ポーランド政治・社会情勢(9月22日〜28日)

 

1.ポーランド・独首相、戦後賠償・補償請求に関する法律専門家共同委員会設置で合意。

 27日、ベルカ首相はベルリンを日帰り訪問し、シュレーダー独首相と会談した。両首相は、ドイツの引揚者協会などが、戦前の財産返還請求の訴訟をポーランドの裁判所に起こすとしている件で、両国政府が共同で対抗する措置を検討するため、専門家委員会を発足させることで合意した。なお、シュレーダー首相は、独政府が補償の肩代わりを行う意図はあるかとの質問に対し、補償請求そのものが誤りであり、その可能性は絶対に無い、と応答した。

【参考】対ポーランド補償請求問題の経緯

○2004年5月1日のポーランドのEU加盟を機に、ドイツの財務省では、第二次大戦時に旧ドイツ領(現ポーランド領)から追放され、不動産等を失った者に対する政府補償金を、ポーランドで財産返還訴訟が可能になったとして返金を要求した。追放者の財産返還要求運動を推進していた「プロシア信託社」は、この機会に、ポーランドの裁判所や、欧州人権裁判所などで、「財産請求の訴訟を一斉に起こす」とした。

○8月1日、ワルシャワ蜂起60周年記念式典に参加したシュレーダー首相は、独政府はこうした請求を支持しないと表明した。

○同9月10日、ポーランド下院は、対独賠償請求の交渉開始と、ドイツ人の財産返還請求の拒否に関する決議を採択した。政府は事実上これを拒否し、後者については独側との協議を表明し、今回の合意になった。シュレーダー首相は、独政府機関の補償金返還要求の差し止めも約束した。

 

2.クワシニェフスキ大統領のロシア訪問

 28日、クワシニェフスキ大統領はモスクワを訪問し、ロシアのプーチン大統領と会談した。

 ロシアでは、北オセチアの学校占拠事件について、ポーランドのマスコミの対応が冷たいと言われている。この訪問の直前、クレムリンの大統領報道局がロシアの記者だけに配った資料には、「ポーランドのメディアは学校占拠事件で非常に反露的な報道をした。多くのポーランド政府高官も関係している。」と記されていた。

 首脳会談では、記者団にも公開された冒頭の部分で、クワシニェフスキ大統領は学校占拠事件に遺憾の意とロシアとの連帯を強調したが、プーチン大統領は硬い表情のままそれに答えず、経済問題をしゃべり始めた。「ガゼータ・ヴイボルチャ」紙は、「シベリアのようなクレムリンの冷たさ」と評した。

 経済問題では、年間約30億ドルとポーランド側の大幅な貿易赤字の改善が必要とされた。両国の経済協力協定は、細部の合意に至らずに署名が見送られた。ただし、10月には閣僚レベルでの調印が予定され、来年1月にはプーチン大統領はアウシュヴィッツ解放60周年記念式典に出席し、クワシニェフスキ大統領は5月9日の第二次大戦終結60周年記念式典のためモスクワを訪問することが発表された。

 【参考】ポーランド・ロシア間で懸案となっている案件

第一ヤマル・ガスパイプラインの付属光ファイバー敷設:計画容量が予定より多かったため、ポーランドのメディアがスパイ関連施設のように騒ぎ立て、露側は嫌気がさして投資を中止した。

第二ヤマル・ガスパイプライン建設問題:両国政府で合意されたが、先行き不透明。ロシア→バルト諸国→ポーランド→独を通す計画で、ロシア側はウクライナを避けるため、スロヴァキアへの支線の敷設を希望していたが、ポーランド側が拒否した。この間、ポーランドを通らないバルト海海底パイプライン・ルートも浮上し、大幅なコスト高にもかかわらず、ロシアは欧州委との直接交渉で、この案を打診していると言われる。

オデッサ・ブロ−ディ石油パイプライン:当初はカスピ海→ウクライナ→ポーランド→独の予定だったのが、ウクライナがロシアと結んでこのルートを覆し、石油の流れをカスピ海方面に逆流させることで合意した。

ルクオイルの Lotosグループ社(ポーランド第二の石油会社)への資本参加問題Lotos側は露の油田に直接アクセスする機会として歓迎したが、ポーランド政府が同社の民営化から事実上外国人を排除する方針を採った。

広軌鉄道物流ターミナル建設問題:カトヴィツェ近郊のスワフクフ市に広軌鉄道(旧ソ連内路線)用の、貨物ターミナルを建設するプロジェクト。チェコのボフーミン市に内定していたのを2001年に逆転受注。しかし、その後建設計画は遅れ、再度ボフーミンが候補に復活。露の深奥部からカザフ、更に中国からも直接物資搬入が可能で、将来性あるプロジェクトと言われる。

 

3.ヤンコフスキ・グダィンスク「聖ブリギダ教会」司祭、辞任勧告を拒否。

グダィンスクにある聖ブリギダ教会(注)のヤンコフスキ神父は、教会奉仕の少年の一部に金を渡し、少年らがその金で麻薬、飲酒を行っていた件で、ゴツウォフスキ・グダィンスク大司教から辞任勧告の書簡を受け取った。同神父はこれを拒否したため、同大司教は、教会法(canon law)によりに対する処分の可能性がある、と述べた。

大司教は具体的な処分については言及しなかったが、教会法では、可能性として、(1)全般的もしくは部分的な聖職活動からの除外(ミサの禁止等)、(2)当該地域での聖職活動の全般的禁止、(3)カトリック教会共同体からの追放、がある。

(注)聖ブリギダ教会は1980年代にワレサ連帯委員長(当時)の政治活動の拠点となったことで著名。ヤンコフスキ神父は当時からワレサ一家と家族ぐるみのつきあいをしている。

 

4.「ポーランド地下国家」発足記念日に式典

 9月27日、国会前の広場で、第二次大戦中の「ポーランド地下国家」及び「国内軍」の祈念碑の除幕式が実施された。1939年9月27日、後に国内軍(AK)組織の元となる「ポーランド勝利のための組織(SZP)」が発足したことにちなんだもの。前日の日曜日には、ワルシャワ市内のバス、市電がこれを記念して小さな国旗を掲げていた。

 

5.SLD、個人所得税率50%提案か

9月23日、与党民主左翼連合(SLD)のヤニク党首は、前の週の発言を翻し、最高個人所得税率を40%から50%に引き上げる案について、未決定だが財政均衡に必要なら実施せねばならないとの見解を示した。税率の適用収入は未定だが、月収25,00012,000plnの間と予測されている。