ポーランド政治・社会情勢(10月12日〜18日)
1.国会初召集。大統領はマルチンキェヴィチ氏を首相候補に指名へ
(1)10月19日、総選挙後初の国会(下院)が召集された。憲法上、初国会で内閣は総辞職を申請する規定のため、ベルカ首相は大統領に辞任を申請した。大統領は内閣を解任すると共に、これも憲法の規定に従い、次期内閣発足までの職務代行を委託した。(従って、ベルカ内閣は次期内閣発足まで続投となる)。
大統領は同日、最大与党の法と正義(PiS)が推薦するマルチンキェヴィチ下院議員を首相候補に任命し、組閣を依頼した。同候補は14日以内に閣僚候補者名簿を大統領に提出して認証を受け、大統領は下院に内閣信任を要請せねばならない。
(2)なお下院は、召集初日に下院議長や副議長等を選出するのが慣例となっているが、今回は次期与党と目される第一党のPiSと第二党の市民プラットフォーム(PO)で調整がつかなかったため実現せず、PiSは10月26日までの休会動議を提出し、可決された。国会は初日から次期連立与党で賛成・反対が割れ、即日休会となる波乱の幕開けとなった。
2.鳥インフルエンザ対策で、農業省が大臣令を布告
ルーマニア、トルコで、人体にも感染する強毒性のH5N1型鳥インフルエンザ・ウイルスが発見されたため、10月17日、農業省は対策の大臣令を布告した。野鳥等からの伝染を防ぐため、野外での家禽の飼育が禁止され、市場での各種鳥の生体取引や品評会、見本市等の開催も禁止される。違反者には罰金数千PLNが課されるが、農家では事態を軽視し、従わない例も多いと予想されている。専門医は全国の養鶏場等で発生を定期的に監視することになった。
通常のインフルエンザ薬は、鳥インフルエンザに直接ではないが、一定の効果があるため、薬の売り切れが続出している。ルーマニアでは約2万羽の鶏が焼却処分となり、ウイルスはEU加盟国であるギリシャでも発見され、10月18日には緊急対策のためEUで外相会合が開催された。
3.次期政権の政策
10月17日、次期連立政権を模索する市民プラットフォーム(PO)のロキータ副首相候補は、法と正義(PiS)のマルチンキェヴィチ首相候補から送られた政策提案に評価、コメントを付けて返送した。
書簡は、連立政権発足の可能性はある、として、全体的に丁重なトーンで書かれているが、問題点として指摘されている点は、両党の政策の相違を浮き彫りにしており、注目を集めている。
主な点は次の通り。
●低所得家庭児童への給食制度導入(PiS提案)―賛成だが、具体的な提案が無く、現行の給食システムとどう違うのか判らない(POコメント。以下同じ)。
●下院の「真実・公正」(true and justice)委員会の設置と反汚職庁の設置−具体的な職務、権限、目的がはっきりせず、設置法案の提示を求めたい。
●8年で3百万戸の住宅建設−具体的な計画の算出基準等が欠落しており、評価出来ない。
●汚職防止のために百以上の基幹産業企業を国営もしくは国の管理下に残す−オルレン、PZUに典型な様に、汚職は国営企業がむしろ発生舞台。出来るだけ早い民営化が汚職を防止。国営には11企業を残すので十分。
●財政赤字を年間300億PLNとする−その算出方法が恣意的であり、現実には赤字拡大となる可能性大。
●通貨政策評議会の廃止−ユーロ加入の直前までは存続必要。そもそもPiSはユーロ加盟を支持しているのか問いたい。
●医療制度の国営への復帰−ムダと非効率をもたらし、財政赤字の拡大必至。反対。
●失業保険制度の雇用者負担拡大−企業の負担拡大と失業の拡大
また、EU各種補助金の利用優先度など、経済戦略が不明確で、雇用拡大の具体策が無く、社会保障制度の最大の問題である農民年金制度(KRUS)の改革について全く言及がない、と批判している。
4.大統領選挙
(1)レッペル「自衛」党首、カチンスキ候補を支持。反リベラルで共同戦線?
10月18日、第3党の「自衛」レッペル党首は、大統領選挙の決選投票でL.カチンスキ・ワルシャワ市長(PiS)を支持すると発表し、自分の支持者もカチンスキ候補に投票するよう、訴えた。カチンスキ候補はこの声明を歓迎し、レッペル党首と自衛のスローガンである「バルツェロヴィチ(中銀総裁)は去れ」、に早速同意し、大統領になったらバルツェロヴィチ氏の続投を支持しないと表明した。
このため、PiSはPOとの連立に替え、PiS―自衛―家族同盟(LPR)の、「経済左派・政治右派」の新連立も模索していると噂されている。なお、第4党の民主左翼連合(SLD)では、同日、オレイニチャク党首はいずれの候補も支持せず、とした。
(2)トゥスク候補の祖父、1944年夏に短期間独軍に従軍、ただし脱走しポーランド軍に合流と判明。
トゥスク大統領候補の祖父、J.トゥスクが大戦中の独軍に志願したと中傷された件で、10月14日、TVニュースは、同人は1944年8月から10月の間に、独軍の作業部隊に入れられていた記録がドイツ公文書館で発見された、と報道した。ただしJ.トゥスクは同年11月には在外ポーランド軍に登録されており、独軍を脱走したものと見られている。トゥスク候補は若干ショックを受けつつ、祖父は20年前に、父は30年前に死んだ。この話を聞いたことはない。当時の「グダィンスク自由都市」出身者のポーランド人にとって、これは常に困難なテーマだったからであろう、と述べた。
トゥスク陣営のプロタシェヴィチ選対本部長は、「独軍に自ら志願した、と述べたクルスキ(元カチンスキ候補選対部員。下院議員)の発言が虚偽であることに変わりはない。」と述べた。クルスキ氏は、「これで私の名誉回復は成った。PiSへの復帰を希望する。」と述べたが、同人にはドイツでの資料収集のため、トゥスクの親族であると虚偽申請した疑いが持たれている。
(3)両大統領候補の夫人は共に高い好感度
婦人雑誌「GALA」は、カチンスキ候補のマリア夫人、トゥスク候補のマウゴジャータ夫人に関するアンケート調査を実施した。読者の反応は、「両方とも控えめで清潔」、として好感度が高く、「(大統領夫人として)どちらでもOK」の評判だった。