ポーランド政治・社会情勢(5月11日〜17日)

 

1.チモシェヴィチ下院議長、大統領選挙に立候補せず

 5月18日、チモシェヴィチ下院議長は、クワシニェフスキ大統領との協議の後、秋の大統領選挙には「個人的理由から」立候補しないと表明し、同議長が従前公約していた「現国会の任期終了後の政界引退」を守った形となった。クワシニェフスキ大統領は、「議長の決断を尊重する。ただし同議長は大統領候補としての資格を備えており、残念である」と述べた。

 同議長は政府与党の民主左翼連合(SLD)から立候補を強く要請されており、最近の世論調査でもカチンスキ・ワルシャワ市長に続いて第二位の支持率を得ていた。今回の辞退により、現時点での左派の候補者は事実上ボロフスキ社民党党首一人となったが、今後SLDが同候補を支持するかがカギとなる。

 

2.秋の国会選挙は9月25日、大統領選挙は10月9日

 5月18日、クワシニェフスキ大統領は国会上下両院選挙の投票日を9月25日(日)とし、またチモシェヴィチ下院議長は大統領選挙の第一回投票日を10月9日(日)とすると発表した。事前の予想に反し、同日選挙とはならなかった。

 

3.オルレン特委、クワシニェフスカ大統領夫人の証人喚問を決定

 5月17日、下院で石油会社「オルレン」を巡る問題を調査しているオルレン特別委員会は、クワシニェフスカ大統領夫人を証人喚問することを決定した。同大統領夫人はこれに応ずる見込み。喚問の理由としては、同大統領夫人が主宰する慈善基金「障害無き基金(Foundation without Barrier)」への拠出者に対し、その見返りとして公共事業や民営化関連の便宜がなかったかを調査するとしている。

 5月11日付のジェチポスポリタ紙は、1998年のパパワ警察長官暗殺事件の黒幕として2004年から国際指名手配されている米国在住の実業家、E.マズール氏が、同基金のスポンサーの一人だったと報道し、2002年2月に同人がポーランドを訪問した際も、大統領夫人と会見し、その活動を支援していたと報道している。同大統領夫人は、本記事内容を否定している。 

 

4.PiS、ヤルゼルスキ元大統領の将軍称号と元大統領の特権剥奪をアピール。

 5月12日、法と正義(PiS)のカチンスキ党首は、ロシアでヤルゼルスキ元大統領が「80年代の連帯は社会を不安定化させ、内戦の危機を引き起こした」等の発言を行ったことに対し、祖国の名誉を損なうものとして、将軍称号の剥奪と元大統領としての特権剥奪をアピールした。

 ヤルゼルスキ元大統領は、5月9日の第二次大戦勝利60周年記念モスクワ式典に出席した後、戦前に自ら強制労働に従事し、父の墓が所在するシベリア等を訪問していた。その際ロシアの新聞インタビュー等に応じて上記発言をおこなったもの。

 ポーランドの各紙は、同元大統領はプーチン大統領から勲章を貰い、モロトフ・リッベントロップ密約やカティンに関する抗議もせず、ロシアのメディアとのインタビューでポーランドが中傷されても反論もせず、自分が軍事力で潰した「連帯」運動を「内戦の危機をもたらした」と発言したと批判した。更に、過去数年間、同大統領は一部メディアの助けもあって愛国者的イメージを作ってきたが、今回ポーランド国民は改めて彼がソ連の忠実な協力者だったという姿を思い知らされた、と報道した。

 

5.ベルカ首相、SLDの「内閣支持の条件」を事実上拒否

 5月11日、オレクスィ党首らSLD執行部は、ベルカ首相とチモシェヴィチ下院議長と会談し、シマイジンスキ国防相の副首相昇格、チェシラク下院議員(SLD)の環境相(空席。次官が代行中)任命、SLD系各省次官、県地方長官の地位保全の人事と、最低賃金引き上げ、年金の特別引上げ等の政策を、「内閣支持の条件」として要請した。会談後、チモシェヴィチ議長は、「選挙用のばらまき政策には反対」と発言した。ベルカ首相は会談時にはいずれもコミットせず、後に「内閣(人事)は然るべく整備されている」などと述べ、事実上いずれの要求も拒否した。

 

6.ウッジの「死の救急車事件」。塩化カリウムも使用し、犠牲者は更に数十名か。

 昨2004年、葬儀業者に死亡者情報を与えてリベートを得る目的で、搬送中の急病人に筋弛緩剤を注射して殺害を繰り返していたウッジの救急隊グループの公判が、5月11日に行われた。その際、別の証言から犯人グループが大量の塩化カリウム(一定量の注入により心臓停止となる)の横流しを受けていた容疑が明らかになり、使用目的について聞かれると「(搬送患者の殺害という)同じ目的だった」と答え、法廷を驚かせた。使用された薬品の量から、犠牲者は更に数十名増加する可能性がある。同容疑では、現在、ウッジ救急隊の1チームのみ訴追されているが、更に2チームが取調中。