ポーランド政治・社会情勢(9月29日〜10月5日)

 

1.シマイジンスキ国防相、2005年末でポーランド軍のイラク駐留は終了すると発言

2日、ガゼータ・ヴイボルチャ紙は、シマイジンスキ国防相は同紙とのインタビューで、ポーランドのイラク駐留軍は、安保理決議第1546号の有効期限である2005年末を以て、「イラクの状況如何に拘わらず」撤兵する、ポーランド軍にとって2年半の駐留は十分である、などと発言したと報道した。同安保理決議は、イラクの多国籍軍駐留の根拠となっているもの。シ国防相は、「イラクの状況如何に拘わらず」と発言した覚えは無いとし、現在の駐留ステータスは安保理決議の期限終了により終了するというのは従来の立場と変わっていないとしつつも、インタビュー内容は個人的な見解だと説明している。一方では、ラムスフェルド米国国防長官にも本件で協議を行っているとした。

現役国防相が撤兵時期を明確にしたとして、この発言はポーランド内外で大きな反響を呼んだ。事前に聞かされていなかったベルカ首相、チモシェヴィチ外相は驚き、内容を批判した。クワシニェフスキ大統領は、2005年1月のイラク総選挙後に駐留兵力削減を行うのは既定の路線であり、駐留終了についても今後議論される必要があるとして、国防相発言を正面からは批判しなかった。各紙では、国防相発言は単に「口が滑った」のか、与党内外での駐留批判に応え、撤兵の主導権も与党にあることを示すなどの政治的意図があったのかについて、様々な観測が為されている。

 

2.下院、ルイヴィン事件でミレル前首相等の不法行為を正式認定。

 9月29日、オレクスィ下院議長は、同24日に採択された「ルイヴィン事件」のジョブロ「法と正義」所属議員作成の報告書を官報に掲載することを決定した。これにより、ミレル前首相らが不法行為を行ったことが下院の正式の立場とされたことになる。

 同報告書では、ミレル前首相は、他の政府高官と共謀し、ケーブルTV会社社長のルイヴィン氏をAGORA社(ガゼータ・ヴイボルチャ紙の持株会社)に送り、放送法改正案と引き替えに民主左翼連合(SLD)に約500万ドルの賄賂を送るよう、取引を持ちかけさせたとされている。また、クワシニェフスキ大統領も事前に本件を聞かされていたと指摘され、同大統領犯罪事実知りつつ司法手続きをとらなかった廉で、ミレル前首相等は偽証罪で、共に国家法廷(国の最高位の高官に対する議会弾劾法廷)に提訴するべきだとされている。

 大統領、前首相共に本件報告採択を強く批判し、同大統領は真偽を明らかにするためどこででも証言する用意があるとした。実際には、国家法廷の開廷には3分の2以上の賛成が必要であり、現在の下院の勢力分布からして可能性は無い。

 なお、ミレル前首相は、オレクスィ下院議長に対し、今次官報掲載決定に際し、「また野党に歩み寄るなら(同議長は)困ったことになる」と警告を発したと報道されている。

 

3.市民プラットフォーム(PO)、法と正義(PIS)、政権獲得後100日間の実施項目リスト発表

 1日、次期政権獲得が有力視されるPOとPISは、優先度の高い政策として、「政権獲得後100日間の実施項目」を各々発表、両党の立場は類似しており十分調整は出来るとして、連立政権設立の可能性が高いことをアピールした。ただしPIS側は、15%の税率一本化には難色を示している。

 主な政策項目は次の通り。

(1)PO

 ・小選挙区制施行のための憲法改正国民投票提案

 ・20%の行政機構削減(特に県庁、国の県支庁の重複防止)

 ・議員特権の一部廃止と経費の50%削減

 ・国家機関の外部監査による財政支出健全化

 ・(可能な範囲で)個人、法人所得税、VATの統一15%税率導入

 ・企業活動の大幅規制緩和(規制緩和委の設置)、

 ・司法強化(ルイヴィン事件の最終的解決のための特別検察官設置)、

(2)PIS

 ・情報機関改革:諜報庁、公安庁は組織としては残すが大幅人事交代。軍情報部は解体

 ・汚職対策庁を創設:少数精鋭の機関で、司法、情報機関も含め監督。

 ・国家機関監督システムの強化

 ・警察改革。5,000ポストある幹部ポスト職員の審査。

 ・一般会計外基金のほぼ全面廃止

 ・保健改革。国民保険基金の廃止と国家予算補助金制の復活

 

4.大学新学期始まる

 10月4日、各地で大学新学期が始まり、入学式などが行われた。

ポーランドでは、大学はUniwersytet(University)、Wyzsza Szkola (Higer School)、Szkola Glowna (Main School), Politechnika (University of Technology) など様々な名称を名乗っているが、現在国立、私立合わせて約400を数える。通常の昼間部試験で落第した学生を夜間部(国立でも有料)で受け入れる制度などが普及したため、学生数が激増し、1990年の約40万人だったのが、現在は約180万人に上っている。この間、教員数は6万5,000人から8万3,000人へと伸びが鈍く、大学の質の低下が懸念されている。

 

5.クトノ市の病院で、腎臓薬購入予算を流用し、患者への代替薬支給が判明。

5日、ガゼータ・ヴイボルチャ紙は、クトノ市(ワルシャワ西方約70キロ)の病院が、腎臓病患者に不可欠な赤血球製造ホルモン剤EPOを、保険基金から予算が支給されていたのに半年間購入せず、患者に貧血剤を与えていたと報道した。貧血剤の投与では生命の危険は避けられるが、腎臓疾患の治療にはならない。

病院はこの予算を人件費や借款返済などに流用していたもので、検事局は刑事事件として捜査を開始した。バリツキ厚相は事態を重視し、同省の政策局長を解任、またクトノ病院の患者には保健省の直接の指示で、パビャニツェ市の病院に当面通院することを指示した。ただし同病院はクトノから約60キロ離れており、患者に大きな負担となっている。バリツキ厚相は、病院の債務が膨らみ、患者を犠牲にしたこうした不法行為が全国的に発生している可能性があるとして、調査強化の方針を示した。