ポーランド政治・社会情勢(3月16日〜22日)
1.EUサミット、ユーロ加盟の条件緩和を容認。蔵相「2009年にポーランドはユーロ導入」。
3月18日、EU蔵相会合が開催され、長時間の審議の末、ユーロ加盟条件の一つである財政赤字の対GDP比3%以下の基準について、ポーランド等の新規加盟国/年金制度移行国には特別猶予期間を設定することで合意した。また、同22日に開催された欧州理事会(EU首脳会議)もこの合意を承認した。グロニツキ蔵相は、「これでポーランドの2009年のユーロ導入が現実的になった」と述べた。
新規加盟国の年金制度では、本来民間年金に算入される部分が公的年金と扱われ、結果的に財政赤字を軽減する状況になっている。EUの執行機関である欧州委では、この問題に否定的な見解を出していたが、今回、蔵相、首脳レベルで覆した格好になった。
なお2004年度の財政赤字の対GDP比は、ポーランドが4.5%、チェコ11.7%、ハンガリーが6.2%だった。
2.SLD、今度こそ「選挙は秋」で方針統一か
3月15日、与党民主左翼連合(SLD)では、これまでオレクスィ党首と異なり解散、春選挙も視野に入れていた各ヤニク院内総務が秋の選挙支持を表明した。各紙は、「これで春の解散は遠のき、選挙は秋」とコメントした。なおオレクスィ党首は翌日、ベルカ首相に辞任申請を行わないよう改めて要請したが、同首相はこれを拒否。オレクスィ党首はその後の記者会見でも落ち着いており、「ベルカ首相が民主党入りすれば、新たな状況になるが、それでも秋までベルカ内閣が存続する可能性は有る。」と述べた。
3.L.カチンスキ・ワルシャワ市長、大統領選出馬を宣言
3月19日、レフ・カチンスキ・ワルシャワ市長は、所属政党「法と正義」(PiS)の全国大会で、秋の大統領選への出馬を正式に表明した。双子の兄であるJ(ヤロスワフ)・カチンスキPiS代表が発表した憲法改正案に基づき、「第4共和国」の建設を目指すと抱負を述べた。
前々からこの大統領選立候補は非公式には表明されてきたが、国会選挙後に連立を組むとされる野党第一党の市民プラットフォーム(PO)と、候補者調整を行わないままのスタートになった。トゥスクPO党首は、自分の立候補に関し、「まだ考える時間がある」としている。
またJ.カチンスキPiS党首は、これまで次期首相候補の最有力とされてきたロキタPO院内総務に替わり、自分自身が首相になる意欲を見せた。
PiSの憲法改正案の要点は次の通り。
○議会解散権、個別の閣僚任免権を持つ「強い大統領」制の導入、○上下両院議員の削減(下院360、上院30)、○司法機能の強化:司法監督を判事の評議会ではなく、有識者による全国裁判評議会で行い、また(現在のように法相管轄ではなく)独立した国家検事総局を設置する、○国家ラジオ・テレビ委と通貨政策評議会の廃止、○公人には、対社会主義情報機関協力歴の前歴審査を現在以上に強化、○下院に仮称「真実・公正委員会」を設置して、国営企業民営化の汚職などを強い権限を持って調査させる、など。
4.新「マトゥーラ」は成功するか?
今年、大学入学資格試験(Matura)は、史上最大の改革が行われる。
これまでは、問題も各県別に作られ、採点も生徒の通う学校の教師が担当するため、問題や評価方式もまちまちで、「ゲタをはかす」のが慣例化していると言われてきた。今年から制度を改め、全国統一試験を実施し、採点も所属学校ではなく独立した契約採点官が行い、公正を期すようにする。
しかし、移行期特有の問題が既に指摘され、現場の手違いや試験問題の漏洩など、スムーズに実施できるか危ぶまれている。試験官、採点官に対する報酬が低すぎるという批判や、試験問題を適正に保管するスペースや機材が無く、秘密保全に責任が持てないとする学校も出ている。採点は従来のように学校ではなく特定の場所で採点官が集まって行うが、その交通費は自治体負担となったため、国に批判も出ている。
更に、先日実施された模擬試験では、約3分の1が不合格というショックな結果となった。原因は、これまでほとんど無制限だった試験時間の制限導入や、新出題形式への不慣れなどが指摘されている。今年の受験者は1999年の中等教育改革により、中学校(ギムナジウム)の1期生(それまでは9年制の一貫教育だった)であるため「僕達は新制度の実験台」というぼやきも聞こえる。
また、今年から試験会場での禁止事項が増えた:受験会場にぬいぐるみなどのマスコット持ち込み禁止(お守り替わりに持ち込む生徒が多かった)、飲食物の持ち込み禁止、試験時間中のトイレ利用は禁止、使用インクは黒のみで青ペンはダメ、などである。
*ポーランドでは、リツェウム等の高校卒業者がマトゥーラを受験し、合格者はその後に各大学の試験を受ける。
5.ベルカ首相、改めて5月5日の民主党入りを確認
3月18日、ベルカ首相は、4月半ばに設立予定の民主党(PD)に、5月5日に大統領に辞任を申請した後、加入すると改めて表明し、加入前にもPDの支持拡大に積極的に関与すると述べた。同首相はまた、大統領が辞任を受理しない場合は、内閣を投げ出すことはなく秋まで首相の職務を遂行する用意はある、と述べた。
クワシニェフスキ大統領は、少なくとも5月16,17日の欧州評議会サミットまでは辞任申請を受理しないと述べているため、記者団が不受理と判っていても辞任を申請する理由を訪ねると、同首相は、5月5日の辞任申請は(昨年5月2日の)就任時からの約束を守るためであり、辞任申請後は(首相であっても)政治的に自由に行動できると考える、と述べた。
これが実現すると、ポーランドでは首相が下院に議席をもたない野党の人物、となり、これは既に政治危機だ、と指摘する声もある。
6.ワルシャワ市議会、市内のロータリーにチェチェン独立英雄の名称を付与。ロシア反発。
ワルシャワ市議会は、市郊外のWlochy区の交差点ロータリーに、ジョハル・ドゥダイェフと名付けることを決定した。D.ドゥダイェフは、元ソ連空軍の将校で、チェチェンの独立運動を指導し、1991-96年に独立「チェチェン」の大統領となった。1996年にロシア軍のロケット砲攻撃で死去したが、現在もチェチェン独立運動のシンボルとなっている。
ロシア外務省はワルシャワ市の決定に強く反応し、インターネット上で「ロシア人の気持ちを踏みにじり、ポーランドがテロを支持することを示す」などと批判した。ロットフェルド外相は、ポーランド政府は市議会の決定には関与できないとしている。カチンスキ・ワルシャワ市長は、ロシアが干渉すべき問題ではないと述べた。