ポーランド政治・社会情勢(3月2日〜8日)

 

1.クワシニェフスキ大統領、証人喚問出席を直前に撤回

3月7日午後6:30頃、クワシニェフスキ大統領は突然記者会見を開き、翌日に予定していた下院オルレン調査特別委員会(委員長:グルシュカ議員(農民党))への出席を取り止めると発表した。同大統領は、「オルレン特委の一部委員による扇動的な政治劇への参加を拒否する、と強い口調で理由を説明した。

取り止めの直接の契機は、3月4日にコンサルタント会社社長のM.ドフナル(贈賄容疑で拘留中)が、同委員会で「大統領とその周辺が、カザフ産原油の輸入を妨害するために私を逮捕させた」と証言し、同大統領が「ドフナルなる人物は知らない」と発言したところ、7日発行の雑誌WPROSTが大統領とドフナル容疑者の会見写真を掲載したことにある。

大統領の直前の出席取り消しには批判が多い。「オルレン特委は確かに政治的な行き過ぎが目立つ。しかし一度同意した以上、大統領はポーランドの民主主義の擁護を言うなら、委員会に立つべきだった。大統領は何らかの政治的代償を支払うことになろう。」(ジェチポスポリタ論説)といった論調が目立った。

 

2.ベルカ首相、SLD離脱、6月19日選挙支持を表明

 ベルカ首相は、雑誌「ポリティカ」でのインタビューで、「自分は民主左翼連合(SLD:第一与党)でリベラル過激派と呼ばれており、(支持を得ていない以上)SLDから離脱する。新設の民主党への加入は6週間以内に決定する(後に解散決議の投票が予定される5月5日に発表する、と訂正)。与党から辞任要求が出れば首相辞職もあり得る。」などと述べた。ベルカ首相は難航する保健法案審議などで与党の対応に不満が明らかで、先にSLDを離脱しているハウスネル副首相を擁護していた。今回で、首相が今後発足する野党加盟を表明するという、異常事態となった。

 またベルカ首相は、5月5日解散決議、6月19日選挙、を支持し、出来る限り実現に向けて努力する、と述べた。

 

3.左派、国会選挙時期を巡る迷走続く

(1)大統領、首相、上下両院議長、左派三党代表と会合

4日夜、クファシニェフスキ大統領は首相、上下両院議長、SLD、社民党、労働同盟(UP)の左派三党の代表と会合し、国会選挙時期などについて協議した。大統領選挙と欧州憲法条約批准の国民投票は9月25日とすることでほぼまとまったが、国会選挙については、各者の思惑が錯綜し、一致した方針は出なかった。

○大統領は、5月5日解散決議採択なら、6月選挙、そうでなければ9月25日、としてベルカ首相による首相辞任を受理しない方針を示した。その理由として、5月中旬にワルシャワで予定される欧州評議会(CE)サミットの開催も挙げた。

○ベルカ首相は5月5日の解散決議不成立なら、同日辞任すると発言したが、大統領から封じられた形になった。

○オレクスィSLD党首は、党決定である9月選挙が実施されないなら、むしろ出来るだけ早期の、5月選挙を主張した。この背景には、党内の「オレクスィおろし」を選挙で回避するという狙いがあると言われる。大統領、各党とも5月選挙には同意しなかった。

(2)SLD対立、一転「融和ムード」へ

 3月7日、ポーランド国営通信(PAP)は、SLD内でオレクスィ党首ら主流派に対する反対政治宣言の署名簿が回っていると報道した。ヤニク院内総務らの反主流派は、社民党と選挙連立を組むため、4月2日の党代表者会合で、オレクスィを退陣に追い込むつもりだと言われていた。社民党では、オレクスィらの執行部では連立は組めないとしている。

 しかし3月8日の党執行部会合では、全く党分裂の雰囲気は影を潜め、オレクスイ党首、ヤニク院内総務はにこやかに「選挙は9月」を確認した。

 

4.下院、公共放送料金関連法を可決

3月3日、下院は、TVPなどの国営TV、ラジオ局の視聴料徴収に関する法案を採択した。昨年9月、憲法法廷は、それまで視聴料が国家ラジオ・テレビ委員会(KRRiT)の委員会令で決められていたのを、税金と同様、国民に対する半強制の賦課金が法律で規定されていないのは違憲だと判断を下し、1年間の猶予が設けられた。審議は遅れ、もし9月までに法律が制定されなければ視聴料の徴収が不能となるため、TVPなど公共放送各社は下院に審議促進を呼びかけていた。

今回の法律で、視聴料はラジオのみの場合、最低賃金(2005年:856PLN)の0.7%(月間)、テレビのみまたはラジオ・テレビ両方で、2.2%が上限とされた。現行は15.8PLNなので18.8となり3PLN値上げが可能になる。10月1日より施行。

 

5.ロシア政府、「カティンの森」事件関連文書の相当部分を引き渡し拒否

3月4日、事前の約束にもかかわらず、ロシア政府は、ロシア軍事検察局が所有するカティン事件関連文書の内、数十冊分に秘密情報が含まれるとして提供拒否を通告した。同時に、引き渡す文書についても原本内容証明の写しを作成する権限を与えることに同意せず、ポーランド側が刑事裁判等で証拠採用をする道を封じた。ロシア側は、本件をワルシャワのロシア大使館の一等書記官が口頭で伝達するという、意図的に軽い扱いで行った。

キエレス国民記録機関(IPN)長官は、ロシア政府の適当な高官に善処を要求するつもりであり、決定の変更の可能性が有ると述べた。また、事件から67年を経て未だに「秘」扱いとは驚きだと発言した。