ポーランド政治・社会情勢(4月27日〜5月5日)
1.アウシュヴィッツ−ビルケナウ「生者の行進」に過去最高の約2万人参加
5月5日、アウシュヴィッツ等でのホロコーストの犠牲者を偲ぶ「生者の行進(March of The Living)」が実施され、イスラエルを始めとする諸外国やポーランドから、過去最高の約2万人が参加した。この行事は、1988年以来、毎年イスラエルのホロコースト記念日に行われ、アウシュヴィッツ旧収容所の「Arbeit macht frei」門からビルケナウ収容所跡まで約3キロを徒歩行進するもの。これまではポーランドの反ユダヤ主義的傾向の宣伝等政治色が強かったが、今年は始めて、イスラエル教育省を中心とする実行委員会もポーランド市民の参加をよびかけた。当日は、特に青年の姿が目立った。
政府からはベルカ首相等が、また諸外国からシャローン・イスラエル首相等が参加した。
2.下院、解散動議を否決。選挙は秋の可能性が濃厚
5月5日、下院は予定通り任期短縮(解散)決議案の審議を行い、事前の予測通り与党民主左翼連合(SLD)、労働同盟(UP)等の反対で否決された。市民プラットフォーム(PO)提案の採決では、賛成255、反対172、棄権11で、下院解散に必要な必要得票数307を約50票下回った。SLD議員の大半は反対又は欠席する中で、チモシェヴィチ下院議長が事前の発言通りながら解散賛成に回ったのが目立った。
自らの任期を1年とするベルカ首相は、これも事前の発言通り、下院の解散回避を見て翌5月6日に大統領に辞任を申請し、また同8日に予定される新党民主党(PD)への参加を確認した。クワシニェフスキ大統領は、これも事前の発言通り辞表を受理しなかった。ベルカ内閣の存続と選挙の時期−任期満了の秋か、それ以前か−については、今後同大統領が、何時かの時点で辞表を受理するか否かの決定に委ねられることになった。しかし、同大統領は行政の安定性こそ重要としており、各紙は「選挙はおそらく任期満了の秋。9月末の可能性が高い」と分析し、ジェチポスポリタ紙のように、「秋」と断定しているものもある。
任期満了の場合、下院選挙の時期は、大統領は9月25日から10月16日の間の日曜日に投票日を決定し、7月21日までに公布することになる。また大統領選挙は、下院議長が9月18日から10月9日の間の日曜日に投票日を決定し、5月23日〜6月23日の間に公布する。
なお、今回の解散動議の否決とベルカ首相の辞任申請は既に織り込み済みであり、株式市場にも全く影響はなかった。
3.改革マトゥーラの筆記試験開始
5月5日、これまで各県でバラバラだったものを、今年から全国統一問題、統一採点の試験とした大学入学資格試験(matura)で、第一科目のポーランド語・文学の筆記試験が実施された。なお統一試験導入により、今まで全く別個に行っていた大学入試でも、マトゥーラの得点が考慮されることになる。
ポーランド語・文学の問題は、共通コースでは、始めにポリティカ誌の論説を読み、問題に解答するもの。二問目は小論文で、「H.シェンキェーヴィチ「大洪水」に於けるポーランド人像」、「Z.クラシンスキ『非神喜劇』の夫と、J.スウォヴァツキの戯曲のコルディアン:この2名の登場人物のロマン主義的側面からの比較」の内から1問選択という出題だった。ガゼータ・ヴイボルチャは受験生の声として、最近の学生にはシェンキェヴィチの3部作は人気が無く、この出題には不満が多かったとしている。
4.キエレスIPN総裁、法王側近のヘイモ神父が公安のスパイだったと記者会見で発表
社会主義時代の公安機関の非合法活動等を調査・捜査する国民記録機関(IPN)のキエレス総裁は、4月27日の記者会見で、ドミニカ修道会員で、ヨハネ・パウロ2世の側近だったヘイモ神父が、1980年代に教皇の情勢をポーランドの公安に流していたと発表した。同神父は69歳で、ローマではポーランドのローマ巡礼団の受け入れを担当していた。
旧公安が作成したヘイモ神父の調査ファイルは700ページに及び、70年代のものも存在している。密告先は公安局(SB)第一部の要員であり、88年まで約10年間続いた。コードネームは「ヘイナウ」「ドミニク」となっていた。
ヘイモ神父自身は否定いるが、ポーランド司教団も「勇気を以て真実を検証する」としている。なお、IPNが自ら特定個人の前歴を公表したことに対し、法律違反との声も出ている。IPNは、通常は対象人物の証言の審議のみを審査している。
5.大統領選挙:各立候補者、名乗りを上げる。
既に立候補を表明しているカチンスキ・ワルシャワ市長、レリガ上院議員、レッペル「自衛」党首に続き、候補と目される人々が立候補を表明した。
(1)トゥスクPO代表
5月2日、ワルシャワ工科大学での党選挙大会で発表した。同代表は、POは政党助成金の受領を拒否し、資金に限界があるため、PISや家族同盟(LPR)と比べれば地味になるが、支持者のヴォランティアと共に戦うと述べた。また「インテリ、金持ちの党」というPOのイメージを破るためか、カシューブの労働者家庭に生まれ育ち、自身シロンスクで労働者として働いた等、「インテリの候補者ではない」ことをアピールした。
(2)ギエルティフ欧州議員(LPR)
4月30日、M.ギェルティフ欧州議員(R.ギェルティフ党首の父)は、ワルシャワでの臨時党大会で出馬を宣言した。大会では、R.ギェルティフ党首がカチンスキ兄弟やPOを激しく批判し、「自衛」及び農民党(PSL)との共闘を呼びかけた。
(3)ボロフスキ社民党党首
全左派の立候補者として、穏健な政策を追求すると述べた。チモシェヴィチ下院議長との間で「左派統一候補」問題の決着がついていないため、SLDのオレクスィ党首等からは、情勢複雑化させるとして、立候補声明の中止要求が出ていた。なお、クワシニェフスキ大統領はチモシェヴィチ下院議長支持を表明しつつ、ボロフスキ、チモシェヴィチ両者の選挙戦スタート後も、いずれかが降りるのは可能だと発言した。
チモシェヴィチ下院議長は、来週にも立候補を表明すると言われている。
6.LOT、ボーイング787を購入か
長期の懸案となっているLOTの中型機導入問題で、5月5日付のジェチポスポリタ紙はボーイング有利と報道している。LOTは来2006年に米国と極東向け路線に中型機8機の購入を決めており、エアバスA330とボーイングB787が競合している。エアバス側では、ブレア英首相、シュレーダー独首相、シラク仏大統領自身からもベルカ首相に購入要請の書簡が出ている。ジェチポスポリタでは、現在のLOTの保有機はほとんど全機がボーイングであり、導入コストでも同社が有利に立っているとしている。なお、一方ではルフトハンザのLOT買収も噂に上っている。
7.PO、PIS間に大企業民営化で論争。将来の民営化相ポスト争いも予測
次期選挙後に連立内閣の形成が有力視されている市民プラットフォーム(PO)と法と正義(PIS)で、株式会社化後も国が株の相当数を持つ銅公社(KGHM)、石油会社オルレン、PKO BP銀行等の民営化について、POは全面的株式売却を支持し、国の影響力は契約で保持するという方針を打ち出したのに対し、PISは株式自体の50%以上の保有を主張するなど、見解が対立している。次期閣僚就任も有力視されるフレボフスキ(PO)、マルチンキェヴィチ(PIS)の両下院議員の論争で明らかになったもの。この問題では、他にもBOT(褐炭・電力公社)、石油会社LOTOS、ポーランド薬品ホールディング等の有力企業も話題となっており、次期連立政権の国有財産相のポスト争いも予測されている。