ポーランド政治・社会情勢(6月29日〜7月5日)
1.選挙:大統領はチモシェヴィチ、政府はPO-PIS?
7月5日、各紙は大統領選挙と国会選挙の世論調査結果を発表した。ガゼータ・ヴイボルチャ紙の調査では次の通り。(%は支持率)
○大統領選挙:チモシェヴィチ下院議長29%、カチンスキ・ワルシャワ市長18%、レリガ上院議員14%、トゥスク下院副議長12%、レッペル「自衛」党首10%、ボロフスキ社民党党首5%。
立候補表明直後のご祝儀分があるとは言え、チモシェヴィチ候補がかなり優位に立っている。同候補陣営では、支援者委員会代表にクワシニェフスカ大統領夫人、選対本部長にピェカルスカ民主左翼連合前副党首と、いずれも女性が就任した。
○国会選挙(カッコ内の数字は下院の想定議席数(定数は460議席))。
法と正義(PIS)25%(140)、市民プラットフォーム(PO)22%(132)、「自衛」17%(92)、
家族同盟(LPR)11%(53)、民主左翼連合(SLD)8%(43)、農民党(PSL)4%(0(足切りラインの5%以下のため))。法と正義・市民プラットフォームの連立で過半数の議席確保が可能になっている。
2.公定歩合引き下げ
6月29日、通貨政策評議会は、第1四半期の対前年度比成長率が2.1%に落ち込み、年率4%の実質成長の目標が困難と見込まれること、5月の物価上昇率が対前年同期比で2.5%と目標内に留まったことから、公定歩合を5.5%から5%に引き下げた。過去最低の水準となる。中銀は、外国人投資家による好調な国債購入等によりズウォティ相場も堅調で、インフレ懸念は当面無いと説明した。市場筋は、年末にかけて更に利下げがあり得ると観測している。
3.下院、最低賃金額の自動引き上げ法案を可決
6月30日、下院は、法定最低賃金額が、義務的・自動的に引き上げられる法案を可決した。与党などは、現在の法定最低賃金(現行で月間849pln、ネット約617pln)の水準が低すぎ、就労意欲を減退させているとして、平均賃金の50%(現在約1,200pln)を上限に、年間インフレ率+予測経済成長率×2/3
は自動的に引き上げられる法案を提出していた(これまでは政府・労組・雇用者の三者委で交渉)。政府は、総雇用の5%が強制賃上げの対象となり、雇用減少に繋がるとして反対している。また、徴兵者手当、障害者雇用政府補助金等、最低賃金が算出基準になっている各種支出にも直接の影響が及び、歳出の拡大が予想されている。
法案は今後上院審議を経るが、可決、成立の可能性が高い。
4.司教団、一般社会人の助祭にも結婚式や葬儀の司式を認める方針
6月29日、ポーランド司教団は、結婚式や葬儀の司式を、助祭(deacon)にも認める方針を明らかにした。懺悔の聴取、終油の秘蹟(瀕死の重病人に対し聖油で清める儀式)だけは司祭の専門に残される。
世界のカトリック教会には約5万人の助祭がいるが、これまでポーランドでは専ら司祭の見習い(妻帯不可)としてのみ認められ、ポーランド教会の保守性を示すと言われていた。今回の措置により、西側と同様、教育者等による一般社会人のヴォランティアが認められることになり、トルンに助祭養成の神学コースが設置される。ただし、ポーランドでは妻帯者が司式をすることに抵抗感を示す信者も多く、一部の司教区では導入を当分見送る方針。
5.ベルカ首相、OECDの事務総長選挙に立候補
7月6日付ジェチポスポリタは、ベルカ首相が経済協力開発機構(OECD。本部パリ)の次期事務総長への立候補を正式に決めたと伝えた。OECDでは、ジョンストン現事務総長の任期が来春に切れるため、年末に選挙が行われる。ベルカ首相は最近、首相退任後の国内政界からの離脱を発言しており、この立候補が追認する形となった。同首相が党友格である民主党のフラシニュク党首は、翻意を説得したいと述べている。
6.ホテル・エウロペイスキ、旧所有者への返還で閉館。
6月30日、ワルシャワの無名戦士の墓前に位置するホテル・エウロペイスキで、最後の宿泊者がチェックアウトし、閉館した。戦後に強制収容された所有者の子孫(所有権は法人のHotel Europejski SA (HESA)が所有)に返還されたためで、151人の従業員は全員解雇された。HESAでは改築に約5年を予定しており、ホテルか事務所のいずれになるかは未定。
7.ユダヤ博物館設計コンクールで、フィンランド人の設計家が優勝
ワルシャワ・ゲットー記念碑前に建設予定の「ユダヤ博物館」の設計コンクールの結果が、6月30日に発表された。下馬評の高かったポーランド生まれの米国人建築家D.Libeskind氏(ベルリンのユダヤ博物館設計者)は大方の予想に反して落選し、国際委員会はフィンランド人のI.Lahdelma氏とR.Mahlamaki氏の作品を選出した。
博物館は総工費の見積もりが1億PLNで、2008年に開館の予定。
8.弁護士、公証人の資格取得を国家試験制にする法案が採択
6月30日、下院は、法務協会での司法研修受講資格を、国家試験制にする議員法案を採択した。
ポーランドでは、弁護士、公証人志望者は、各市の法務協会が実施する法務インターンを受講せねばならない。現在は、各法務協会が候補者の選抜を独自に行っているため、必要以上に門戸が狭く、縁故採用が多いとの批判が強いため、国家試験制の導入法案が議員立法で提出されていた。政府(カルヴァス法相)は反対で、大幅に受講者が増え、司法の質の低下を招くと批判している。現在、オランダの弁護士数は500人当たりに一人の割合だが、ポーランドでは7000人に一人で、過小と批判されている。