ポーランド政治・社会情勢(2月2日〜8日)
1.「ヴィルドシュタイン・リスト」問題
1月29日付ガゼータ・ヴイボルチャ紙は、社会主義時代の旧内務・公安当局の情報関連ファイルから作成された旧公安要員、秘密協力者、同候補者、被害者など約24万名の人物リストのHDが国民記録機関(IPN)から持ち出され、ジャーナリストの間で出回っているという記事を掲載した。同日、ジェチポスポリタ紙のヴィルドシュタイン編集委員は、同リストを入手したのは自分であると表明し、同リストは法律によりジャーナリスト、歴史学者などには自由に閲覧を許されているもので、単にジャーナリストの便宜を図ったものである、と述べた。
昨年12月のニェザビトフスカ元政府報道官の旧公安協力疑惑発覚以来、ポーランドでは一部野党、マスコミ等からチェコ等の例にならい、早々に「公安要員と密告者」のリストを公開すべきだという議論が高まり、大きな議論になっている。本件でも、未だ協力者と被害者の整理さえついていないリストが出回るのは人権侵害のおそれがある、という批判と、リスト公開は政治的恐喝の防止と、市民の知る権利の擁護に必要、と賛成する論調に分かれている。
ヴィルドシュタイン・リストは既にインターネットにも出回っており、各地のIPSでは、リストに自分の名前が出た人々などによる、「被害者」認定(注)申請が急増している。キエレスIPS長官はベルカ首相に対しIPS予算の臨時増額を要請した。ヴィルドシュタイン氏はジェチポスポリタ紙を追われたが、支持者は同社前で抗議集会を開いた。
(注)「被害者」認定:旧公安の盗聴などのプライバシー侵害や恐喝などの被害立証申請。認定された人は、自分の「人物調査ファイル」を閲覧する権利が付与される。また、そこに掲載されている密告者や公安のコードネームから、本名の調査、公開を依頼できる。
2.中国―ポーランド間鉄道輸送で、カトヴィツェ近郊にコンテナー・ターミナル建設
2月3日、ポーランドとロシア政府は運輸政策協議を開催し、中国―ポーランド間鉄道輸送に関し、ポーランド・ロシア政府がカトヴィツェのスワフコフ(Slawkow)にコンテナー・ターミナル建設・運営会社を設立する事で合意した。
ポーランドより東の旧ソ連から中国では、欧州大陸の標準線路幅より広い「広軌線路」を使用している。このため、中国、ロシアからの鉄道輸送では、ポーランドやスロヴァキアの国境で客車、貨車の台車部分の交換作業が必要となっている。(フランスースペイン間のように自動化されていない)。
スワフコフへの線路は、ソ連時代にカトヴィツェ製鉄所への鉄鉱石直送用として建設されたもので、広軌幅になっている。これを利用し、中国→ポーランドまで鉄道貨物を直送し、ここからトラック又は鉄道積み替えで輸送する計画。報道では、欧州に生産拠点を持つアジア系自動車企業が関心を示しており、当初の計画では年間のコンテナー取り扱いが3万5,000個で,順次20万個までを目指す。また予定地周辺の50ヘクタールがカトヴィツェ経済特区に加わることになる。
3.ハウスネル副首相、SLDを離党
2月7日、内閣経済政策の中心であるハウスネル副首相、経済・労働相は、与党民主左翼連合(SLD)を既に離党した事を明らかにした。同副首相は、「SLDとは違う道を歩まざるを得ない。」としか述べず理由を明らかにしていないが、以前から公開の場で「SLDに将来は無い。青年党員は独自の組織を作るべきだ」といった批判を行っていた。
ハウスネル氏は閣僚としての去就は明らかにしていない。SLDも、党内では与党を離脱した以上辞任すべき、という発言もあるが、公式な立場は決めておらず、ベルカ首相も沈黙したまま。
政界では、右派の急進主義と、左派(SLD)の国家私物化に幻滅した国民のため、中道派政党の設立が必要だという見解もある。クファシニェフスキ大統領がボロフスキ社民党党首、ベルカ首相、チモシェヴィチ下院議長、ハウスネル副首相を招いて新たな左派政党の設立を協議したとか、ハウスネル副首相は、フラシニュク自由同盟(UW)党首、シュタインホフ・キリスト教国民同盟(ZChN)党首、レリガ上院議員などと中道政党発足で懇談したとかいった報道が出ている。当面内閣人事など直接政変に結びつくことはないとしても、選挙に向けて水面下の動きが続きそうだ。
4.ライス国務長官、4時間のワルシャワ訪問。
2月5日、訪欧中のライス新米国務長官がポーランドを訪問し、ロットフェルド外相、ベルカ首相と会談した。昨年から推進している米国の軍事援助では、対ポーランド軍事協力基金が米国に設置され、恒常的な協力が可能になる。また、査証問題では、2006年中に何らかの解決を図る道程表(ロード・マップ)を、2月9日に訪米するクワシニェフスキ大統領がブッシュ大統領と打ち出す方向を明らかにした。
5.クラクフで「ポンチキ早食い競争」
2月3日の「脂の木曜日」(注)に、「第2回クラクフ・ポンチキ早食い選手権」が開催された。主催はガゼータ・クラコフスカ紙で、有名レストランのHawelka製のポンチキを、5分間、水一杯で何個食べれるかを競った。優勝者は孤児院勤務のA.モロング氏(39)で11個。
「脂の木曜日」(tlusty czwartek):キリスト教では、昔は復活祭前の40日間を悔悛の時期として、キリストの荒野の断食にちなんで肉食やぜいたくな生活を避ける「四旬節」があり、現在でも修道院では実施している。四旬節に入る直前の3日間を謝肉祭、カーニバルと言い、今ではこの行事だけが残っていることが多い。「脂の木曜日」も、四旬節前にカロリーの高いドーナツ(ポンチキ)を食べるのが習慣化したものと言われる。