ポーランド政治・社会情勢(1月12日〜18日)

 

 

1.社会主義時代の秘密公安機関員、協力者書類の公開を巡る論争

 右派政党の「家族同盟」(LPR)が、社会主義時代の旧公安・情報機関員と、その秘密協力者名簿を全面公開する法案を提出すると発表(本メール通信前号で紹介)したことは、多くの議論を引き起こしている。賛成派の見解には、旧体制時代の人権抑圧等の責任追求が必要とするものと、個人情報が一部の関係者のみに渡る現行制度では、却って政治的脅迫につながる、という理由が上がっている。反対派は、旧公安の「協力者」ファイルでは、当局に逮捕・取り調べを受けた人物も、当局から報酬を受けて情報を提供した人物の区別が為されないなど、単純な名簿発表では多くの人権侵害が起きる可能性があると指摘している。

 1月17日には、自主管理労組「連帯」の元活動家の著名人が、ガゼータ・ヴイボルチャ紙上で「SB(公安)による歴史の書替えを許すな」という共同宣言を発表し、ジチンスキ・ルブリン大司教は、「LPRの方式を聖書に適用すれば、ユダの裏切りも聖ペテロの断絶も差が無いことになる」と批判した。また、ギエルティフLPR党首の、「反対する者はやましいところがあるからだ」の発言に、ワレサ元大統領は、「公安記録の即時全面公開を言うのは、当時箒の下に隠れるネズミのような臆病者だった連中だ。勇気のある人々こそ公安にマークされ、その名がファイルに登場し、何もしなかった連中の名が出ないのは当たり前だ。」と批判した。

ジェチポスポリタ紙の世論調査では、旧公安のスパイ記録に関して、誰でもアクセス出来るべき:43%、被害者のみアクセス可能:36%、アクセス不可にすべき:12%、となっている。

 

2.ニェザビトフスカ元政府報道官、ワルシャワ高裁に過去歴審査裁判を自己申告

1月14日、ニェザビトフスカ元政府報道官は、1981年12月13日の戒厳令以降に、軍情報部の秘密部局に対し、定期的に反体制派の動向を報告していたという疑いが持たれている件で、自己の潔白証明のためワルシャワ高裁に審査裁判を自己告発した

同報道官は、1989年から90年末まで、最初の非社会主義政権であるマゾヴィエツキ内閣の報道官を務めていた。社会主義政権ではウルバン政府報道官(現「NIE」誌社主)が「当局の顔」として注目を集めていたため、政権交代後も報道官は毎日のようにマスコミに登場し、国民のほとんどが名前を知らない最近の首相府報道官とは重要性が違っていた。ニェザビトフスカ元報道官の疑惑は、国民記録機関から公安被害者の認定を受けた元週間連帯記者のヴィシュコフスキ氏が、公安の自分のファイルからコードネーム「Nowak」で当時の「週間連帯」関係者の情報を提供した人物を発見し、周辺の状況からニェザビトフスカ氏と特定、発表したもの。これは真偽を含め大きな社会問題となり、1月14日には、International Herald Tribune紙も本件を大きく取り上げた。

 

3.2005年総選挙―SLDの迷走

1月16日、与党民主左翼連合(SLD)のディドゥフ幹事長は、突然前言を翻し、「10月こそ国会、大統領、欧州憲法条約国民投票の「三同時選挙」に適当だ」、と発言した。前の週には、チモシェヴィチ下院議長が5月5日に解散動議を提出する、と発表したのを受けて、(賛成の)党議拘束を実施すると発表したばかりだった。ヤニクSLD院内総務は、「今はSLD内には私(解散・6月選挙支持)の支持者と、ディドゥフの支持者の二派がある」と述べた。SLDは、1月31日の党代議員会議で本件の方針を決定したいとしている。

 

4.ヴァチカン、2005年には教皇のポーランド訪問無しと確認

1月16日、ヴァチカン国務聖庁(外務省に相当)のスタシニク・ポーランド部長は、本年は教皇のポーランド訪問はないと確認し、選挙のある国には通常教皇の巡礼は無い。そもそもポーランド巡礼では正式な発表は無く、これは方針の変更ではない、と述べた。

 

5.政府、国営企業幹部の給与制限法改正案を作成

1月11日、政府は国営企業幹部の給与を制限する法律の改正案を採択した。同法は、「煙突のように突出した高給与を制限する」ことから「煙突法」の通称で呼ばれている。

1990年代末のポーランドでは、国営企業幹部の破格の高給与が問題となっていた。特に、チェンストホヴァ製鉄所の社長の月給が3万plnなど、破綻に瀕していた企業でも高給与が続いていた実態が指摘され、2000年に同法が制定、最高給与額が平均給与額の6倍に制限された。(2004年12月で、平均給与額(2,167pln)×6倍=約13,000plnが上限)。

しかし、本法は国営、民間企業の差別扱いを禁止するEU規定に反することが判明し、また一部業界では官民格差が著しく拡大したことから、改正が必要とされていた。民営化前のPKO BP銀行総裁の給与が、民間小銀行の頭取の数十分の一だった。

改正法案では、一律の法定上限を撤廃し、ただし該当する業界の平均給与と、企業自身の規模・業績により個別に上限額を設定し、政令で規定することとなっている。与野党は、概ね改正案に賛成の見込みだ。

なお一部国営企業では、「煙突法」を免れるため、別名目での報酬獲得が横行している。LOTのリトヴィンスキ社長は小株主のSwissAirから、「情勢分析」報酬として百万スイス・フランを超える報酬を受けていたのが報道された。