)、農民党(25)の取り込みで過半数の獲得を図っている。各紙では、「『PiS・自衛』の新たな連立?」と見出しを掲げた。
レッペル「自衛」党首は、「PiSとは単なる院内連立ではなく、共に行政を担当したい」と述べ、協力に前向きの姿勢を示している。
4.大統領、議会解散の場合、投票日は1月15日と発表
10月26日、クワシニェフスキ大統領は、新政権が憲法上の3回のプロセスで信任を得られず、議会解散となる場合は、1月15日を投票日とすると述べた。PO、PiSの連立発足が遠のき、次期内閣の議会での信任が難しくなっていることを受けたもの。憲法上、大統領任命(第1回)→議会任命(第2回)→大統領任命(第3回)といずれも内閣が信任されない場合は、大統領は議会を解散し、総選挙を施行しなければならない。
5.マルチンキェヴィチ首相、経済政策案を提示。経済界から批判相次ぐ。
10月28日、マルチンキェヴィチ首相は、「市民プラットフォーム(PO)にも受け入れ可能な新経済政策を立案した」として、ワルシャワ証券取引所でプレゼンテーションを行った。
主な内容は、○個人所得税率を18%、32%の二段階とし、ただし32%の対象者は年間所得8万PLN以上で納税者の数%に留める、○法人所得税の19%から18%への引き下げには、企業規模での格差を設けない、○企業の新規雇用分に社会保障費(ZUS)と所得税の優遇措置を与える、○VATは10%代後半と、7%の二段階とする、○2006年に60億の行政経費を削減、○国が株式を支配する企業の数を減らす(ただし具体的数字には言及せず)。
PO側は、「新しくも、妥協可能なものでもない」として受け入れを拒否。経済界からも、「PiSのこれまでの経済政策を表面的に手直ししただけ」と厳しい評価が相次いだ。
6.PiS、上院でPOのニェショウォフスキ副議長候補に反対
10月27日、前週にボルセヴィチ議長を選出した上院では、副議長の選出が行われた。上院第二党の市民プラットフォームは著名な元「連帯」活動家のニェショウォフスキ議員を候補に推薦したが、第一党の「法と正義」(PiS)が、同議員はPiSに非協力的だとの理由で反対した。ニェショウォフスキ議員に賛成票を投じたボルセヴィチ議長(無所属)は遺憾の意を示した。
なおPiSは、自党の副議長を3名にするため、副議長枠を3名から4名に増やす規則改正も実施し、現在4番目の副議長は空席のまま。PiSは連立政権の動向次第で、「自衛」等の第三候補にポストを回す可能性も検討している。
7.シュタインバッハ「ドイツ追放者連盟」代表の発言に対する反応
10月30日、ドイツ追放者連盟のシュタインバッハ代表(キリスト教民主同盟(CDU)副党首)は、ポーランドが強く反対しているベルリンの「反追放センター」建設に関し、同連盟は建設に今後関与しない、新しい基金の発足が望ましい、新基金にもポーランドのメンバーを加えるべきではない、などと発言した。同センターは、第二次世界大戦後にポーランド等から追放されたドイツ人の悲劇を記念、展示するものとされており、ドイツでも支持派のCDUと、反対する社民党(SPD)で論争が続いている。
シュタインバッハ女史の今回の発言にはポーランドでも様々な反応があるが、バルトシェフスキ元外相は次の通り述べた。
「ドイツでは、最初は「センター」の件は極く少数の人々が関心を持っているだけで、シュタインバッハ自身も政治的に大した存在ではないとされていた。現在、シュタインバッハ女史はCDUの副委員長となり、ドイツ政界で最も影響力のある女性の一人となったし、「センター」建設計画はCDUの公約の一つに入ってしまった。同女史は、現在のドイツの政治状況では、実現の可能性がないことを知っており、今回の発言はそれを見越した戦術的行動に過ぎない。本件では、2003年にポーランド、ドイツ両大統領間で合意された、追放問題に関する欧州規模の研究組織網の構築が唯一の解決策だ。」