ポーランド政治・社会情勢(10月19日〜25日)
1.PO、PiSの連立組閣交渉は失敗、PiS単独内閣発足か?
市民プラットフォーム(PO)と法と正義(PiS)の連立内閣組閣は、大統領選挙後に加速するかと見られたが、ポスト等を巡って難航し、発足は難しい状況になった。
10月25日には、マルチンキェヴィチ首相候補(PiS)が、16省庁の内POに、外務、国防、財務、地域開発(新設)、保健等の8大臣ポストを提示したが、POはPiSが内務行政、法務、情報機関調整担当の治安・法務機関3ポストを独占することと、POに保健や財務など世論の攻撃が予想される省庁と、大統領の影響力が強い外務、国防を提示したことで、本提案に難色を示した。
更にPiSは、下院議長人事で、POの候補のコモロフスキ元国防相を再度拒否、臨時議長を務めている農民党のズィフ議員を支持するとした。事態の打開のため、同日深夜までPOのトゥスク党首、ロキータ副首相候補、PiSのJ.カチンスキ党首、マルチンキェヴィチ首相候補が協議したが、結論が出なかった。
翌10月26日には、遂に両党の合意のないまま下院本会議が開催され、PiSは自党のユーレク党副委員長を推薦、POのコモロフスキ候補を破って当選させた。これにより、両党の協力関係は事実上崩れ、PiSは「自衛」や農民党の閣外協力を期待しつつ、下院の過半数に満たない少数単独内閣を形成する可能性が高くなった。内閣は早ければ週明けにも発足する見込みだが、下院の承認は不透明さを増している。
2.大統領選挙
(1)10月24日、選挙管理委員会は大統領選挙の公式結果を発表した。カチンスキ候補(ワルシャワ市長。「法と正義」)が得票率54.0%、トゥスク候補(下院議員。「市民プラットフォーム」)が46.0%で、カチンスキ候補が次期大統領となり、12月23日の就任式でクワシニェフスキ大統領と交代する。投票率は51.0%とまたも低調だった。
(2)両候補の得票では、経済リベラルで穏健なトゥスク候補が西・北地方、社会保障重視で保守民族主義的なカチンスキ候補が東・南地方で多数を獲得し、ポーランドの「右上から左下」に境界線が引かれたようになった。西・北地域では体制改革後の経済的な成果が実感され、東・南地域はそれが薄いという、ポーランドの社会・地方層の二極分化を改めて示す結果になった。
(3)カチンスキ次期大統領は、11月中旬でワルシャワ市長を辞任する予定。法律上、後任の選挙は60日以内が期限のため、1月がメドとされる。それまでは首相が指名する臨時の市長代理が担当するが、法律を改正して来年秋の地方統一選まで代理を認めることも検討されている。
3.「強い大統領」の権限
カチンスキ次期大統領は、「(クワシニェフスキ)現大統領より積極的な大統領となる」、「いずれは憲法改正により大統領権限を強化したい」と述べている。各紙では、現憲法で認められた大統領の権限では、法案拒否権(予算法を除く)、法案の憲法法廷への審査要求権、法案提出権や、閣僚任免権(首相が推薦した閣僚候補を事実上拒否する)、国会での演説の権利(質問は許されない)で国民に直接アピールする、首脳外交で外交を取り仕切る、を挙げている。
憲法改正では、法律と同じ効力を持つ大統領令の発布権、国会が任命した内閣の拒否権、などが挙げられている。
4.上院、B.ボルセヴィチを議長に選出
10月20日、上院は選挙後の初会合を開催し、法と正義が推薦する「連帯」活動家として名高いB.ボルセヴィチ議員(無所属)を議長に選出した。上院では、プワジンスキ議員などの無所属三名がPiSに加入したため、同党の所属議員は51名となり、単独で過半数を獲得することになった。
5.ビャウィストックの正教会、礼拝・典礼の一部のポーランド語使用を認める
ポーランド正教会のグダィンスク・ビャウィストック主教区のヤコブ主教は、これまで正教会では説教、典礼、祈祷などが全て正教会スラヴ語(古スラヴ語)で行われてきたのを、信者の理解を深めるため、説教等の一部をポーランド語で行うことを認めた。ベラルーシ系住民の中には、「祖先伝来の伝統が失われる」と反対もあり、特に年配者には、戦間期の「ポーランド化」の悪しき記憶が思い出されるという声が多いが、青年層などを中心に、「説教が判るようになる」と概ね支持を受けている。ただし説教はポーランド語でも、祈祷などは教会スラヴ語を維持すべきという意見が多いという。同じ試みは、ヴロツワフ、ワルシャワ、クラクフの各主教区でも実施される。
6.ショパンコンクールでラファウ・ブレハチが優勝(rz1)
10月21日、第15回ショパン国際ピアノ・コンクールの最終選考結果が発表され、ラファウ・ブレハチ(20歳)が優勝した。ポーランド人の優勝はK.ツィンマーマン以来30年振り。 2位は該当者無しで、韓国のDong Hyek LimとDong Min Lim兄弟が同率3位、日本の関本氏と山本氏が同率4位となった。
7.オレクスィ元下院議長に、控訴審でも虚偽宣言の判決
10月20日、ワルシャワ上級裁判所(第二審)は、オレクスィ元下院議長、元首相が、1970−78年に、社会主義時代の軍参謀本部第二部の情報工作部(AWO)に協力していたと認定、オレクスィ元議長の「協力歴なし」の宣言を虚偽とした第一審判決を支持した。
ポーランドでは第二審判決で法的拘束力が発効するが、オレクスィ氏の上告がおそらく認められるため、最高裁の判決まで効力が凍結される。判決が確定すれば、10年間の公職就任禁止となるが、同氏は9月の選挙で落選したため、実態的な影響は少ない。
8.ワルシャワで爆弾脅迫のいたずら騒ぎ。市内混乱
10月20日の朝、ショッピング・モールなど市内11カ所に17個の「bomba(爆弾)」と書かれた箱が置かれ、「ゲイ・パワー」と称する者が新聞社などに犯行声明のEメールを送った。声明文の最後には、本物の爆弾を作れるマニュアルが記されていた。この爆弾騒ぎでヴィスワ川の主要な橋が閉鎖されたことなどから、市内は大渋滞となった。
いたずらと判明したが、極めて組織立った犯行で、置かれていた時限装置等は実際の爆弾作成にも使用可能なものとされる。