2004.10.28
ポーランド政治・社会情勢(10月20日〜26日)
1.クワシニェフスキ大統領、下院「オルレン」調査委員会に証人出頭へ
10月22日、下院「オルレン」問題調査委員会は、2003年7月にJ.クルチク氏と、元KGB部員で現在ロシアの電力会社役員を名乗るアフガノフ氏がウイーンで面談した記録メモ2通を公開した。1通はクルチク氏自身の通報に基づいてシェミョントコフスキ諜報庁長官(当時)が作成したもので、もう1通はアフガノフ氏をマークしていたポーランドの情報部員が恐らく同氏の電話を盗聴して作成したもの。
後者では、クルチク氏はグダィンスク精油所(当時)の露ルクオイル社への売却(現時点で不成功)に関し、(カチマレク国財相ではなく)同氏に事実上の全権があり、それは「pierwszy(No.1)」の了解によるものだと述べている。このNo.1はクワシニェフスキ大統領とされ、野党ではもしクルチク・クワシニェフスキ癒着が事実とすれば、経済の適正活動を歪める重大な問題であり、徹底的な調査が必要としている。クルチク氏はこのメモの信憑性を否定している。
「オルレン事件」では、オルレンへの原油供給契約(J&S社)の問題から、グダィンスク精油所民営化、ルクオイルへの売却などの要素が絡み、クルチク氏等の本当の思惑が不明なこともあって、その全容解明が待たれている。
クワシニェフスキ大統領は、以前から身の潔白を証明するため調査委員会への証人出頭を表明しており、今回時期は未定ながらほぼ出席が決まった。同調査委では、11月9日にクルチク氏、同月中にミレル首相、更にウンギエル大統領府長官等の喚問が決定している。
2.下院、個人所得税率を最高50%に引き上げる法案可決。上院審議へ
10月22日、下院は個人所得税率を現行の最高40%から50%に引き上げる税制改正法案を可決した。ただし対象は年間所得60万pln以上の「超」高額所得者とされ、この法改正に意味があるのか疑問が出されている。政府も本改正には消極的で、事実上議員立法の形となった。現時点での税率別所得、対象人口は次の通り。
・税率19%:年間所得 〜37,024pln(22,040,061人)−人口比95%
・ 30%: 同 37,024〜74,048pln(956,744人)−4%
・ 40%: 同 74,048〜600,000pln(266,639人)―1.2%
・ 50%: 同 600,000〜 (4,000人)―0.017%
なお、本改正案には、企業は未払い分の賃金の経費への計上禁止などの規制も盛り込まれた。
3.ローマ教皇、来年6月に祖国巡礼
10月21日、グレンプ首座大司教は、ローマ教皇ヨハネ・パウロ二世が来年にポーランドを里帰り訪問する予定であることを正式に認めた。今回で祖国訪問は10回目で、高齢のため前二回に続き「祖国との別れ」の巡礼と位置付けられている。スケジュールなどは未発表だが、6月訪問の可能性が高く、ワルシャワ・ヴィラヌフ宮殿近くに建設中の神性祭壇の訪問は確実と言われている。
4.市民プラットフォーム(PO)、4月に改正されたポーランド語法を憲法法廷に提訴
10月20日、野党第一党の市民プラットフォーム(PO)は、EU加盟に伴う「ポーランド語法」の改正部分は憲法違反だとして、憲法法廷に提訴した。「ポーランド語法」は、官公庁での使用言語をポーランド語とし、商業契約や雇用契約などもポーランド語での作成を義務づけていたもの。EU加盟を前にした4月に、その第8条が改正され、雇用契約及び売買契約ではポーランド語でなく、「基本的な」言語であれば、両者が合意すれば外国語での作成も可能となった。POは、この改正がポーランド語を公用語と定めた憲法第27条に違反するとしており、EU原加盟国であるフランスにも同様の法律があると主張している。
5.公立病院への公的資金貸し付け法案、審議再開へ
10月19日、政府は、累積債務が深刻で、資金不足による診療停止等を招いている公立病院の問題に関し、国家予算からの貸付けを可能にする法案を一部訂正した。これにより、1年間にわたり下院で未審議のままとなっていた同法案の審議が再開された。
旧法案では、貸付けを受けるためには病院の商業法人(会社)化が必要とされ、多数の病院が閉鎖されるとして議論が紛糾していたが、訂正後はこの条件が外された。ただし、会社化すれば貸し付けの50%返済が免除される。残る条件は病院の財政(再建)計画作成と、国、健康保険基金(NFZ)に対する補償訴訟の取り下げで、事実上ほとんど無条件となった。ハウスネル経済相は、病院経営の効率化に繋がらないとして反対していた。
政府は、来年度予算で本貸付に22億plnを計上している。各病院の債務総額は約80億plnに上っている。病院関係者の説明では、債務の原因は、2001年に議会が財政措置の裏付けのないままに公立病院に医師、看護婦の賃上げを義務づけた、所謂「203pln法」が最大の原因としている。貸付条件は年利3%、返済期限10年で、各病院で最大600万pln。
ジェチポスポリタ紙は、これはローンではなく実質的には補助金であり、病院が返済する可能性はほとんど無い。病院経営という点からは実質的に問題先延ばしに過ぎないと批判している。