ポーランド政治・社会情勢(11月3日〜9日)
1.来年の国会選挙、秋の可能性強まる
クワシニェフスキ大統領は、雑誌「Polityka」のインタビューで、国会選挙は来年5月ではなく秋の任期満了もあり得るかとの質問に対し、「国会が決めることだ」としてその可能性を示唆した。11月6日、オレクスィ下院議長も「右派の政治的攻撃が強まっており、こうした状況では任期満了まで現国会が維持される可能性もある」と発言、更にベルカ首相は同9日、「内閣は任期1年のスケジュールで準備したが、国会の任期は下院が決めることであり、例え(秋まで)延びても総辞職はしない」と述べた。
与党民主左派連合(SLD)では、現段階では支持率(約7%)が一向に改善しておらず、EU補助金の恩恵が国民に実感されるのには選挙期間が長い方が有利、大統領選挙、国会選挙、欧州憲法条約批准の国民投票のトリプル選挙は右派(野党)分裂につながり与党に有利、オルレン事件の進展如何では大統領選と同時実施が望ましい、といった判断で、秋の選挙を望む声が強まっている。
ただし、大統領、首相、下院議長、ヤニクSLD党首も、公約である「5月選挙」の看板は一応おろしていない。
2.大統領、オルレン問題で支持率急落
最新の世論調査(PENTOR)では、クワシニェフスキ大統領に対する否定的な評価が52%、信頼が48%となった。大統領の信頼度が50%を下回るのは始めて。野党第一党「市民プラットフォーム」のロキタ院内総務は、大統領は9年にわたって広範で多分野にわたる政治家と業界人のネットワークを作り上げた。彼らを結びつけているのは利益だけである、と批判した。
3.下院「オルレン問題調査委員会」関連の動き
(1)3日、野党の委員は、オレクスィ下院議長を、夫人が役員を務めるJK Energy& Logisticsの原油取引に不正の疑惑があるとして委員会喚問を要求した。これに対しクワシニェフスキ大統領は、「調査委員会は民主主義を破壊している」と批判した。SLD、社民党は、これ以上委員会が政治目的で動くなら自党の委員を引き上げるとした。野党はこの発言に反発。
(2)J.クルチク氏は、事件の発端となった2002年のモドジェイエフスキ・オルレン社長(当時)が検事局で取り調べを受けていた時と同時刻に、首相府でミレル首相と共にいたことが判明し、オルレン人事に同前首相と直接関与していた疑いが持たれた。ミレル首相は、「3年前のことなので覚えていない。」と述べている。
(3)J.クルチク氏は、11月9日に予定されていた調査委員会での証言に、病気での国外滞在(ロンドン)を理由に欠席した。委員会は11月30日に再度召喚を行うことを決定。また同氏は、ウッジ高等検事局の事情聴取にも応じなかった。
同氏は調査委員会に代理人のヴィダツキ弁護士(元内務次官、駐リトアニア大使)を送り、国内での証言には身体、財産の安全が保証されず、海外での証言を希望するというメッセージを代読させたが、2003年7月にウイーンでの元KGB、FSB(ロシア連邦保安庁)要員のアフガノフ氏と会談したことについては否定しなかった。
3.「少数民族法」、下院で採択
11月4日、下院は11年の審議の後に「少数民族法」を採択した。少数民族の定義や、政府、地方自治体の義務などを規定する法律だが、審議が長期化する内にポーランド語以外の言語での公共メディアへのアクセス、氏名のオリジナル言語での標記の保証など、この法律で規定される権利はほとんど他の法律でカバーされる結果になった。唯一新しい点として提案されていた、自治体でポーランド語以外の言語を補助言語と認める項目も、右派政党の提案で削除された。これにより、一部自治体が行ってきた道路標識・地名の二言語表記も実質的に実施困難となる。また、政党「法と正義」は公共機関による強制同化策の禁止条項の削除を求めていたが、賛成少数で原案通りとなった。(採用されていれば国際条約違反)。
「少数民族法」では、ポーランドで少数民族と認定されるには集団として過去100年以上ポーランドに居住していることが条件で、下記に分類され、認定されている民族は下院選挙での全国得票率条件(足切り条項)5%が免除される。(カッコ内の人口統計は2002年度のもの)。
(1)少数国民(mniejszosc
narodowa = national minority)
:国外にその民族を主体とする国家があるもの
ドイツ(147,094)、ベラルーシ(47,640)、ウクライナ(27,172)、リトアニア(5,639)、ロシア(3,244)、スロヴァキア(1,710)、チェコ(386)、アルメニア(262)、ユダヤ(統計無し)
(2)少数民族(mniejszosc
etoniczna = ethnic minority)
:国外にその民族を主体とする国家がないもの
ロマ(12,731)、ウェメク(5,850)、タタール(447)、カライム(43)
(3)少数言語グループ(mniejszosc
jezykowa = language minority)
:カシューブ人に限定(52,490)
5.国連人権委、ポーランドに女性差別有りと指摘
11月5日、ジュネーブの国連人権委員会は、ポーランドはアイルランドと並ぶ欧州一厳しい中絶制限の国であり、中絶の条件緩和と共に、合法的なケースでさえ現場医師の妨害がある現状を指摘し、政府に改善を勧告した。
また、男女雇用均等法が守られておらず、昇進の平等も含めた遵守を要求した。