ポーランド政治・社会情勢(11月10日〜16日)
1.大統領、独立記念日の演説で野党を批判
11月11日、クワシニェフスキ大統領はワルシャワ・ピウスツキ広場での独立記念日式典で演説をし、「(民主化以来)過去15年間の実績を否定する政治家がいる。」、「法と正義(PIS)、市民プラットフォーム(PO)の国家改造計画は、個人所有権の不可侵、三権分立を否定し、大統領の政令発布権を認め、隣国との和解を否定し、戦時賠償問題を再燃させるものだ」とし、「(その主張は)漫画的(馬鹿げたこと)であり、欧州の道から外れ、過去15年の財産を破壊する」、と批判した。この発言は、前の週に雑誌POLITYKAに掲載されたJ.カチンスキ「法と正義」党首の長文のインタビューに関するもの。
カチンスキPIS党首は、「我々はポーランド第四共和国(下記注)を必要としている。大統領の発言は、建設的な批判を『国家の破壊行為』、『(ソ連等の)友好諸国に対する裏切り』とした当時のプロパガンダを想起させる」、と述べた。
各紙では、大統領の発言は内容はともかく、祝日を利用した政治発言として場所をわきまえぬものとして批判が多く、下院オルレン調査委員会での証言を前にした世論対策という指摘もあった。
注:第四共和国
ポーランド史では、1795年の三国分割前の選挙王制期を第一共和国(rzeczypospolita)、1918年の独立〜1939年の独ソ分割占領、の期間を第二共和国、1989年の自由化以降を第三共和国と呼んでいる。PIS等の野党には、過去15年間にポーランドでは深刻な政財癒着体制が形成され、新たな体制改革と「第四共和国」の樹立が必要だ、との主張がある。
2.ペンチャク下院議員(SLD)、石油ビジネス関連の斡旋収賄で逮捕へ
11月11日、新聞各紙は、下院オルレン問題調査委員会が所有する、民主左翼連合(SLD)のペンチャク下院議員の汚職の有力な証拠と見られる通話記録を掲載した。この通話記録は今年3〜7月に保安庁(ABW)が盗聴、記録したもの。
内容は、有名な「ロビイスト」のA.ドフナルLarchmont
Capital社長(9月に逮捕)が、国営石油(持株)会社のNafta Polskaの売却・民営化に関し、ペンチャク下院議員にミレル首相、カニェフスキ国有財産相他への斡旋を依頼し、その見返りに毎月の「手当て」や10万ドル相当のメルセデス・ベンツS500を贈るとするもの。ドフナル社長は、ロシアのルクオイル社及びRAO JES社の代理人として活動し、8月には同社のアフガノフ氏(元KGB要員として有名)とロンドンの自宅件事務所で協議していたこともある。
ウッジ検事局は下院に対し同議員の逮捕請求を行っている。SLDは同議員を会派から追放し、下院本会議での逮捕許諾決議にも賛成する見通し。ペンチャク議員自身は、違法行為は行っていないと主張している。
ペンチャク議員はSLDの元ウッジ党県本部長、元国有財産省次官であり、同県では有力な政治家として知られ、同じ出身であるミレル首相との強い関係にあると言われている。本件が斡旋収賄の具体的な罪状を形成するかなど、今後の捜査に関心が集まっている。同議員には、環境保護基金を巡る不正取引とSLD選挙資金との疑惑も噂されている。
なお、ポーランドでは捜査・情報機関による一定の電話盗聴は合法。
3.オルレン調査委員会関係の動向
(1)11月10日、ロンドンの病院で病気静養中のJ.クルチク氏は、調査委員会のギエルティフ副委員長(政党「家族連盟」党首)と、9月6日にチェンストホヴァのヤースナ・グーラ修道院内で「ポンチキ(揚げパン)を食べながら」会見し、その際ギエルティフ議員は、クワシニェフスキ大統領の疑獄を立証する資料を提供すれば、委員会での追及等で安全を保証する、と取引を持ちかけたと述べた。ギエルティフ議員は会見自体があったことは認めたが、この取引については否定している。クルチク氏は修道院での会見を脅迫としてギエルティフ議員を検事局に告発したが、告発文書は事実関係が不明瞭で、告発は疑問だとされている。
(2)クルチク氏は13日付のファイナンシャル・タイムズ紙でのインタビューで、ポーランドではビジネスマンが政治から圧力を受けていると批判し、自分の事業の50%は既に海外に移したと述べた。
(3)11月15日、カトヴィツェ検事局は、ウンギエル大統領府長官が、3月にカチマレク元国有財産相に対し、贈賄の噂が出ていると述べた件で、本件は当時保安庁(ABW)が調査中だった件であり、秘密漏洩の件で捜査を開始すると発表した。なおカチマレク氏自体の収賄については既に事実無根の調査結果が出ている。
4.「燃料マフィア」事件
輸入した重油に一定の操作を加え、軽油と偽って販売する行為が全国的に蔓延している問題で、その疑獄の一つの中心であるシチェチンBGM社は、これまでに数百万トンを販売し、脱税の疑いが出ている。重油でもディーゼルエンジンは稼働できるが、軽油とは取引税率が大幅に異なるため、一定の価格を上乗せしても販売先がいくらでも見つかる状況。
BGM社では、子会社の商社Trans Sad社が2001年に税関総局から輸入免許を取り消された際、カルバス現法相の弁護士事務所が本件を担当し、免許を再取得したことがある。カルヴァス法相には本件でオルレン調査委員会への証人喚問が取り沙汰されている。