ポーランド政治・社会情勢(2月16日〜22日)
1.下院、公立病院改革法案を否決。大統領が収拾に乗り出す
2月17日、下院は公立病院改革法案(前回の本通信参照)を賛成208、反対196で否決した。採決では、ベルカ首相自らが登壇し、本件は財政改革と並んで内閣の最優先課題だとして支持を訴えたが否決され、改めて内閣の政治力不足を印象付けた。敗因は、与党民主左翼連合(SLD)の議員17名の欠席だった。
この日、政府は、他に焦点になっている改正民事訴訟法の解釈について、問題点を再改正するまでは、公立病院の給与は裁判所執行官による差押さえの対象外とする統一見解を発表した。しかし、政党「自衛」のレッペル党首他十数名の議員は、今すぐ法律自体を改正すべきだと主張して演壇を占拠し、審議がストップするシーンもあった。
バリツキ厚相は翌18日に首相に辞任を申請したが、受理されなかった。クワシニェフスキ大統領は、本件が政府・与党の危機と見て調整に乗り出し、現法案に近い形で今後大統領自らが法案を提出すると発表した。
野党は反対の理由として、同法案では病院のリストラ実施、債権者との合意は困難であり、実施不可能な点が多く、また経済効率性だけを追求したリストラ、民営化は病院の荒廃をもたらすと主張した。公立病院の債務総額は現在約60億plnと見積もられ、裁判所の差し押さえ決定件数も日々増加している。今年度、政府は22億plnを病院救済予算に充てているが、法律が成立しなければ執行できない。
なお、各地の病院で続いていたハンガーストライキなどの抗議行動は、本法案の否決と、政府が民訴法改正を急ぐと公約したことにより、とりあえず収束した。
2.医療現場の苦難
資金不足が深刻な公立病院では、医療現場の荒廃が指摘され、給与不足による診療制限、診療所の閉鎖、不良機器の修理・買替えの遅れ、医師・看護婦の志気低下、薬品関連の犯罪などが目立ってきている。2月17日付FAKT紙は、病院の悪現象のワースト6を上げた。
@賄賂−例:心臓診療に正規料金外に数千plnを要求された。
A長大な診療待ち行列−例:自動車事故での腎臓障害治療に2ヶ月待たされ、悪化。
B誤診の頻発−例:扁桃腺除去で、アレルギーを無視した手術が行われ、5才児童が死亡
C劣化医療機器の使用−例:故障したままの放射線照射で火傷
D低所得者層に高額な薬品−例:月800zlの年金で心臓薬毎月100plnの負担
E入院条件の悪化−例:病院食がほとんど出ず、家族が毎日差し入れ
3.株式市場、加熱の勢い
2月16日、ワルシャワ証券取引所では、1日の取引高が始めて10億pln(3億3,000万ドル)を突破し、取引所株価指数(WIG)も最高ポイント更新、1日で平均株価が2%上昇した。特に2004年業績の好調さを反映し、人気銘柄の国有大企業であるPKO
BP銀行、オルレン(石油)、銅公社KGHM、 TP SA(電信電話)では、4〜5%も上昇した。市場筋の分析では、外国人投資家の役割が大きく、上記国有大企業銘柄が人気を集めたのが原因で、中小企業の人気は今ひとつ。
4.英独仏首脳がエアバス購入を要請
2月20日、ベルカ首相は、昨年12月にシラク仏大統領、シュレーダー独首相、ブレア英首相から、揃ってLOTによるエアバス購入を要請する書簡を受け取ったことを明らかにした。LOTでは、中型機B767の後継機種を5〜7機購入する計画であり、ボーイング社とエアバスが受注を争っている。LOTは今年前半には決定するとしているが、英独仏と政治問題化する可能性もある。
5.ベルカ首相、自由同盟系の新党に「首相である限り不参加」を表明
政党「自由同盟」(UW。前政権与党。現在議席は上院のみ)のフラシニュク党首やハウスネル副首相を中心とするグループは、今後政党化し、「民主党」と名乗る見込みとなった。参加が噂されるベルカ首相は、「首相である限り新党には参加しない。同党には好意と関心を抱いている。」、と発言した。また2月22日、ベルカ首相は、改めて国会の前倒し選挙を要望し、5月5日に下院が解散決議を行うのを歓迎する、と述べた。フラシニュクUW党首も、「ベルカ氏が首相職の終了後に我々に参加するのを歓迎する」と述べている。
これらの発言から、各紙は、ベルカ首相はクワシニェフスキ大統領との協議の結果、少なくとも5月5日までは辞職を申請しない方針であり、ただし同日に下院解散が否決されれば、その後可能性もあり得る、と分析している。なお、オレクスィSLD党首は、ベルカ首相が「民主党」参加の場合は直ちに内閣に対する党の支持を撤回する、と発言した。
6.欧州委、年金基金の一般会計への算出を拒否の方向。ユーロ加盟時期遠のくか。
2月16日ジェチポスポリタ紙は、EU理事会での協議を前に、欧州委では、年金基金は民間部門であり公的資金とは見なされず、財政収支には算出できないという事務局案を作成したと報道した。これにより、自動的にポーランドの財政赤字は政府試算より1.5%増加し、2007年から実施するとしていた対GDP比3%以下達成の目標が遠のき、ユーロ加盟の2009年実現も厳しい状況になる。
7.中絶緩和法案、実質廃案に。
2月15日、下院は、与党提案の妊娠中絶緩和法案を第一読会で反対199,賛成183で否決。実質廃案となった。ポーランドの現行法は1993年に制定されたもので、中絶は強姦による妊娠か、または母体・胎児の生命・健康の危機のみに限定され、事実上任意の中絶を全面禁止し、欧州で最も厳格とされている。このため非合法中絶や捨て子が社会問題となり、今回の提案は妊娠後12週間は任意中絶を可能とするものだったが、与党議員の一部も反対した。
8.憲法法廷、最高所得税率50%を違憲判断。実質廃案
2月15日、憲法法廷は、今年から導入が予定された所得税率の4段階制、最高所得税率50%に関し遅くとも11月までに制定公布の必要があったとして、周知期間不足を理由に違憲の判断を下した。本件は、クワシニェフスキ大統領も導入に消極的だったもので、少なくとも今年度は実質廃案となった。
9.ミレル前首相、米国に4ヶ月間の「研究」滞在に出発
2月21日付のFAKT紙は、ミレル前首相が、米国ワシントンのシンクタンク「ウィルソン・センター」に4ヶ月間の研究滞在に出発したと報道した。この間、下院議員としての職務を休職することになり、不見識との声も挙がっている。