ポーランド政治・社会情勢(9月28日〜10月4日)

 

1.大統領選挙

 10月9日(日)が投票日の大統領選挙では、各種世論調査で、市民プラットフォームのトゥスク候補が、「法と正義」のカチンスキ候補をリードしてきたが、その差が縮まったとするものが多い。数週間前まではトゥスク候補が45%、カチンスキ候補が35%程度と10ポイント近くの差があったのが、最近のPBS調査では、一回目で37:33、決選投票で52:48(PBS調査)とかなり接近している。

 選挙戦では、カチンスキ候補が「金持ちのためのポーランドか、団結のポーランドか」とトゥスク候補のリベラルさを批判するなど、相互で名指しの応酬が増えている。

 

2.組閣

(1)選挙で第一党となった「法と正義」(PiS)と、第二党の市民プラットフォーム(PO)の連立内閣組閣が難航している。当初は、双方で政策協議を行い、合意した後に人事に着手すると合意していたが、相手の真意の確認など、交渉方法の議論の段階で躓き、9月29日の両党公開協議でも議論はすれ違いに終わった。

(2)連立の危機さえ言われる中、10月2日、PO側は、法と正義側が要求していた副首相候補者にロキータ院内総務を指名し、同氏はマルチンキェヴィチ首相候補と10月3、4日に会談し、取りあえず実質協議がスタートした。ロキータ氏は、POの連立への条件として、公務員倫理法の制定、予算編成での首相府の役割強化、12省庁体制への統廃合などを求めている。

 ただし政策調整など課題は多く、内閣の本格スタートは次期大統領の選出後と予測されている。

 

3.大統領、次期与党の代表と会談。国会召集は10月19日に。

 10月28日、クワシニェフスキ大統領はPOのトゥスク党首、PiSのマルチンキェヴィチ首相候補らの与党代表と会談し、同候補が議会多数派の支持を得られるなら、首相候補に指名すると述べた。

 同大統領は、各代表との協議の結果、10月19日(水)に選挙後初の議会を召集すると発表した。

 *憲法上、選挙後の議会召集権は大統領にある。大統領は首相候補を指名し、同候補によ

  る閣僚選定後に内閣を任命し、下院の承認を求める。

 

4.次期首相候補、経済政策の構想を発表

 10月1日、「法と正義」のマルチンキェヴィチ首相候補は、L.カチンスキ大統領候補の選挙集会で、金融緩和や財政支出の拡大を中心とする経済政策の構想を発表した。その要点は次の通り。

 @雇用拡大による経済成長

  新規に雇用した企業の法人税控除、雇用対象者の所得税児童養育控除、中小企業では、新規雇用者分で、2年間の社会保障(ZUS経費)を支払い免除。

 A規制緩和

  企業登録手続の必要日数を3日間とする等、各種規制緩和や、手続の簡素化

 B民間、公共投資拡大策

  投資庁の新設、市町村単位での投資パーク設置、政府投資基金設立、8年間に300万戸

  の住宅を建設

 C金融・財政政策の転換

  インフレ対策中心から、成長重視策に。対ユーロ相場を4.1〜4.3に誘導。公定歩合の引

  き下げ。財政赤字は、2006年から4年間は300億plnの水準を維持し、歳出カットは抑制。   

  省庁・基金を一部廃止等の行革による歳入確保。

D財政の透明化

  国公営企業には、国の経済安全保障と、「made in Poland」製品の振興に貢献させる。

 

 また同候補は、翌2日の記者会見で税制改革に言及、年内は貯蓄利子課税の撤廃、贈与・相続税減税のみを実施し、来年前半に、中小企業の法人所得税引き下げ(19%→18%)、企業の新規雇用に対する所得税等控除の関連法案を採択し、2007年から実施したい、と述べた。 

 

 この政策に対しては、少なくとも一時的には財政赤字を拡大し、実際には赤字が慢性化する可能性が高い。加えて金融の過度の緩和とズウォティ安の誘導は、金融市場から警戒され、通貨安と物価上昇の危険性がある。歳入減、歳出増で、財政赤字を300億に維持するのは実現不可能、といった批判が早くも出ている。

 

5.法と正義、正副議長人事で揺さぶりか

 PO、PiSの連立交渉が進まない中、PiS側は、下院の正副議長人事の交渉を開始した。10月3―4日に、PiSのドルン院内総務は、オレイニチャク民主左翼連合党首、ギエルティフ家族同盟党首等と会談し、下院で議席を持つ全6党派への正副議長ポストの割り当て必要だとした。一方、POのスヘティナ幹事長はドルン氏に対し、POは最少会派の農民党への副議長ポストは必要無しとの立場を伝え、その後記者団には、議長候補はコモロフスキ下院議員(元国防相。PO)であると述べた。PO、PiSの連立交渉では、首相がPiS、下院議長がPOという提案がある。交渉は今後継続する見込み。

 PiSが野党側との接触を開始した背景には、大統領選挙の決選投票で、カチンスキ候補の支持を依頼する意図があり、PiSの議員筋ははっきりそれを認めている。

 

6.続く交通事故

(1)高校生を乗せたバスが炎上。12名死亡。

 9月30日、ビャウィストック近郊で、チェンストホヴァ/ヤースナ・グーラ修道院に集団巡礼に向かっていた高校生のバスが、大型トラックと正面衝突し炎上、12名が死亡し、40名が重軽傷を負った。現場は見晴らしは良かったが、霧が濃かった。

(2)オティリア・イエンジェイチャク、重傷。同乗の弟が死亡

 10月2日、アテネ五輪で200メートルバタフライの金など3個のメダルを獲得したオティリア・イェンジェイチャク選手が、ワルシャワからプウォツクに向かう途中、道路脇の樹木に激突し、同選手は重傷、同乗の弟が即死した。同選手には道路交通法違反及び業務上過失致死の疑いが持たれている。

 

 バスの事故は、衝突したバス、トラックの両方が、自転車と自動車を追い抜こうとして車道の真ん中ではち合わせしたもの。オティリア選手の事故も、両方が同時に追い越しをかけて正面衝突しそうになり、これを避けたオティリア選手が道路脇の樹木に激突するという、片側1車線の多いポーランドでは典型的な事故だった。

 

7.ニケ文学賞、アンジェイ・スタシュク「ババダグに向かって」が受賞

 10月2日、ポーランド最大の文学賞「ニケ」の審査結果が発表され、Beskid Niskiに住む生活派作家のA.スタシュクが受賞した。スタシュクはブルガリア、ルーマニアなどの地方、ワルシャワ近郊の労働者の生活などの「現代に乗り遅れた人々」の生活を描いている。「ババダグ」はドナウ・デルタの村で、作者が廃墟となったミナレット(イスラム寺院の塔)を見た場所。