ポーランドの大統領選挙

10月9日                   

 

 9日、ポーランドで大統領選挙(第一回投票)が行われ、どの候補者も過半数を獲得できず、共に中道・右派の上位二候補である、トゥスク下院副議長とカチンスキ・ワルシャワ市長が23日の決選投票に臨むことになった。。

【ポイント】

●9日の大統領選挙は事前の予測通り、どの候補者も過半数を獲得できず、第一位 

 のトゥスク下院副議長と、第二位のカチンスキ・ワルシャワ市長が23日の決選 

 投票に臨むことになった。

●過去2回の大統領選挙は、旧共産党系対旧反体制派(「連帯」)系の争いとなって

 いたが、今回は上位二候補とも、旧「連帯」出身の中道・右派であり、社会福祉

 重視、とリベラル・市場重視という経済政策が争点の中心となっている。

●カチンスキ候補が属する政党「法と正義」と、トゥスク候補の「市民プラットフ

 ォーム」は、先の国会選挙で第一党、二党となり、現在連立内閣の組閣交渉中。

 しかし、23日の決選投票で大統領が決まるまでは、内閣成立は困難な見通し。

●両候補とも、欧州憲法条約批准に反対の立場。イラク派兵でも、米国等と協議し

 つつ派遣要員を漸減する方針で共通している。カチンスキ候補は独仏等の対EU

 対露関係等でより強硬派であり、トゥスク候補はより親欧米派とされる。

 

T.報道による主要候補得票率見込み

トゥスク下院副議長(「市民プラットフォーム」:中道・右派) 38.6%(暫定)

カチンスキ・ワルシャワ市長(「法と正義」:中道・右派)   33.3% 

レッペル「自衛」党党首(大衆政党)            13.4%

ボロフスキ社民党党首(左派)                9.4%  

カリノフスキ農民党党首(農民政党)             2.0%

ボフニャシュ雇用者連合会長(民主党:中道)         1.5% 

 

 投票率:50.1%(前回:61.1%)

 (現地時間9日20:30時点。ポーランドTV報道。選管では未発表)。

*ポーランドでは、大統領は首相・閣僚の任免権などを持つが、同権限も含め国会

 の要承認事項が多い。日常政務はほとんど内閣が担当する。




U.選挙の注目点

1.1989年の体制移行以来、過去3回の直接選挙では、ワレサ元大統領、クファシニェフスキ現大統領という、各々「連帯」系の旧反体制派、旧共産系を代表する強いリーダーシップを持つ候補が当選してきており、特に前回(2000年)、前々回(1995年)には、政策よりも、旧連帯対旧共産系の争いという色彩が濃かった。

 今次大統領選挙でも、旧共産系のチモシェヴィチ下院議長が立候補していた間は、この二陣営の争いという構図もあった。しかし同候補が9月に立候補を辞退した後は、事実上トゥスク候補と、カチンスキ候補の一騎打ちとなっている。両者は共に旧反体制派出身で中道右派に属し、今回は過去にどの陣営に属したかではなく、人物や政策で争う大統領選挙となったと言えよう。

 今次選挙結果では、両候補の支持率は約5ポイントの差となったが、決戦投票の予測世論調査でも支持率は近接しており、次回投票当日まで接戦となるものと見られる。

 

2.上記二候補の政策の違いは、現在連立内閣の交渉中の法と正義と市民プラットフォームの政策の相違そのままであり、トゥスク候補は自由市場支持の経済リベラルの立場で、カチンスキ候補は社会政策重視、国家介入型の政策を打ち出している。外交政策では、EU、NATO枠組みでの関係強化、対米関係強化、対独、対露関係の修復等、両者の立場は概ね共通しているが、カチンスキ候補に右派的発言が多く、ドイツ、ロシアの一部メディアから批判されており、トゥスク候補がより穏健な印象を与えている。

 

3,投票率の50.1%は、大統領選挙では過去最低で、改めて国民の政治不信と無関心を示す結果となった。上記の通り、これまでの大統領選と違って旧共産系対旧反体制派系という、陣営間の争いではなくなったことが、一層関心を低下させたと指摘されている。

 

V.当面の政局に与える影響

 現在、9月25日の総選挙の結果を踏まえ、PiS、PO両党にて連立組閣交渉が続いている。大統領の職務開始は12月23日であり、それまでは今次選挙の当選者も「次期大統領」であるため、自ら当面の組閣等に権限を行使することは無いが、大統領選挙の結果は国会人事、閣僚人事に影響する。このため、両党とも次期内閣の発足は、決選投票で大統領が決定する23日以降としており、憲法上の最終期限(下院招集日から14日)の11月2日直前までもつれこむ場合もあり得る。なおベルカ現内閣は、大統領が表明した19日の下院召集日に、憲法の規定に従って大統領に辞表を提出し、大統領は次期内閣発足まで職務継続を委嘱することとなる。