ポーランド政治・社会情勢(2月9日〜15日)
1.ポーランド大企業、2004年に史上最高益を軒並み更新。賃上げ圧力強まるか。
(1)国が大株主である主要基幹産業の2004年度の業績が出揃った。各社とも軒並み史上最高益を更新し、PKO BP銀行の純利益は約15億pln、銅公社KGHMで14億、PZU(保険)20億、TP
SA(電信電話)約20億で、オルレン(石油)も約20億plnを超えた。これら各社の純益は対前年度比でほぼ2倍となった。
業績好調の要因は、一般的な好景気に加え、高値での株式売却(PKO
BP)、国内での独占的地位(TP SA、オルレン)、商品の国際的価格上昇・マージン拡大(KGHM、オルレン)などが指摘されている。利益を上げた各社の投資先として、オルレンは独でのスタンド買収と、チェコUnipetrol社への増資、TP SAは第三世代携帯電話UMTS中継局建設、KGHMはアフリカ等での銅鉱山買収計画、が上がっている。
(2)KGHMは昨年の賃上げ率が7%と製造業中最高レベルを記録したが、この好業績から労組が更に賃上げ要求の圧力を強めており、他企業への波及の可能性もある。なお、好調な石炭需要を繁栄し、ヤストシェンバ石炭社(JSW)では平均賃上げ率が8.5%に達した。
(3)これら主要基幹産業だけでなく、全般的な好況が今年も続くと見られており、2005年の経済成長率は二ケタ台に達するという見方もある(2004年度は実質5.1%の見込み)。内需拡大により、輸出頼みの成長からの脱却も期待されている。
(4)好況の原因は、好調な輸出。加工メーカーでは、2001-02年の不況をリストラで乗り切り、西側市場の獲得努力が成果を上げていたところに、EU加盟による西側市場の開放と、2004年上半期のズウォティ安も好要因となり、景気全般を引っ張ったと分析されている。全般的に物価上昇率よりも賃上げが低く抑えられたのもプラスに働いた。
(5)課題としては、これも取引が好調な株式市場の過熱の可能性や、一向に改善が進まない高失業率による社会不満の増大が上げられている。雇用の手控えは、引き続き高レベルの社会保障費と、雇用関係の各種法規の複雑さが影響していると指摘されている。
2.国会選挙時期を巡る混乱で与党・政府への批判増す
与党SLDは、2001年の前回選挙で勝利した際、「次回は春の選挙を実施」と公約していたのが、「事情が変わった」として秋の選挙と決定し、更にチモシェヴィチ下院議長(SLD)が野党の解散動議の採決実施を示唆するなど、二転三転している。
2.自由同盟、キリスト教国民同盟、ハウスネル副首相、マゾヴィエツキ元首相が共同政治宣言発表
2月13日、自由同盟(UW)のフラシニュク党首、元UW党首で現在無所属のマゾヴィエツキ元首相、キリスト教国民同盟(ZChN)のクロピヴニツキ党首は、「急進化する右派と、国家を私物化する左派の中で選挙民に選択肢を提供する」として中道派の共同政治宣言を発表した。今後四者で統一政党を形成するのか、政党連立を組むのか等、具体的な点は明らかになっていない。新聞の解説では、「明確な方針が見えず、準備不足」という批判的な論調が目立った。尚自由同盟は、最近の世論調査センター(CBOS)の調査結果では下院足切りラインを突破する支持率5%を記録している。
3.ハウスネル副首相の処遇を巡り、与党内、政府の反目が顕著に
(1)与党民主左翼連合(SLD)からの離党を表明していたハウスネル副首相兼経済・労働相が野党党首と共同政治宣言を発表した件で、2月14日、SLDは幹部会を開催し、同副首相をSLD議員クラブから除名した。副首相職については、事前にベルカ首相が「同副首相の不信任は内閣全体への不信任とみなす」と牽制したため議論も腰砕けとなり、議題にもならず、事実上留任を認めさせられる結果になった。
(2)更に、先般の党全国評議会で「春の解散反対。選挙は秋」で合意していたのが、チモシェヴィチ下院議長(SLD)は、5月5日に解散に関する野党動議の採決を実施する見込みとした。加えて、党内分派「社会民主主義の将来」(SDP)を率いるヤニクSLD院内総務は、解散に賛成か反対かはこれから決める。投票の党議拘束には反対だ、とし、党の路線に従わない可能性を公然と発表した。
(3)オレクスィSLD党首は、2月13日のインタビューで、これらの動きの背後に大統領の影響があると見て、その姿勢を「不明確」と批判し、またハウスネル副首相やチモシェヴィチ下院議長等を、名指しは避けつつも「党を利用する出世主義者」と批判した。
これらの動きから、オレクスィ党首、ヤニク院内総務、チモシェヴィチ下院議長、ベルカ首相、更に大統領も含む合従連衡、反目が明らかになっている。最新の世論調査では、SLDの支持率は再び6%に転落した。
4.公立病院改革法、民事訴訟法改正を巡る病院職員の抗議行動拡大
各地で負債が深刻な公立病院では、従来対象外だった給与財源も差し押さえられる民訴法改定と、病院のリストラを進める公立病院改革法に反対し、ハンガーストや抗議行動が拡大を続けている。
公立病院改革法の中心は、リストラ計画(期限2年間)を作成し、債権者と合意する病院に対しては政府が特別な公的借款を供与する点と、民営化を実施する病院には債務の80%を政府が肩代わりするというもの。また料金別などサーヴィス差別化の認可も盛り込んでいる。いずれにしても人員削減などの合理化は避けられない事から、労組「連帯」も2月10日にオフマン保健部長が自らハンガーストに入るなど、反対行動を呼びかけている。
民訴法改正では、保健省は公的資金である国民健康基金(NFZ)からの入金は対象外という立場を採っているが、法解釈が一致せず、現場では裁判所の執行官が給与を含む病院の銀行口座を差し押さえた例も出ている。国会では、病院を例外とする再改正が提案されている。公立病院改革法は下院で最終審議中であり、可決されれば上院での審議となるため、抗議行動の長期化が心配されている。
5.クワシニェフスキ大統領、訪米。米国入国査証問題で一定の前進。
2月9日、クワシニェフスキ大統領が訪米、ブッシュ大統領と会談した。各紙は、実質的な成果として、米国の対ポーランド軍事協力で、ブッシュ大統領が次期予算案に1億ドルを提案(今年度6,500万ドル)したことと、ヴィザ問題を取り上げた。両大統領は、入国査証の諸問題に関する解決を目指す行動計画「ヴィザ・ロードマップ」で合意したが、内容は公開されていない。ただし、将来的に、ポーランド国民に西側諸国並みの90日間無査証滞在を導入する準備と見られる。
米国国内法では、査証免除導入の条件として、その国の査証申請者に対する発給拒否率が3%以内という状況が数年継続すること、が条件となっているが、現在のポーランドでは拒否率が30%に達する。その最大の原因の一つが、1989年以前に社会主義ポーランドへの帰国が困難だった人々が「不法滞在者」リストに掲載されている事であり、今回、同リストは削除される事になった。また、ポーランド側は、2006-07年にはバイオメトリックス旅券を準備することとされた。