ポーランド政治・社会情勢(9月7日〜13日)

 

1.チモシェヴィチ候補、大統領選挙立候補を断念

 9月14日、チモシェヴィチ下院議長は、大統領選挙の立候補を取り止めると記者団に発表した。この日、同議長は、疑惑に応えるため、自身の株取引関係の書類全般を公表することになっていたが、記者団は、文書の発表ではなく突然の立候補辞退を知らされた。ジェチポスポリタ紙は、「チモシェヴィチの降参」と見出しを掲げた。

 ガゼータ・ヴイボルチャ紙のアンケートでは、この立候補取りやめの理由として、「一連の疑惑によるもの」が39%、「支持率低迷に悲観」が31%、「政治家としての意志の弱さ」が14%で、「虚偽の攻撃の犠牲」との回答が25%だった。チモシェヴィチ候補の立候補断念により、選挙戦は事実上「市民プラットフォーム」(PO)のトゥスク候補(下院副議長)と、「法と正義」(PIS)のL.カチンスキ候補(ワルシャワ市長)の一騎打ちの状況となった。

 

2.ロシア、ドイツ、バルト海海底の直行ガス・パイプライン建設で合意

 9月8日、ベルリンにて、ロシアのプーチン大統領とドイツのシュレーダー首相が見守る中、「北欧ガス・パイプライン(NEGP)」建設の合意書が、ガスプロム社(露)とBASF社(独)及び Eon Ruhrgas社(独)により調印された。合弁会社「North European Gas Pipeline Company」の設立が予定され、株式の51%をガスプロムが、ドイツ側二社が各24.5%を保有する。パイプラインは総距離約1,200キロ、総工費約77億ドルの見込み。

 これまでガスプロムは、輸出ガスの四分の三をウクライナ経由で輸出してきたが、このパイプラインによってウクライナへの依存度が根本的に低下する可能性がある。また、西側輸出用の約25%を賄うために利用しているポーランドのサービスは、完全に解約することも可能になる。ドイツ側にとっては、ポーランドやウクライナ側への通過料の支払義務がないため、天然ガスの輸入価格の低下が期待できる。

 ポーランドは、以前から「頭越し」パイプラインの計画に懸念を表明してきており、今回の契約調印に対してショックを隠していない。クワシニェフスキ大統領は、「(計画は)環境面、経済面、政治面で悪影響がある」と述べ、ベルカ首相は、「経済的側面より政治を優先させ、プーチン大統領の力の誇示だ」、と批判した。シュレーダー首相は「ドイツの利益はベルリンで決定する。この合意は誰の利益に反するものでもない。」と反論した。今回の合意により、将来的なポーランドのエネルギー安全保障への影響が懸念されており、またロシアはポーランドを通るヤマル・ガスパイプラインの近代化、延長計画を事実上棚上げしたと見られている。

 

3.ボリス・在ベラルーシ・ポーランド人連盟「前」会長、ポーランド等を訪問

 9月6日、ベラルーシ当局の介入でポーランド人連盟会長を「解任」されたボリス「前」会長が、大統領候補であるトゥスク下院副議長の招きでポーランドを訪問、ワルシャワ駐在のEU各国大使と会談し、7日にはベルカ首相とも会談した。ベルカ首相は名誉領事の就任を提案したが、ボリス氏は、感謝しつつも、本件はベラルーシ政府の承認の必要もあり、自分は何よりも在ベラルーシ・ポーランド人連盟代表であると述べ、謝絶した。

 9月8日には、同氏はトゥスク副議長と共にストラスブールの欧州議会を訪問し、ベラルーシ担当の欧州議会代表団のほか、ディヴィス欧州評議会事務局長とも会談した。

 

4.ヤルゼルスキ元大統領、職権濫用による戒厳令布告で訴追か

 9月6日、社会主義時代の政府、情報機関の不法行為の訴追を行う国民記録機関(IPN)の関係者は、1981年12月13日に戒厳令を布告した「救国軍事評議会」(WRON)のメンバー中、ヤルゼルスキ元大統領、シヴィツキ元国防相等生存者10名を、年末までに職権濫用の疑いで訴追する可能性が高いと述べた。

 救国軍事評議会は憲法外の機関であり、当時こうした機関を設立して戒厳令を導入した十分な理由があったかが焦点となる。ヤルゼルスキ元大統領らは、ソ連を中心とするワルシャワ条約機構軍の介入の危険が、現実にあったとしている。IPNでは、戒厳令導入に至る経緯、準備状況などを詳細に分析しており、現時点ではヤルゼルスキ元大統領の言う、侵攻の脅威を立証する証拠は発見されておらず、チェコで当時のチェコ政府にはこうした意図が無いことを証明する文書が発見された、としている。

 

5.LOT、B787購入を決定

 9月7日、ポーランド航空LOTは経営理事会で、懸案となっていた次期中長距離航空機の選択について、ボーイング社のB787の7機購入を決定した。ライバル機のエアバスA350−800と比較し、価格面で大幅に優遇されたとしている。1機あたりの価格は約9億1,000万ドル。LOTは、この他にも7機のボーイング社製航空機の購入を検討している。

 本件ではフランスのシラク大統領など、EU各国から首脳レベルでエアバス採用の働きかけがあった。フランスは、エアバス不採用の場合は、ポーランドの対外債務前倒し返済に同意しない可能性が有るといった圧力をかけていたと言われる。

 

6.乗用車のLPG機材業者の業績好調

 ポーランドは既にLPG車の普及率で世界でもトップクラスだが、ガソリンの値上げは、ガソリン車からLPG車への改造に拍車をかけている。据え付け業者では、2ヶ月前と比較して注文は5割り増しで、平均の待ち時間は2週間となっている。ポーランドのSTAKO社は乗用車用LPGガス設備の生産で世界最大手の一つだが、ドイツやオランダからの注文は30%増。ただし「政府はいつLPGの物品税を上げるか判らない」との声も。

 

7.三都市でサッカー試合後の「フーリガン」争乱

 9月10日、タルノブジェグ市でのサッカー2部リーグ戦の最中に観客同士のケンカが起き、13人が逮捕される騒ぎとなった。更に試合後に、ライバルチームの観客を輸送するバスにオートバイの男が突っ込んで死亡し、これを警察のせいだとしたフーリガンが、11日の夜に本拠地のミェレツ市で暴れ、警官6名負傷、60名が逮捕された。

 9月11日、ルブリンでのサッカーの試合で、最初のゴールの後に観客席でケンカが起き、警官8名が負傷、22名が逮捕される事態となった。試合後もフーリガンがルブリンの街で暴れ出し、車などを破壊、夜中の二時まで騒ぎが続いた。20名が逮捕された。