ポーランド政治・社会情勢(2月23日〜3月1日)
1.ベルカ首相、SLD離脱、選挙は6月19日と表明
ベルカ首相は、3月2日発行のPOLITYKA誌上のインタビューで、「(同首相が)与党民主左翼連合(SLD)から「リベラル過激派」と批判されている以上、その陣営を離脱する。民主党のフラシニュク党首の招聘を検討している。国会選挙は現状からして6月19日になる。」、などと述べた。民主党に入党しても、SLDから要求がない限りは首相を辞任しないとも発言した。
各紙では、同首相の民主党入りの可能性は高く、5月5日に解散動議が否決されれば、内閣総辞職を申請する可能性が高いとしている。オレクスィSLD党首は、「首相は意向をはっきりさせるべき。ただし国政を不安定にする無責任な行動は採らないと信じる」と述べた。
ガゼータ・ヴイボルチャ紙では、元々同首相は任期を1年限りと表明しており、目標としていた財政・社会保障改革関連法案と病院改革法案が頓挫し、現国会では進展が望めない以上、確かに内閣も現議会も存続する理由は無い、とコメントした。
2.民主党、設立準備会合開催
2月27日、政党「自由同盟」のフラシニュク党首、ハウスネル副首相などの呼びかけにより、新党「民主党」(PD)の設立準備会合が開催され、ゲレメク元外相、オヌィシュキェヴィチ元国防相、J.ワレサ氏(ワレサ元大統領の子息)など、176名の政治家、文化人などが趣意書に署名した。党発足は4月を予定し、自由同盟は解散する。新政治連合の政党化に反対していた中央党のシュタインホフ党首は署名せず、不参加となった。
3.ポーランド・フランス首脳会談
2月28日、クファシニェフスキ大統領はフランスを訪問し、シラク大統領とEU加盟後初の首脳会談を行った。会談場所のアラ(Arras)には約50万人のポーランド系仏人が居住しており、住民はポーランドの伝統に従って「パンと塩」で両首脳を迎えた。会談では、実務内容には乏しかったが、イラク戦争以来冷え込んでいた両国関係の雰囲気の改善がアピールされた。ポーランド人の仏での就労制限を前倒し解除することについては、結論が見送られ、数週間以内に単純労働者を中心に一定地域で認められる方向。LOTのエアバス25機購入については、ポーランド側は明言を避け、ボーイングB777の可能性を残した。
4.ワレサ、ラジオ・マリヤを批判。司教団は対策の検討を約束。
2月24日、ワレサ元大統領は教会の意志決定機関であるカトリック司教団に書簡を送付し、「ラジオ・マリヤ」局が本来の活動を逸脱し、過度に政治に介入、また同元大統領を中傷しているなどの理由で、司教団の監督を要請した。司教団は、3月8,9日に協議することを約束した。
リズィク神父がトルンで独裁的に運営する「ラジオ・マリヤ」は、系列のTV局「Trwam」や日刊紙「Nasz Dziennik」(我らの新聞)で、1989年の「円卓会議」合意は共産当局とそれと手を握ったワレサらの妥協であり、ワレサは公安のスパイだった、などと報道していた。ワレサ元大統領は新聞紙上やインターネットで「マリヤ」を批判し、監督機関の国家ラジオ・テレビ委員会に「社会放送局」資格の剥奪を要求した。同資格は教育やキリスト教番組専用局に与えられ、各種支払い免除など数百万pln相当の特権がある。
リズィク神父は攻撃を止めず、2月27日にはワルシャワの文化宮殿会議場で約3000名の集会を開き、支持者に政治活動を訴えた。その際、「自衛」のレッペル党首、急進右派で名高いマチェレヴィチ下院議員らに感謝を表明したが、家族同盟(LPR)には言及せず、疎遠を印象付けた。最近のLPRの支持率低下は、ラジオ・マリヤからの離脱が原因と言われている。
5.欧州人権裁判所、賃貸住宅所有者の権利侵害を認める。
2月22日、ストラスブールの欧州人権裁判所は、ポーランド住宅関連法の家賃制限条項は家主の権利を不当に制限し、欧州人権基準に違反するとの判断を下した。
ポーランドでは、社会主義時代の接収物件を中心に、家賃がかなり低額なままになっている。また現行法では、年間10%以上の値上げが禁止されている。今回訴えを起こしたのはフランス在住のHutten・Czapskaというポーランド人で、グディニア所在の接収財産の返還を受けたが、店子の追出しも、建物の維持に最低限必要な家賃も徴収できないとして、個人財産の侵害で現行法の不当性を訴えていた。今回の判決により、政府は、猶予期間の6ヶ月以内に法律を改正しなければ、原告に12万ユーロの補償金を払う義務がある。全国家主協会では、この6ヶ月間を経過した際は、最大約5万件、総額100億plnの類似訴訟が起こされる見込みとしている。
この他、社会主義時代の接収財産補償、美術品の強制接収、社会主義政権の不当迫害行為に対する補償、農地強制収容補償など各種の補償要求が起きる可能性があり、ジェチポスポリタ紙は、最大総額2,050億pln、国家予算のほぼ1年分に達すると試算した。
6.元ナチス親衛隊の父とその息子が「死体研究所」開設を準備
2月26日付の各紙は、元ナチス親衛隊(SS)メンバーの独人、リープヘン氏とその息子が、ルブスコ県Sieniawa Zarskaに「死体研究所」の開設を準備していると報道した。同人は、これまで中国等で死体を入手し、血液を抜いて化学液を注入、加工、保存、展示を行ってきた。同人の説明では、死体提供者は遺書で遺体の無償提供を約束したと説明しているが、中国での死刑囚の遺体を安く横流しを受けたという風評がある。展示では、頭蓋骨が露出した「チェス選手像」や、腹が半分露出した「幅跳び選手の像」などが出され、その奇怪さが呼び物となってこれまで100万ユーロの収益があったという。
地元では、雇用が拡大するとして反対は起きていなかったが、独シュピーゲル誌にも報道され、現在この親子はポーランドから姿を消している。