ポーランド政治・社会情勢(5月25日〜31日)

 

1.仏、欧州憲法条約の批准を国民投票で否決。ポーランドの批准に疑問も。

 5月29日、フランスの国民投票で、欧州憲法条約の批准が否決された。ポーランドでは政府と、与党民主左翼連合(SLD)、社民党など左派各派が条約に賛成で、市民プラットフォーム(PO)、法と正義(PiS)、家族連盟(LPR)など中道・右派の各派は反対している。世論調査では条約の支持率が70%を越えているため、政府・与党は国民投票の実施に自信を見せているが、フランスでの否決で慎重論も強まっており、先行きの不透明感も出ている。

 ポーランドでの今後の批准手続は、

@下院で条約の批准を国民投票で行うことを決議(過半数の出席、過半数の賛成で可)、

A大統領と上院、または下院が国民投票の投票日を決定、布告、

となる。ただし、もし@で否決された場合は、

A‘上下両院での批准投票

となるが、必要得票数(過半数の出席で3分の2以上の賛成)を取るのはまず不可能であるため、ポーランドもフランスやオランダに続いて批准否決国となってしまう可能性がある。チモシェヴィチ下院議長は、@の投票を6月中旬に実施したいとしている。

 なお、仮に国民投票が大統領等の希望通り、10月9日の大統領選挙の第一回投票と同日実施となっても、万一投票率が50%を割れば不成立となる。この場合、次期下院では、現野党が大幅に議席を増やすと見られるため、国民投票の再実施の望みはなく、ポーランドで批准の機会が失われる可能性が高くなる。

 

2.ベラルーシ当局のポーランド人連盟に対する圧迫強まる

5月30日、ベラルーシ当局は、ベラルーシのポーランド人連盟(本部フロドノ(ポーランド語名「グロドノ」)市)が発行するポーランド語新聞「週間ニェーメン」の印刷を事実上認めない措置を採った。これに対しジェチポスポリタ紙は、傘下の印刷場を提供すると発表した。

ベラルーシ・ポーランド人連盟(会員約40万人)はベラルーシ最大の民間団体。3月まではルカシェンコ大統領に忠実なクルチコフスキ氏が代表だったが、会長選挙で反ルカシェンコのボリス女史が選出された。5月にベラルーシ当局(法務省)はこの選挙が違法、無効だとして取り消しを求めたため、ポーランド外務省が強く抗議した。その後両国間で外交官の追放合戦があった後、今回の事実上の発禁処分となったもの。ボリス会長は、「今後増々圧迫が強まり、最終的に連盟の解散処分に至る」と警戒し、ポーランド議会・政府の支援を要請している。ポーランドはこれまで上院から多くの財政支援を行っている。

 

3.農地価格が急上昇

 農業用地庁は、2004年1月からポーランドの農地価格が平均18%上昇し、特にヴァルミア=マズール県では上昇率が数十%に達すると発表した。同県では、2004年始めの農地平均価格が1haあたり3,500plnだったのが、現在は5,400plnに上がっている。原因は、農業経営者による意欲的な土地購入だが、農業省は、特に大規模農家によるものが多いと分析している。

農地購入ブームの背景には、@EU加盟による農地補助金(1haあたり約120ユーロ)の支給と、A好調な輸出に支えられた農産物価格の上昇、B農業省の大規模化奨励策、が挙げられている。農業用地庁が今年1月から4月までに売却した国有農地は約4万ヘクタールで、前年同期比の2倍を記録している。

 

4.SLD、31歳のオレイニチャク農相を新党首に選出

 5月29日、民主左翼連合(SLD)は全国代表者会合を開催し、オレクスィ党首の後任にオレイニチャク農相を選出した。事前にはピェホタ経済相とディドゥフ党幹事長が立候補を表明していたが、当日、ピェホタ経済相は自ら立候補を取り止め、オ農相を推薦した。同農相は以前から党首候補に挙げられていたが、これまで固辞しており、最終的に大統領らの説得に応じたものと見られる。投票結果は、オレイニチャク農相が267票、ディドゥフ幹事長が147票だった。

オレイニチャク氏は党首として史上最年少(31歳。なお農相就任時の29歳も戦後最年少)で、始めて旧統一労働者党(PZPR)の党員歴の無い党首となった。幹事長に指名されたナピェルスキ前副党首も31歳で、SLDの若返りをアピールした。

オレイニチャク新党首には、若く、汚職関連の噂が無く、農相としての行政手腕も手堅いことから、支持率低迷の続くSLDの改革期待が集まった。ボロフスキ社民党党首は、「改革の実態を良く見極めたい。」と慎重姿勢を示したが、対話には応ずる構えを見せている。他方、新党首が現執行部の総辞職を要請したことについては、早くも各県の党本部長から難色が示されており、党改革の先行きと支持率回復の成否が注目される。

なお、31日、オレイニチャク農相は辞任し、ピラルチク次官(SLD議員)が大臣に昇格した。

 

5.農業出稼ぎ労働者にも、社会保障費支払い義務。

ポーランドとドイツの両政府は、ポーランドの季節出稼ぎ農民の所得について、ドイツの雇用者に社会保障費(ZUS)の支払い義務を課す協定を締結した。およそ47%のコスト増となり、現在年間数万人と言われる雇用の減少は間違いないと見られる。また、独の雇用者はNIP(納税者番号)の取得やZUSの申請など、全てポーランドの会計事務所を通じて手続をせねばならなくなる。今回の措置では、学生、主婦、失業者、児童養育休業中の者は対象外(ただし年間50日まで)とされたが、農民にとっては大きな打撃となる。なお、出稼ぎ者の手取りも、現在の平均時給相場約5.6ユーロが、3.6ユーロ程度に減収する可能性が高いとされる。