ポーランド政治・社会情勢(8月31日〜9月1日)

 

1.大統領、国会選挙:トゥスク候補と市民プラットフォームが躍進

 9月6、7日の各紙は最新の世論調査を発表した。ジェチポスポリタ紙の調査では次の通り。 

(1)国会選挙

 政党支持率(カッコ内は下院の想定議席数):市民プラットフォーム(PO)35%(176議席)、法と正義(PiS)26%(133)、「自衛」11%(51)、民主左翼連合(SLD)8%(41)、家族同盟(LPR)7%(36)、農民党(PSL)5%(23)。

 他の調査でもPOの躍進とPiSの堅調、自衛とLPRの退潮が共通している。これが現実となれば、PO−PiS連立は309議席と過半数を大幅に超え、憲法改正に必要な306議席も獲得することになる。

 

(2)大統領選挙

 各候補の(投票希望者中の)支持率は、トゥスク市民プラットフォーム党首が41%、L.カチンスキ・ワルシャワ市長(PiS)23%、チモシェヴィチ下院議長17%、レッペル「自衛」党首10%、ギェルティフ欧州議員(LPR)3%等。

 他の調査結果も大体共通しており、トゥスク候補の躍進が目立ち、同候補の第一回投票での当選(過半数の獲得)の可能性さえ言われ始めている。

 ジェチポスポリタ紙の解説では、POの急速な伸びは、大統領選挙でのトゥスクの支持急伸に引っ張られたもの。意外ながら、統計からすれば「自衛」の支持者がPOに移動したことになる。POは良いスタートを切ったが、今後これ以上伸びるかは疑問。他党が選挙キャンペーンを強化すれば、トゥスクが出したメッセージは弱まる可能性がある、としている。

 

2.LG Philips LCD、グリーンフィールドでは1990年以来最大級の対ポーランド投資

 9月6日付各紙は、韓国のLG Philips LCDが、液晶パネル(LCD)工場建設等の投資計画を決定したと報道した。同社代表が、ベルカ首相宛の書簡で通報したとしている。

 計画では、ヴロツワフ近郊のコビェジツェ(Kobierzyce)に、LCD本体工場と、関連部品工場6カ所、また別途冷蔵庫組み立て工場を建設し、雇用見込みは約12,000人、関連工場を含めた総投資(見込)額は約10億2,700万ユーロとされている。グリーンフィールド投資では過去最大級となる。

 ポーランド政府の優遇措置は、税制優遇等、総計約3億3,600万PLNで、冷蔵庫工場には1億4,300万PLNの見込みとされている。なお、韓国勢では、スロヴァキアへの進出を断念したタイヤメーカー、Hankookも、投資規模約5億ユーロの工場建設の案件でポーランド政府と交渉を開始した。政府は、土地の無償提供等を提案している模様。

 

3.大統領選挙:レリガ候補、立候補を取り止め。トゥスク候補支持へ

 9月2日、レリガ上院議員・大統領候補(中央党)は、立候補を断念し、トゥスク候補(市民プラットフォーム)を支持すると発表した。低迷する支持率が原因と言われる。トゥスク候補は共同記者会見に臨み、感謝を表明した。これにより、レリガ候補を支持してきた穏健派支持層の一部が、トゥスク候補支持に回ると見られている。

 

4.政府、原油価格高騰からガソリンの間接税を引下げ

 9月5日、財務省は、原油価格高騰のため、ガソリンの間接税を現行の1リットル当たり約1.60PLNから約1.35PLNに引き下げると発表した。軽油では1.10PLNのまま据え置かれる。

 ガソリンの間接税については、政府は8月に下院が住宅資材VAT還付法を逆転成立させた時、財源確保のため0.25PLNの引き上げを検討するとしていた矢先だった。

 

5.新学年開始。欠食児童問題が未だ深刻

 9月1日、全国の学校で新学年が始まった。

 低所得者層の家庭の児童では、朝食や昼食が食べられない、いわゆる欠食児童問題が未だ深刻なことが判明した。全国約6,000の小、中学校を対象に調査を行ったところ、各校平均26名の欠食児童が報告されており、全児童・生徒の約10%に当たる。下カルパチア県では7名に一人の割合となった。欠食児童に無料給食配布事業を行っている、「ポーランド慈善計画」(PAH)、「カリタス・ポーランド」などの慈善団体も活動の強化と協力の依頼を表明している。民間では、Danone社の「(児童に)食事を」などが助成している。

 

6.第二次大戦の開戦記念日に、ベステルプラッテでポーランド、独大統領が記念式典に参加

 9月1日の第二次大戦開戦記念日、グダィンスク近郊の戦跡地であるベステルプラッテの記念碑に、クワシニェフスキ・ポーランド大統領と、ケーラー・ドイツ大統領が共に献花した。ベステルプラッテは、ドイツの軍艦シュレスヴィ=ホルシュタイン号が攻撃を開始した場所で、これが第二次大戦の幕開けになった。

 ケーラー大統領は、「ドイツの大統領がベステルプラッテに行くのは特別の意味がある。誰が悲劇的な結果をもたらした戦争を開始したかを、ドイツが認識していることを示すことになる。」と発言した。

 現在、ベルリンでは、第二次大戦直後のドイツ人追放に関する記録、展示などを行う「反追放センター」の発足が準備中だが、ポーランドでは「『ドイツ人も被害者だった』という側面が強調され、『戦争を起こしたのは誰か』が忘れられ兼ねない」という批判がある。クワシニェフスキ大統領は、式典前日の8月31日、ワルシャワでの会談で、同センターの建設に改めてケーラー大統領に懸念を表明し、同大統領の発言は、これを受けたもの。

 

7.改正徴兵法発効へ。外国部隊での従軍も可能に

 改正徴兵法に大統領が署名し、近く発効することになった。これまでポーランド軍勤務に限定されていたのが、NATO、EU各国の軍隊でも在勤が可能になる。外国軍の需要があることが前提だが、外国軍在勤には国防、外務、内務行政省の同意が必要。早くも、有名なフランス外人部隊への希望者が噂されている。

 現在のポーランド軍は総勢14万人で、その内徴兵従軍者は6万1,000人。2004年の新兵徴募は約3万5,000人だった。徴兵期間は9ヶ月で、手当は月間平均150PLNだが、拡大前のEU15カ国では平均1,000ユーロを越えている。

 

8.ワルシャワ地検、チモシェヴィチ下院議長の資産報告書関連の捜査を終了。A.ヤルツカを偽証、文書偽造等で訴追へ

 9月2日、ワルシャワ検事局は、チモシェヴィチ下院議長・大統領候補が2001年末の資産報告書に、石油会社オルレンの保有株を記載していなかった問題で、同議長の「技術上のミス」を認めて不起訴を決定した。同議長の元秘書で、資産報告書の改竄を命ぜられたと主張するA.ヤルツカについては、文書偽造、偽証等で訴追する予定とした。

 同3日、ヤルツカの件を検事局に通報したミョドヴィチ下院オルレン特委委員(市民プラットフォーム(PO)に、同人を引き合わせたのが、共にPO所属のブロフヴィチ国内保安庁(ABW)顧問だったことも判明した。このため、チモシェヴィチ候補のナウェンチ・スポークスマンは、POの党首であるトゥスク候補に説明を要求した。トゥスク候補は、無関係、としてコメントを拒否している。

 また、POの連立相手である「法と正義」(PiS)のJ.カチンスキ党首は、PiSは情報機関との特別の関係はない。我々のパートナーであるPOもそうあるべきであり、説明を要求する、と述べた。