ポーランド政治・社会情勢(10月5日〜11日)

 

1.大統領選挙の公式結果

 10月10日、国家選挙管理委は大統領選挙の結果を発表した。主要候補の得票率は、トゥスク候補36.3%、カチンスキ候補33.1%、レッペル候補15.1%、ボロフスキ候補が10.3%だった。

 各紙のコメントでは、大体事前の予想通りとしているが、上位二候補合わせて約70%と中道・右派支持層の拡大が改めて指摘され、同時に「自衛」のレッペル党首と、ボロフスキ社民党党首は健闘だったとしている。また上位二候補の差が約3%だったことから、23日の決選投票に向けて、選挙戦の過熱が予想されている。

 トゥスク、カチンスキ両候補による「自衛」、民主左翼連合など左派票の取り込みが焦点になる中、クワシニェフスキ大統領は、自分自身どちらに投票するかはいずれ公表すると発言した。

 

2.組閣:マルチンキェヴィチ、ロキータ、10月31日の内閣発足で一致。

 10月10日、選挙で第一党となった「法と正義」(PiS)のマルチンキェヴィチ首相候補は、第二党の「市民プラットフォーム」(PO)のロキータ副首相候補と、二回目の会談を行った。席上、PiSの次期内閣政策案が渡され、ロキータ氏は一読後「80%」は同意できる、とした。両者は、両党の作業グループが参加する政策討議や、人事の交渉など、組閣が本格化するのは次期大統領が決まるは10月24日からとなり、内閣発足は恐らく10月31日との見方で一致した。組閣には、大統領選挙での両党の対立や、政策調整などで、なお曲折が予想されている。

 

3.マルチンキェヴィチ首相候補、政策プログラムを発表。連立相手に提示

 10月10日、「法と正義」(PiS)のマルチンキェヴィチ首相候補は、事前の公約に従って次期政権の政策綱領を発表した。

 主な具体策は、

税制改革・減税は2006年には実施せず、2007年以降に行う、

ベルカ現内閣が提出した政府予算案の変更は、20億PLN歳出削減の「微調整」のみとする、○2006年度以降の財政赤字は、毎年300億PLN、に調整・抑制する、

医療改革では健康保険基金(NFZ)を廃止して病院の国公営制を復帰する、

 などがある。

 同候補は、内閣の理念も掲げ、「1989年の体制改革から現在までは、「改革」よりも「継続」が多く、今こそ変革の時期」であり、「まずは国家の浄化から始める。外務省からモスクワ国際関係大学卒業者を追放する」などとPiSの政策に沿う方針を打ち出している。また、「国家が国の全ての活動の原動力となるべき」と主張し、市場メカニズムへの不信感が顕著で、「景気拡大型の金融政策が必要だ」と中央銀行(NBP)の独立性の一部制限も視野に入れている。

 この政策には民間経済界などから早くも批判が寄せられ、BRE銀行アナリストは、「歳出削減案は非現実的」と指摘した。

 また「目標を明確にすると言いながら、具体的数値に乏しい。例えば『投資をGDPの25%に引き上げる(現在約18.5%)』としているが、目標期限の設定がない。」、「経済政策の中心は、『国有財産の監督強化、政府各機関の調整機能強化、EU財源の利用増大』」だが、具体策を全く提示していない。」、「経済政策の章は、「文化・国有財産振興」の章より手薄で、PiSの本来の関心がどこにあるかを示している」、と言った各紙アナリストの懸念も出ている。

 

4.カチンスキ大統領候補の有力スタッフ、トゥスク候補への中傷発言。選対から解任。

 10月10、11日、カチンスキ大統領候補の選挙運動でメディア対策等を取り仕切るクルスキ下院議員(PiS)は、「トゥスク候補の祖父は、占領期に独軍に志願した裏切り者だ」との発言をTVや雑誌で繰り返した。事実はトゥスクの両祖父とも、ナチス・ドイツに抵抗した廉で強制収容所に収容されており、トゥスク候補は「中傷は相手にせず。淡々と選挙運動を進める」と述べた。L.カチンスキ大統領候補は、最初は「クルスキは激しい政治家だが、真実からは離れていない」と述べていたが、後に責任を認め、トゥスク候補に謝罪した。ただしトゥスク陣営による「中傷行為」への謝罪も求めた。PiSはクルスキ氏を選対スタッフから解任し、党査問委員会での審査を決定した。

 ガゼータ・ヴイボルチャ紙は、「カチンスキは、『トゥスクの祖父は裏切り者?』とメディアがさんざん伝えてからやっと謝罪した」と批判している。

 

5.次期連立与党、国会審議の協議で物別れ。審議日程の目途つかず。

 10月12日、次期連立与党と目されるPO、PiSの両党幹部は、大統領が19日召集と決定した国会審議の日程につき協議を行ったが、議長人事等で物別れに終わり、当面、審議日程の目途が立たなくなった。

 次期国会では、憲法の規定に従い最長老のズィフ元下院議長(農民党)が議長代理となり、初日は当選した議員による宣誓の後、クワシニェフスキ大統領のスピーチがある。その後議長選挙、副議長選出となるのが慣例だが、議長人事などで両党の調整が難航している。PiS側は、「POは大統領選出後に下院議長選挙を行うため、日程遅延を図っている。もし大統領選挙でトゥスク候補が落選した場合のポスト確保だ」と記者会見で発表。PO側も記者会見で反論し、「我々はコモロフスキ下院議員・元国防相を候補として推薦したが、PiS側がの反応が不明瞭なため難航している。」としている。

 このため、議長人事は23日の大統領選挙後となる可能性が大きく、来週の国会は19日の1日で審議終了の可能性も出てきた。なお、問題の少ない上院では、B.ボルセヴィチ議員(無所属。旧連帯系)の議長就任でほぼ固まる見通し。

 

6.「フプロスト」、マルチンキェヴィチ首相候補と政商の不明瞭な関係の記事

 10月10日発行の雑誌「フプロスト」は、マルチンキェヴィチ首相候補と、テレコム関係の実業家J.ウチャク氏との「親密な関係」の記事を掲載した。ウチャク氏は、通信関係の国有資産(特にUMTS社)払い下げで種々噂が有る人物だが、(1)マルチンキェヴィチ氏が創設者の一人である「中欧研究所」に寄付、(2)マ氏とスイス・アルプスに一緒に旅行に行った際、代金を肩代わり、(3)マ氏の息子と兄を関連企業に雇用、(4)マ氏が副代表を務める地元女子バスケットボールチームのスポンサーになる、(5)マ氏の兄に融資の便宜を図った、などの関係があるとしている。マルチンキェヴィチ氏は「利益上の繋がりは無く、通常のつきあい」として、スイス旅行代金の提供と、兄への融資については否定した。

 マ氏が所属する「法と正義」のJ.カチンスキ党首は、「これは汚い選挙戦だ。関係している連中には、非常に悪いことになる、と警告する。」、と述べた。

 

7.ポーランド、2006年のサッカー・ワールドカップ・ドイツ大会出場権獲得

 10月8日、欧州第1G予選で2位のチェコがオランダに2:0で敗れたため、現在第6グループトップのポーランドは、最終戦に敗れても2位内の上位が確定し、ワールドカップ本大会の出場権を獲得した。欧州からの出場国は、8グループの各1位の国と、2位の中で勝ち点が上位の二カ国、それに開催国ドイツの計11カ国。出場を決めたポーランドは、本12日にイングランドとグループ1位を懸けた最終戦に臨む。

 ポーランドのワールドカップ出場歴:1938年、1974年(3位)、1978年、1982年(3位)、1986年、2002年。

 

8.早生児を弄んで「記念写真」を撮った看護婦二名、懲戒免職

 10月12日付FAKT紙は、カトヴィツェの「母子医療センター」で、体重500グラムの早生児が、看護婦二名により、ポケットに入れたり、自分の頭の大きさと比べるなどのふざけた「記念写真」が撮られていたと報道、その写真を掲載し、批判した。本件はTVでも大きく報道され、バリツキ厚相は事態を重視し、病院側に警告、2名の看護婦は懲戒免職となった。