ポーランド政治・社会情勢(1月26日〜2月1日)
1.アウシュヴィッツ解放60年記念式典
1月27日、ナチス・ドイツのアウシュヴィッツ/ビルケナウ強制収容所解放60周年記念式典が、オシフェンチム市のビルケナウ収容所跡で開催された。式典にはイスラエル、ロシア等44カ国の大統領、首相等が参加し、約1000名の元収容者、解放に当たったソ連赤軍の兵士等が参加した。
自身元収容者であるバルトシェフスキ元ポーランド外相(収容者番号4427号)、フランスのシモン・ベーユ元厚相(同78651号)も参加、スピーチを行った。また、赤軍兵士だった父(同11377号)が収容所から辛うじて生還したユシチェンコ・ウクライナ大統領も参列した。
バルトシェフスキ元外相は、「生存者は、その苦痛と近親者の死が欧州、世界全体の人々のよりよき未来に意味を持つものと確信する権利を有する。」「犠牲者の想像するに困難な運命を受容することは、他の個人に対する尊重と、人々に対する憎しみと蔑みという、人間に常に発生する可能性がある悪に反対することを、若い世代に義務付けるものである。」と述べた。
2.与党、国会選挙は「秋」と方針決定
1月31日、与党・民主左翼連合(SLD)は代議員大会を開き、5月解散、6月選挙か、秋の任期満了選挙か、で議論になっていた国会選挙時期について、78対22で任期満了選挙の方針を採択した。投票日は9月28日〜10月20日の間とされ、10月の可能性が高い。
国会選挙は、1993年、1997年、2001年と過去3回とも秋となり、次期政権が翌年度予算案を作成するのを難しくしていたため、2001年の前回選挙直後にSLDは「次回は春に解散、総選挙」としていた。クワシニェフスキ大統領もこれを支持、チモシェヴィチ下院議長、ベルカ首相も春の解散を支持しており、オレクスィ党首を中心とするSLDの党員、国会議員が、数ヶ月の政権延命と、支持率回復を狙ってこれをひっくり返した形になった。大統領は一切コメントしていない。
3.政府、原子力発電所建設計画を公表
政府は、「ポーランドのエネルギー戦略」を採択し、原子力発電所の建設を決定した。ポーランドでは1986年のチェルノブイリ原発の事故以来、原発建設計画は事実上放棄されてきた。しかし、京都議定書の発効による炭酸ガス排出削減義務の発生と、2025年には電力需要が現在の1.9倍になる予測から、これ以上石炭/褐炭火力発電の増設が困難なため、原発建設が避けられないとされている。候補地は、1990年に一度中止されたジャルノヴィエツ(Zarnowiec。グディニア近郊)と、クレンピチ(Klempicz。ポズナニ近郊)が上がっており、いわゆる第三世代プラス型炉(EPWR:欧州沸騰水型炉)の1,600KW発電所2基(総工費約40億ドル)の建設が予定されている。
4.改正民事訴訟法発効。公立病院の半数が賃金差し押さえの対象に?一部病院で抗議のハンガーストライキ。
2月5日、改正民事訴訟法が発効する。現在は、例えある企業が債務返済不能に陥っても、それまでの給与額は全額差押さえの範囲外とされている。同改正は、これを悪用し、債務を抱えながら差し押さえ回避、財産保全を行う悪質企業が多いことに対応するもの。改正法では、銀行等の債権者が差押さえを申請して裁判所が認めれば、執行官は、最初の三ヶ月間は従業員数×法定最低賃金(現在849pln(グロス))のみ留保・支払いを認めるが、以後はこの「給与留保」も一切認められなくなる。
問題は、ポーランドの公立病院の大半は、民法上は「企業」のステータスなので新民訴法の適用を受け、しかも財源不足のため全国760病院の内416が銀行や自治体から借金をし、ほとんど返済不能になっていることにある。将来の自分の給与支払いに危機感を強めた、スタラホヴィツェ市などの病院職員の中には、ハンガーストライキを行うところも出てきた。
バリツキ保健相は、現在国会で審議中の公立病院法が採択されれば問題ないとする。同法では、再建策を提出する病院は差押えを延期され、国が何らかの救済措置を講ずるというもの。しかし、同法の審議は既に1年以上続いており、問題が多いとして採択されていない。また、医療関係者は、この法律自体、病院が民営化すれば債務の80%を国が肩代わりする点など、病院民営化と閉鎖を促進するものだとして反対している。病院の混乱は、再び政治不安につながる可能性もある。
5.オルレン、LOTOS、原油供給に不安無しと発表
1月21日にロシアのユーコス系の原油販売企業Petrovalが東欧向け原油供給を中止した件で、同26日、ポーランド石油最大手のオルレン、LOTOSの両社は、別途調達先は既に確保したと発表した。今回の発表で市況も落ち着いているが、両社とも調達先に関する質問には答えていない。市場筋ではそれはJ&S社以外にはあり得ないと噂されている。下院で調査が続く「オルレン事件」では、そもそもの発端がJ&Sからの原油調達の多角化をミレル首相(当時)が図ったのも一因と言われており、当時の多角化判断が間違っていたとされるのを両社は警戒していると言われる。
Petroval社の供給中止には、ユーコスの混乱が背景にあると言われている。一部ではロシア当局が圧力をかけたとも言われたが、J&Sの原油輸送はPetrovalと同様、石油パイプライン「友好」経由であり、根拠が薄弱とされている。今回の供給中止騒ぎで、オデッサ→ブロディ(ウクライナ)パイプラインを経由するカスピ海原油の調達に改めて期待が高まっている。
6.ウルバン、「NIE」編集長、ローマ教皇の名誉毀損で有罪に。外国からは異論も。
1月25日、ワルシャワ地方裁判所は、暴露的報道で知られる「NIE」誌のウルバン社主が、2002年8月の教皇祖国巡礼の前日に掲載した記事で、(ローマ教皇は)「ヴァチカンのブレジネフ」、「老いぼれた(多神教の)神だ」等の表現を用いた事に対し、他国の国家元首に対する名誉毀損として有罪判決(罰金2万pln)を下した。ポーランドでは、特定個人のプライバシー侵害や虚偽報道による名誉毀損などは違法行為だが、いわゆる公人にあたる教皇の揶揄が違法となるかには議論がある。このため検察側は、一般的な名誉毀損罪ではなく、社会主義時代に作られた外国元首等に対する屈辱行為を禁止する法律で争っていた。また、人権問題も扱う欧州安保・協力機構(OSCE)も、カルヴァス法相に対して疑問の書簡を送った。
ウルバン編集長は、「教皇も批判の対象になるのは当たり前。自分は言論の自由に忠実であり、無罪。」として控訴する方針。
7.ポーランド、2007年10月を目途にシェンゲン条約加盟を目指す
1月、ポーランドは欧州委員会に対し2007年10月に相互に事実上国境審査・通関を廃止するシェンゲン条約の加盟を目指すと報告し、認められた。実現すれば、イギリスを除くEUの既加盟14カ国+ノルウェイと、ポーランドと同時加盟を目指すバルト三国、ハンガリー、チェコ、スロヴァキアとの間でポーランド国民は国境審査がなくなる。また、隣国のドイツ、リトアニア、チェコ、スロヴァキアとの間では、陸路の国境審査は外国人に対しても事実上ほぼ全廃される。
ポーランドは、このため東方の国境管理状況を審査され、国境での警察協力や、犯罪者登録等も含むデータ整備が必要となる。
8.農民党、パヴラク党首が復帰。選挙連合協定を取りあえず破棄。
1月30日、農民党は最高評議会を開催し、先日ヴォイチェホフスキ党首が締結したばかりのキリスト教国民同盟、レリガ上院議員(世論調査で現時点では人気度1位)との選挙協定の承認を拒否した。同党首はこのため辞任し、後任に元首相のパヴラク元党首が選出、復帰した。当面、農民党は選挙には単独で臨む方針を採択した。