ポーランド政治・社会情勢(9月14日〜20日)
1.総選挙:PISがPOを急追
国会総選挙の投票日を数日に控え、過去数週間にわたって、支持率で「市民プラットフォーム」(PO)の後を追っていた「法と正義」(PiS)が急追している。20日のOBOP調査では、PISの支持率が34%でPOの32%をついに上回った。原因としては、「ラジオ・マリヤ」など、PO反対の勢力がPIS支持に回ったことなどが挙げられている。
なお、PISの大統領候補であるカチンスキ・ワルシャワ市長は、POのトゥスク候補にTVでの公開討論会を提案し、同候補も了解した。当初は9月23日に実施し、三大ネットワークのTVP、POLSAT、TVNで共同放映する予定だったが、他の大統領候補から、公共放送(TVP)の選挙での平等性に反するとクレームが付き、調整が難航している。
2.ドイツ総選挙にポーランド政治家が失望感
9月18日に行われたドイツ連邦議会選挙で、二大政党のキリスト教民主・社会連合(CDU−CSU)、社民党(SPD)がほぼ同数の議席獲得となり、首相人事や連立の動向が不透明な結果に終わったことで、ポーランドの政治家は失望感を表明している。次期首相の有力候補であるロキータ「市民プラットフォーム」院内総務は、ポーランドがドイツに望むのは、成長回復のための経済改革、ロシアとの頭越し外交路線の中止、米国との関係改善であるとし、その実現に必要な強いリーダーシップが生まれなかったことに失望している、と述べた。
3.シモン・ヴォーゼンタール氏、死去
9月20日、世界中のナチス・ドイツ戦犯を追及し続けたシモン・ヴィーゼンタール氏がウィーンで死去した。96才だった。
同氏はリヴィウ(現ウクライナ)近郊のユダヤ系の家庭に生まれ、第二次大戦まではポーランドで生活した。大戦中、ナチス・ドイツの12カ所の強制収容所を転々とさせられ、ソ連とドイツの両占領軍に親族86名を殺害された。戦後ウィーンに住み、約1,100人のドイツ戦犯の国際的な逮捕、訴追に尽力した。その中には、ヒトラー側近で強制収容所運営の中心者の一人だったアイヒマン、トレブリンカ強制収容所長のシュタングル、アンネ・フランクを逮捕したシルバーバウアー、マイダネク収容所で数百人の子供を死に至らしめた有名なサディスト女看守のブラウンシュタイナー等が含まれる。
ポーランドのTV、各紙は氏の死去を大きく取り上げ、バルトシェフスキ元外相等はその業績を高く評価した。ワルシャワ・ゲットー蜂起の最後の司令官を務めたM.エーデルマン氏(79)は、「ヴィーゼンタールとは一度しか会ったことがないが、彼の言うとおり、犯罪者は法の裁きを受けねばならない。ただし彼が晩年に、老齢に達した者達を裁きにかける必要はもうないであろう、と述べたことには同意しかねる」、と述べた。
4.PZU民営化問題特委、PZU民営化の白紙撤回を要求
9月16日、ポーランド最大の保険会社PZUの民営化と、オランダEUREKO、ポーランドのミレニウム銀行のコンソーシウムへの株式売却の適法性を調査していた下院PZU民営化問題特委が、最終報告書を発表した。
同報告書では、1999年の本件民営化・株式売却契約には、文書改竄等の不法行為、官庁の監督不十分などがあり、契約の無効が適当との結論になっている。本契約及び付属書に署名した当時のヴォンサチ、カメラ=ソヴィンスカの2代の国財相は、国家背任の疑いで国家法廷への提訴が妥当と提言。またベルカ首相について、委員会及びグダィンスク高検での偽証の疑いで検事局に告訴した。同首相は本件には無関係と証言したが、当時PZUの民営化コンサルタントだったABN Amro社で関係していた疑いがあるとされている。他にも各省次官等の責任が追及されている。本報告書には法的拘束力は無く、検事局の判断が今後焦点になる。
契約については、ポーランド政府はEUREKOにロンドンの国際仲裁裁判所に契約不履行で提訴され、8月に全面敗訴しており、株式売却を行なわない場合、数十億ユーロの賠償金支払いの義務が生じている。新政権にとって最初の大きな課題となりそうだ。
5.バホフスキ元大統領官房長官、不法ブローカー行為で取り調べ
1995年までワレサ大統領の一番の側近とされたバホフスキ元大統領官房長官が、24日、国内保安庁(ABW)から取り調べのため任意同行を求められた。ウッジの実業家ガウキェヴィチ兄弟(造園、植物販売)が、ウッジ郊外に経営する造園関係のショッピングセンターの営業許可取り消し予定を通告されたため、バホフスキ元長官が100万PLNで市当局等への「仲介」を提案し、コンサルタント料を不法に受領した疑い。同元長官は、他にも犯罪組織との関係が疑われており、情報機関や軍情報部とも関係が深く、最近は特にクワシニェフスキ大統領のウンギエル元大統領府長官との関係の深さが噂されている。
なお、ABWは家宅捜査の際、同元長官が現役時代に持ち出した大量の犯罪関連の機密文書を押収した。ワレサ元大統領は、彼の潔白を信じたい、とコメントした。
6.ノツィン最高検新検事、パィアス事件の容疑者死亡の調査中止指示の疑い
9月17日付のジェチポスポリタ紙は、最近、法相から最高検検事への昇進を認められたノツィン検事は、1977年の「パィアス事件」の殺害実行犯とされるM.ヴェンツレヴィチの怪死事件を担当、死体検査もせずに「階段から落て死亡」として捜査を中止させた前歴があると報道した。
この事件は、当時反体制活動家だったヤギウェウォ大学学生パィアスが、何者かに殴打されて死亡したもので、元ボクサーのM.ヴェンツレヴィチ(1ヶ月後に死亡)が公安当局の指示を受けて殺害したのがほぼ明らかになっている。当時からポーランドでは大きな問題となり、事件後20年を経た体制改革後も、ガゼータ・ヴイボルチャの記者が、学生だった当時にパィアス・グループの情報を当局に洩らしていたことが判明して社会的指弾を浴びるなどの影響が続いている。
カルヴァス法相は野党からの強い批判にも拘わらず、昇進取り消しの意向はないとしている。