ポーランド政治・社会情勢(9月15日〜21日)
1.ベルカ内閣の下院信任投票は10月15日に
9月21日、ベルカ首相は以前からの公約である内閣信任投票を、10月15日に実施することでオレクスィ下院議長と合意したと発表した。クファシニェフスキ大統領も了承し、順調に業績を挙げているベルカ内閣の信任を確信しており、国会選挙は来年5月29日を投票日としたいと述べた。
信任投票日は、当初10月7日が予定されていたが、ベルカ首相は10月7〜9日にアジア欧州会合(ASEM)首脳会合(於.ハノイ)に出席のため調整されたもの
2.民主左翼連合(SLD)、社民党は内閣支持を表明。労働同盟は含み持たす。
9月15日、SLDのヤニク党首は記者会見にて、SLDは内閣信任投票でベルカ内閣を支持すると発表した。社民党も、同内閣は社会福祉政策で社民党との公約を守っているとして支持を表明した。一方、連立与党の労働同盟(UP)は、社会政策は支持できるが、UPの主張するイラクのポーランド駐留軍撤兵について、年内に具体的な計画を発表する意図があるかを確認したい(ヤルガ=ノヴァツカ党首(副首相))として、今後のベルカ首相との協議に委ねた。
この三党に支持会派の農民民主党(PLD)を加えると217票となる。信任には、下院定数(460)の過半数の出席で、賛成>反対(棄権は票外)が必要だが、各紙では、僅差ながら無所属票の賛成で信任を得られるものと予測している。
3.SLD、カトリック教会に対する対決色を打ち出す
9月18日、与党SLDは政策調整会合を開催し、「教会基金」(注)の廃止や公立学校での宗教教育の見直しなど、カトリック教会に対する対決色を強める方針を示した。議論では若手を中心とする党内の強硬派と、穏健派との間で意見の相違も見られた。政府は、政府・教会間の政教条約(コンコルダート)共同委員会を通じて協議する方針で、政府側委員長にはチモシェヴィチ外相が就任した。同委員会の教会側委員長であるピェロネク司教は、「これは選挙向けの政策だ。教会は協議の用意はあるが、選挙前の加熱した雰囲気は議論の場にそぐわない。」と批判した。
(注)教会基金:1950年、社会主義政権による教会の土地接収の補償措置として発足し、教会に補助金を支給してきた。現在は、修道会員等の健康保険を国が肩代わりする事業が中心。SLD等では、既に教会の接収財産はほとんど還付されており、存在意義が失われたと指摘している。
4.下院オルレン問題調査委員会、クワシニェフスカ大統領夫人の慈善団体代表の文書差押えを検事局に要請
石油会社「オルレン」を巡る疑惑解明作業で、17日、下院の特別調査委員会は、A.クラチュク弁護士の事務所所在の文書差押えを検事局に要請した。ゲルティフ委員(「家族同盟」党首)の動議によるもの。差押えの理由は明らかにされていないが、国会筋では、クラチュク弁護士がロシアの企業から石油取引で非合法のコミッションを得ていた疑いが噂されている。
クラチュク氏は社会主義時代から党の青年組織活動家としてクファシニェフスキ大統領夫妻と親しく、大統領夫人が後援する慈善団体「障害無き理解」の代表を務めている。元「オルレン」経営理事会メンバーで、現在も石油ビジネス関連の業務が多い。「オルレン」は「障害無き理解」の有力スポンサーであり、寄付行為を巡って政治家との癒着の疑いが持たれている。
クラチュク氏は差押えが顧客との守秘義務に反し、また「オルレン」関連の業務は行っていないとして新聞紙上に抗議の広告を出したが、処分は取り消されていない。
5.カチンスキ・ワルシャワ市長、名誉毀損の有罪判決を不服として欧州人権裁に提訴
9月16日、最高裁判所(民事法廷)は、L.カチンスキ・ワルシャワ市長に名誉毀損の有罪判決を下した。訴えはヴァホフスキ元大統領官房長官、ワレサ元大統領から起こされており、同市長が、ラジオのインタビューで「ヴァ」長官を「何度も犯罪を犯した人物。」とし、ワレサ元大統領が「(「ヴァ」元長官の)犯罪を許した」と述べたことを名誉毀損とするもの。判決は確定し、同市長には謝罪広告と1万plnの強制寄付の義務が課された。
カチンスキ市長は、ヴァホフスキ氏が犯罪に関係したことは間違いなく、裁判では同市長に対する聴聞も無かったとして不服を表明し、ストラスブールの欧州人権裁判所に提訴するとしている。
本件では別途刑事裁判も進行中で、10月以降に公判の予定。もし刑事での有罪が確定すれば、法律によりカチンスキ氏は市長職を失うことになる。同氏は政党「法と正義」のJ.カチンスキ氏の弟で、同党の大統領候補とされており、刑事有罪となればかなりのダメージを受ける可能性がある。
6.与党、社会保険改正案の一部を訂正
下院は、個人事業者の社会保障費の政府改正案を修正する見込みとなった。現制度では、個人事業者のZUS納入金は一律468plnだが、政府案は所得累進制を導入するもの。政府案では高額所得者にとってかなりの負担となるため、所得の4分の1程度を目安とする方向に改正する方針となった。