ポーランドの国会総選挙
(速報とコメント)
2005年9月25日
25日、ポーランドで任期満了に伴う国会総選挙(上下両院選挙)が行われ、予測通り、政府与党の民主左翼連合(SLD)等の左派が敗北、中道・右派の野党が圧倒的勝利を収めた。
【ポイント】
●国会選挙は事前の予測通り、旧共産系・左派の政府与党が敗北、旧反体制派系・
中道右派の野党が勝利した。
●上位二党の「法と正義」と「市民プラットフォーム」が下院の過半数を獲得し、
事前の方針通り連立内閣を形成し、4年振りの中道・右派政権が成立する見込み。
首相の有力候補者は、「法と正義」のJ.カチンスキ党首、市民プラットフォーム
のロキ−タ院内総務。
●組閣日程・人事は、大統領選挙(10月9日に第一回投票、23日に決選投票)
の動向によって左右されるため、当面流動的。
●新政権は、欧州憲法条約批准に反対の立場。イラク派兵は、米国等と協議しつつ
派遣要員を漸減する方針に変化は無い見込み。
1.報道による選挙結果見込み
下院:定数460(【 】内は現有議席)
法と正義(中道・右派) 暫定得票率28% 163議席【45議席】
市民プラットフォーム(中道・右派) 24% 142議席【56議席】
民主左翼連合(左派・政府与党)
11% 49議席【148議席】
自衛(大衆政党) 10% 47議席【31議席】
家族同盟(右派) 10% 35議席【19議席】
農民党 6% 22議席【40議席】
社民党(左派) 3% 0議席【32議席】
民主党(中道) 3% 0議席【 0議席】
ドイツ少数民族 ― 1議席【 1議席】
投票率:40.4%(前回:46.1%)
(現地時間25日20:30時点。ポーランドTV報道。選管では未発表)。
*ポーランドでは内閣の承認など、諸権限で下院が上院に優越する。
*下院議席の獲得には、全国での得票率が5%を越えねばならない。ただし少数
民族政党には適用されず、選挙区で勝利すれば議席を得られる。
2.ポイント
(1)中道・右派(野党)勝利の原因
与党民主左翼連合(左派)は、2001年の前回総選挙で政権を獲得した後、EU加盟などの成果を挙げたが、失業問題に有効な手を打てず、医療制度改革等で失政が続き、また汚職等のスキャンダルの多発により支持率を急激に落とし、2004年3月に分裂した。その後も政党支持率では野党が一貫してリードし、今回の選挙も野党の勝利、政権交代が当然視されていた。
(2)低い投票率と政治不信
投票率は40.4%と体制移行後最低を記録し、国民の政治への無関心、政党不信を改めて示した。
(3)上位二党の勝利
上位二党の「法と正義」と「市民プラットフォーム」は、共に社会主義時代の反体制派の流れを汲むが、敢えて別々の政党として政策の相違を打ち出した。これにより、前者は福祉重視で地方在住の中・低所得者層、後者はリベラルな経済政策で大都市高所得者層という、総体として異なる支持層の獲得に成功した。
民主左翼連合はミレル政権時代の失政とスキャンダルから立ち直れなかった。ポピュリスティックな政党の「自衛」と家族同盟は、一定の議席獲得には成功したが、選挙直前の内紛と支持者拡大の不成功で、議席の大幅拡大には至らなかった。
3.今後の政局
(1)事前に連立政権の形成を打ち出していた「法と正義」と「市民プラットフォーム」が双方合わせて過半数を優に超え、憲法改正に必要な下院の3分の2に迫る議席を獲得したことから、両党による組閣がほぼ確定したと言える。下院議席を多く獲得した方が首相を出すという両党間の事前了解から、「法と正義」のJ.カチンスキ党首が首相の最有力候補となった。他方、同党首は双子の弟であるL.カチンスキ・ワルシャワ市長が大統領選挙(10月9日)に当選した場合は、兄弟で大統領、首相となるのは避けるとしているため、その際は市民プラットフォームのロキータ院内総務等が候補として挙がっている。新国会の召集期限は投票日から30日以内で、大統領は召集後14日以内に新内閣を任命し、下院に承認を求めねばならない。
首相・内閣の任命権は大統領にある(ただし下院の承認が必要)。クファシニェフスキ大統領は現与党(左派)の出身ではあるが、選挙での勝利者に組閣を委ねるという「憲政の常道」に従うものと見られる。
(2)上記の通り大統領選挙が10月9日(第一回投票)に実施され、まさに連立与党の二候補者の一騎打ちとなっているため、両党とも少なくとも同日までは引き続き選挙活動に忙殺され、当面連立協議が本格化するかは疑問。更に、両党の大統領候補であるトゥスク「市民プラットフォーム」党首と、カチンスキ・ワルシャワ市長が第一回投票でいずれも過半数を獲得できず、10月23日の決選投票に臨む場合は、連立協議が一層先延ばしになる可能性有り。(別添の政治スケジュール参照。上記4者のプロフィールを併せ別添)。
(3)次期政権の安定性については、連立二党で下院の過半数を獲得したことから、三党連立、議会少数派内閣の可能性が無くなり、かつ「法と正義」の優位が明確になったことから、政権基盤は一応安定する見込み。ただし両党間には税制改革等に関して論争があり、不安定要因もなお抱える。
(4)外交政策については、次期与党は欧州憲法条約の批准について反対している以外は、現政権と同様EU内での協力強化、米国との関係強化、露との関係改善などを優先課題とするなど、基本的な外交課題自体には変化はなく、イラク派兵については、要員の漸減という前政権の路線継続が予想される。